不自由とは何か? 全米が感動した名作ドラマ「ルーツ」に学ぶ、労働と自由の価値

手錠を外した人

全米で1億3,000万人が見たという、1977年放送の名作ドラマ「ルーツ(ROOTS)」。このドラマを通じて語られるテーマである、「自由」の価値を考えます。

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概要とあらすじ

アメリカの作家、アレックス・ヘイリーがピューリッツァー賞を受賞した小説「ルーツ」。1977年、この小説を原作として、ドラマ「ルーツ」が製作されました。

このドラマは爆発的な人気を呼び、全米で1億3,000万人が観たとされています。嘘偽りのない「全米が感動した」といってよい、名作ドラマです。

あらすじ

アフリカ西海岸で誘拐され、アメリカに奴隷として連れてこられた「クンタ・キンテ」は、原作者であるアレックス・ヘイリーの7代前の祖先です。

このドラマでは、祖先であるクンタ・キンテから親子4代で、自由を勝ち取るまでの激動の人生を描きます。

闘鶏師として成功を納めた3代目が、テネシー州に土地を買い、そこに一族が移住するところでドラマはハッピーエンドを迎えます。

ちなみに、5代目以降から小説の原作者アレックス・ヘイリーにいたるまでの話は、このドラマでは描かれません。

参考ROOTS(BS-TBS)

感動を呼ぶ名作ドラマ

全米にとどまらず、日本でもドラマは人気を博したとされており、ドラマの影響で「クンタ・キンテ」は流行語になったということです。

ちなみに、日本で何かと用いられる「○○のルーツは……」というフレーズも、もともとはこのドラマのタイトルである「ルーツ」が発祥といわれています。

なお、2016年にはドラマ「ルーツ」のリメイク版が製作され、話題になりました。(リメイク版はDVD未発売)

世界遺産として名を残す

アフリカ西海岸のガンビアには、奴隷貿易の遺跡が残っています。それらの遺跡は、「クンタ・キンテ島と関連遺跡群」として、2003年に世界遺産に認定されています。

クンタ・キンテ島

引用:wikipedia

この島はもともと別の名前でしたが、知名度を誇るクンタ・キンテにちなみ、「クンタ・キンテ島」と改名しています。(参考:wikipedia)。

クンタ・キンテ島と関連遺跡群

単なるファミリーヒストリーものではない

このドラマ「ルーツ」は、単なるファミリーヒストリーものではありません。

日本でも最近、自分の祖父を描いた小説が人気を博したり、よく知られた芸能人の祖先を取材したドキュメンタリーが放送されています。

しかし、これらのような「感動仕立て」とは次元の異なる、深いテーマが潜んでいます。

「ルーツ」が感動を呼び起こすのは、奴隷制度という、人間の「負の歴史」に正面から切り込んだテーマであり、絶望のなかで苦闘し、生き抜く人々に感情移入をもたらすからです。

 

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こうした点は、出演者の言葉でもわかります。DVD特典の中で語られているものとして、ある白人の出演者が、こう語っていました。

「この仕事には勇気がいる。白人の俳優は尻込みして出たがらないだろう。俺が犠牲になろう」と。ところが現実には――出演する白人俳優が殺到したのです

単なるファミリーヒストリーではない、テーマの深さが伺える逸話でしょう。

不自由とは何か?

このドラマをブログで紹介したのは、人間にとって重要なテーマであることもありますが、「不自由とは何か?」を考えさせられるものだからです。

近年、日本でも「自由な働き方」が話題となっています。「自由」ということばがあるなら、じゃあその対極にある「不自由」って何だろう? という疑問が首をもたげます。

たとえば、過労死するほどに働けば、それはどこかの面で不自由であるといえます。

この「ルーツ」は、こうした不自由の意味を知る上で、絶好の「教材」であるといえます。

不自由がもたらす様々な拘束

ルーツでは、アフリカから連れてこられて以降、クンタ・キンテとその4代の子孫は、すべて農園主の奴隷として描かれます。

奴隷はすべてにおいて、農園主である白人からの束縛を受けています。

例えば法制度です。アメリカ南部では、リンカーンが奴隷解放を宣言するまで、奴隷制度を合法としていました。

奴隷制度のもとでは当然ですが、奴隷はすべて所有者の意のままであり、農園から逃げ出すこともできません。クンタ・キンテは、自由を求めて何度も逃亡を試みた挙句、ついには片足の足先を斧で切断されるという責めを受けます。

服従しない奴隷には、ムチという暴力をもって、徹底的な圧力が加えられます。さらにクンタ・キンテは、自らの名前を名乗ることはできず、「トビー」という白人から与えられた名前を使うことを強要されました。

また、女性の奴隷は、農園主からの性的な強要を受けることもハッキリと描かれます。3代目のジョージが、白人農園主から性的関係を強要された結果の私生児であることは、ドラマを見るものに衝撃を与えます。

奴隷たちが「文字の読み書き」を意図的に教えられていないことも、注目すべき点です。逃亡するのを防ぐため、奴隷たちは、農園以外の情報や知識をまったく与えられませんでした。

逃げようとしても、「どこに逃げたらいいのかわからない」というセリフは、象徴的です。

「自由」とは制度だけのものではない

また、奴隷解放が宣言された後も、その苦難は続きます。

法制度としての奴隷はなくなっても、黒人たちは自由に行き来することはできません。所有する土地も財産もなく、生きていく手段がないからです。

さらに白人たちは焼き討ちなどの暴力的な圧力を加え、経済的には多額の借金で束縛しようと試みます。

このドラマを通じて現れるのは、「不自由とはなにか」という問いかけのオンパレードであることがわかります。

俯瞰的な視点で見ると、財産、技能、情報、知識、人脈など、こうしたものを一切持たないことは、「生き抜くことが難しい」という事情が伺えるでしょう。

例えば、ご家庭の話でいえば、「なんで勉強する必要があるの?」という疑問への、一つの答えになるのではないでしょうか。

ドラマの最後は、自分たちの農園を手に入れる

ネタバレになってしまいますが、ドラマの最後では、一族がテネシー州に自分たちの農園を手に入れて、そこに移住することでハッピーエンドを迎えます。

クンタ・キンテから4代で、一族は自由を勝ち取るわけです。

束縛するものは何もなく、自らの土地を自らのために耕すという「自由」を手に入れます。

ドラマの結末は、ドラマを通じて延々と描かれてきた「不自由」とは、対象的であるといえるでしょう。

自由とは何か、ということを改めて考えさせられるドラマとなっています。

現実としては、1960年代の公民権運動まで、アメリカにおける黒人への差別は根強く残ります。

まとめ

深い感動を覚える、傑作中の傑作と断言してもいいドラマ「ルーツ」を紹介しました。

このドラマは1977年放送であり、筆者のように現在30代以下の人は、知らないことも多い印象です。しかし、一度は見るべきドラマとして強く推薦します。

ネットのDVDレンタルでも借りることができるので、DVDを買わなくても気軽に見ることができるでしょう。

日本語の吹替版では、クンタ・キンテの吹き替えで池田秀一さんの美声が聞けるのもいい感じです。