相続財産にビットコインがあった場合はどうするのか

ビットコインのイメージ

ビットコインが、相続財産に含まれている場合の影響を考えます。

説明のポイント

  • 被相続人がビットコインを所有していたか推測することはできる
  • ただし、秘密鍵がなければ、実質的にビットコインは存在しないのと同じ
  • ビットコインに対する財産評価の方法はまだ決められていない
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ビットコインを所有しているかは、ある程度の推測が可能

ビットコインの所有者は、次の方法によってビットコインを入手しています。

  1. 「採掘(マイニング)」
  2. 「取引所での取引」
  3. 「他者からコインを受け取る」

このことから、もし亡くなった人(被相続人)がビットコインを所有しているとすれば、なんらかの履歴が残っていると推測できるわけです。

ビットコインを採掘をしていれば、それ相応の機材を購入して保有しているでしょう。(ただし、日本では電気代などコストの面から採掘しても赤字になると指摘されています。(Bitcoin日本語情報サイトより))

また、取引所でビットコインを入手する場合には、まず取引所の口座あてに銀行口座から資金を送金します。これらの送金履歴は、銀行口座の記録で確認できます。

他者から送金されたビットコインについては、ウォレット(財布)に入ります。ビットコインを得る対価として、物やサービスを提供している状況が推測されます。(親族間などの贈与の場合を除く)

ビットコインはどこにある?

ビットコインはウォレット(財布)に保管されています。ウォレットにはいくつかの種類があります。(参考:ビットコインニュース

  1. ウォレットアプリ (スマートフォンやPCのアプリ)
  2. ウォレットサービス (ネット上のサービス)
  3. ブレインウォレット (自分で暗記)
  4. ハードウェアウォレット (専用ハードウェア)
  5. ペーパーウォレット (紙に印字)

ビットコインの所有者は、これらのウォレットを使用しています。ウォレットを探そうとするならば、次のような対応が考えられます。

【1と2】「ウォレットアプリ」や「ウォレットサービス」は、PCやスマートフォンからアプリやブックマークの存在で、確認できる可能性があります。

【3】「ブレインウォレット」は、自分で記憶しているだけで形は残りませんが、暗記することは困難で現実的な手段ではありません。

【4と5】「ハードウェアウォレット」や「ペーパーウォレット」は、ハードウェアや紙が形として残るため、それらを探せば見つかる可能性があります。

このことから、ビットコインを所有している可能性が高いと推測される場合は、まずPCやスマートフォン、貸金庫に保管されているペーパーウォレット(長期保管に適している)を探すことになるでしょう。

なお、詳しいウォレットの種類やサービスは、「Bitcoin日本語情報サイト」の紹介記事がわかりやすいです。

参考ビットコインの保管(ウォレット比較) | Bitcoin日本語情報サイト

秘密鍵はどこにあるのか?

亡くなった人のビットコインの利用歴やウォレットがわかったとしても、そのウォレットの秘密鍵があるのかが問題です。

秘密鍵とは、ビットコインを取り出すためのパスワードです。秘密鍵がわからない場合、ウォレット内の残高を確かめられません。

また、ビットコインをウォレットから取り出せないので、実質的に喪失したのと同じ状態です。相続財産として扱うのは、難しいのではないでしょうか。

秘密鍵を探す方法については、誰しも秘密鍵を間違いなく覚えているのは難しいため、なんらかの記録をメモ用紙や、PCやスマートフォンに残している可能性があります。ただし、PCやスマートフォンのパスワードを解除できない場合は、その中身を確認することは困難です。

秘密鍵の有無が生み出す問題

ビットコインと秘密鍵の関係は、難しい問題を生み出すことが予想されます。一つの事例を挙げます。

「被相続人は、ビットコイン取引所に口座を保有していた。また、銀行口座から、ビットコイン取引所の口座に大金を振り込んでいる記録があった。その後、取引所の口座から、ビットコインを別のウォレットに送金した形跡があるものの、送金先のウォレットの秘密鍵はまったくわからない」

この場合、次のケースが考えられます。

  1. 相続人は秘密鍵を知っているが、知らないふりをしている場合 →財産を隠している
  2. 相続人は本当に、秘密鍵を知らない場合 →財産として相続できない

秘密鍵の有無によって、大きな違いが生まれます。

2番目のケースのように、相続人が本当に秘密鍵を知らないということを証明することは難しいという事態が想定されます。

財産の評価はどうなるか

ビットコインは法律上の位置づけが未決定ですので、財産の時価をどう考えるかも不明です。財産評価の通達もありません。

このため、「外貨」「商品」「著作権」「電磁的記録」など、ビットコインの扱い方を各自で考え、時価を評価することになります。交換所における取引相場があるため、この記事を書いている現状では「商品」とみるのが適切と思われます。

現在、ビットコインは「通貨の機能」を持つものとして位置づける方向で検討されている、という報道も見られるようになっています。

参考仮想通貨を「貨幣」認定 金融庁、法改正で決済手段に:日本経済新聞

追記(2016/6/1)

2016年5月25日、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」が成立しました。この法案における仮想通貨の意義は次のとおりで、仮想通貨における法的位置づけと財産的価値が認められます。改正法の施行は、成立から1年以内です。

この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。

一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これら の代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他 の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用い て移転することができるもの

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

贈与を受けたビットコインは

現金や財産を贈与した場合には、贈与税がかかります。また、被相続人(亡くなった人)が亡くなる前から3年以内の被相続人からの贈与財産は、相続財産に含めて相続税を計算します。

ビットコインの贈与も、贈与税や相続税の対象になるでしょう。しかし、個人を特定してビットコインがやりとりされたことをうかがい知るのは困難で、贈与の事実を把握するのは難しいと考えられます。

参考bitcoin.org「ビットコインは、匿名ですか?」

まとめ

亡くなった人がビットコインを保有していたかの推測は、ある程度は可能です。しかし、秘密鍵がないと相続時のウォレットの残高が把握できない、という問題が生じます。

秘密鍵は通常、本人だけが把握しているものです。

これを喪失したときは財産価値がないものとして扱うべきでしょうが、相続人が秘密鍵を知っていて、あえて隠匿している場合の対応も難しいところです。ビットコインを贈与した場合も、事実を確認するのは難しい問題があります。

こうやって考えてみると、ビットコインは政府の管轄下にない「仮装通貨」ということを改めて実感します。

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