賃上げ促進税制の解説を読んでいると、同じ制度の説明なのに「大企業向け」と「全企業向け」という違った用語が使われているようです。
賃上げ促進税制の区分
賃上げ促進税制については「中小企業向け」と「大企業向け」の2種類があったところ、令和6年度改正では「中堅企業向け」も加わって3種類になりました。
中小企業は「中小企業向け」を使うのが通常ですが、中小企業が「大企業向け」を使えないわけではありません。
少しややこしいのが、「大企業向け」の制度は、「大企業向け」と説明している場合もあれば、「全企業向け」と説明している場合もあることです。
令和4年度版の資料を見ると……
令和4年度改正の賃上げ促進税制では、経済産業省のホームページを見ると、「①全企業向け賃上げ促進税制(中小企業も活用可能)」と書いています。
ところが、ガイドブックを見ると、「大企業向け」というタイトルでありながら、適用対象は「全企業」と書いてあったりで、ややこしいです。
令和6年度版の資料を見ると……
令和6年度改正の経済産業省のガイドブックでは、「全企業向け」に改まっています。
国税庁のタックスアンサー(No.5927)では、「大企業向け」として説明されています。
用語が異なる理由は……
「だからどうなの?」という程度の話ですが、「大企業向け」だと「大企業しか利用できない制度」という印象を持ちやすいです。
これが「全企業向け」だと「全企業におすすめ」(中小企業は中小企業向けのほうがおすすめなのに)のように認識される点もあり、異なる用語が使われる理由になるのかもしれません。
このほかにも、旧・所得拡大促進税制の創設時における認識が影響しているかもしれません。
引用:国税庁「別表六(三十一)を使用するに当たっての注意点(中小企業向け賃上げ促進税制の適用に当たっての注意点)」
もし中小企業向けが使えない場合でも、中堅企業向けや大企業向け(全企業向け)の賃上げ促進税制が利用できることがあります。
この点は、日本税務研究センターの研修動画(第62回「令和7年度 知っておきたい賃上げ促進税制と設備投資関連税制」(講師:吉田智代 税理士))で想定されるケースが説明されているので、視聴をおすすめします。

電子申告や電子納税など、他の税理士さんがあまり採り上げそうにない、税務の話題をブログに書いています。オンライン対応に特化した税理士です。→事務所HP