年末調整手続きの電子化 「データ提出」のデータが保存されない懸念

2020年の年末調整で実現する年末調整手続きの電子化について考える記事です。従業員が年末調整ソフトで作成したデータは、税務署への申請により、データで会社に提出できますが、会社はその受け取ったデータをそのまま保存する必要があります。

説明のポイント

  • 年末調整書類のデータも、紙と同じようにデータで保存する必要がある
  • 給与ソフトへインポートしたあとのXMLデータは雑に扱われやすい懸念がある
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前回の記事からの続き

2020年の年末調整で実現する年末調整手続きの電子化について考える記事です。従業員が年末調整ソフトで...

前回の記事では、年末調整ソフトから出力したデータを従業員から受け取る場合には、要件を満たしておくことが必須で、違反した場合の取消しに関するリスクを検討しました。

受け取ったデータは要保存

今回の記事の結論ですが、紙で受け取った扶養控除等申告書は保存するのが当たり前であるように、データで受け取った扶養控除等申告書なども、データのままで保管する必要があります。ところが、その保管がおろそかになりやすいのでは? という懸念があります。

保存に関する要件は、国税庁FAQ問2-16で触れられています。

電子データにより提供を受けた年末調整関係書類は、書面によるものと同様、税務署長から提出を求められた場合を除いて、その提出期限の属する年の翌年1月10日から7年間保存する必要があります。

念のため、この件の法令を読んでみましょう。太字だけをつなげて読めば、わかるようにしておきました。

所得税法施行規則76条の3
法第百九十四条から第百九十六条まで(給与所得者の源泉徴収に関する申告書)に規定する給与等の支払者がその給与等の支払を受ける居住者から受理したこれらの規定による申告書(法第百九十八条第二項(給与所得者の源泉徴収に関する申告書の提出時期等の特例)の規定の適用により当該給与等の支払者が提供を受けた当該申告書に記載すべき事項を含む。以下この条において「申告書等」という。)は、これらの規定に規定する税務署長が当該給与等の支払者に対しその提出を求めるまでの間、当該給与等の支払者が保存するものとする。(これ以下のただし書きは7年間の保存要件のため略)

上記の太字を読むと、年末調整の書類は「本来は年末調整の書類は税務署に提出するのだけれども、まあ、とりあえず会社で保存しておいてね」という話です。これはおなじみの話です。

で、同じ条文をもう一度読みます。太字が、データの保存に関係のあるところです。

所得税法施行規則76条の3
法第百九十四条から第百九十六条まで(給与所得者の源泉徴収に関する申告書)に規定する給与等の支払者がその給与等の支払を受ける居住者から受理したこれらの規定による申告書(法第百九十八条第二項(給与所得者の源泉徴収に関する申告書の提出時期等の特例)の規定の適用により当該給与等の支払者が提供を受けた当該申告書に記載すべき事項を含む。以下この条において「申告書等」という。)は、これらの規定に規定する税務署長が当該給与等の支払者に対しその提出を求めるまでの間、当該給与等の支払者が保存するものとする。(これ以下のただし書きは7年間の保存要件のため略)

太字をわかりやすくいえば、「年末調整の書類には、データで提出を受けた場合も含む」と書かれています。

つまり、年末調整ソフトで出力されたデータは、紙と同じように会社で保存しろ、ということになります。

FAQにはデータ表示の可能な状態が要件とされている

国税庁FAQ問2-9を読むと、電磁的方法の申請要件については、次の対応が必要とされています。

申告書に記載すべき事項について電子計算機の映像面への表示及び書面への出力をするための措置

つまり、年末調整に関するデータを、画面に表示・印刷できればよいわけです。

そもそも、この要件を満たせない会社が申請している状況は非常に考えづらいわけで、あまり意味のない要請にも思えます。

 

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しかし、この措置は「年末調整ソフトから出力されたデータについても、その保存状況に関する税務調査は当然にあり得る」と理解をすべきでしょう。

データだと、なぜか雑に扱われる懸念

なんでこんな話を長々としているかというと、データはなぜか保存がキチンとされない傾向がある、と懸念しているためです。

例えば、6年前に保存したデータがどこにあるか、自信を持ってハッキリいえるでしょうか?

紙の書類は「実物」ですので、ファイルに綴じ込めば、それで保存完了です。段ボールに詰め込んで、倉庫にでも送ればよいでしょう。

これに比べてデータは、よほど意識しないと、どこかに行ってしまう懸念があります。

データ提出の場合の作業の流れを見ると、従業員から受け取ったデータは、「給与ソフトへのインポート」という手順に進んで処理します。

このことから、データで提出されたXMLデータは、たんなる「部品」扱いされてしまい、給与ソフトへのインポート後は、保存されずに「ゴミ箱」行きの懸念もありえます。

なお、従業員から提出を受けたデータはマイナンバーを含んでいるため、粗雑に扱うことも許されません。

電磁的方法の申請が「一網打尽」の懸念に

こうして見てみると、年末調整ソフトに対応しての「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」の提出は、それなりに要注意ということがわかります。

もし扶養控除等申告書のデータがきちんと保存されていなければ、税務調査では「不提出扱い」とされ、従業員全員が「乙欄」になりかねません。

データ管理の甘い会社が続出して、これが調査の”おいしい”チェック項目だと国税が認識すれば、むしろこの申請を出すことにより「危ない要因」を作りだす懸念もありえます。(心配しすぎかもしれませんが)

もちろん、紙もデータも保管が重要なことに違いはありません。

ただひとえに、「データだとなぜか管理がキチンとされない傾向がある」という懸念があり、その点を指摘しているわけです。

まとめ

年末調整ソフトの利用に関して、税務署への申請後に、データの受け渡しをする場合には、会社はこのデータを7年間保存する必要があります。

紙に比べてデータは、どこかに行ってしまう可能性が高いといえます。

例えば、XMLデータを給与ソフトへインポートしたあとに、そのまま「ゴミ箱」に放り込んでしまう可能性もあるでしょう。

年末調整ソフトから出力できる書類は、給与ソフトが対応していればデータ提出のほうが楽なことに間違いはありませんが、こうしたリスクも正しく認識しておく必要があるでしょう。

前回の記事を読んでくださった方へ。記事の投稿後に、もう一度条文を読み直したのですが、どうもリスクを低く見ていたのではないかと再考したため、記事を一部修正しています。