消費税 届出書に記入する期間の間違いに注意(2)

前回の投稿で、消費税の課税事業者選択において、届出書に記入する適用開始課税期間の記入ミスについて触れました。

かいつまんでいうと、事業開始年度である当年度からの選択であるべきところを、うっかり翌年度からの適用と記入したため、当年度において消費税の還付を受けることができなかったというミスです。届出書の記入には気をつけよう、という話です。

ところで課税期間の記入欄があるのは、おなじみの簡易課税制度選択届出書でも同じですが、こちらの場合はどうなのか。少し考えてみます。

設立年度の簡易課税選択

まず、消費税法37条を読んでみます。

(中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例)
第三十七条 事業者・・・が、その納税地を所轄する税務署長にその基準期間における課税売上高・・・が五千万円以下である課税期間・・・についてこの項の規定の適用を受ける旨を記載した届出書を提出した場合には、当該届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間(当該届出書を提出した日の属する課税期間が事業を開始した日の属する課税期間その他の政令で定める課税期間である場合には、当該課税期間)以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が五千万円を超える課税期間及び分割等に係る課税期間を除く。)については、第三十条から前条までの規定により課税標準額に対する消費税額から控除することができる課税仕入れ等の税額の合計額は、これらの規定にかかわらず、次に掲げる金額の合計額とする。この場合において、当該金額の合計額は、当該課税期間における仕入れに係る消費税額とみなす。

簡易課税制度選択でも、課税事業者選択と同じく、事業開始の課税期間の場合は当該課税期間からの適用、と書かれています。

そして、消基通13-1-5では、

(事業を開始した課税期間の翌課税期間からの簡易課税制度の選択)
13-1-5 事業者が簡易課税制度選択届出書を提出した場合には、当該簡易課税制度選択届出書を提出した日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間(その基準期間における課税売上高が5,000万円を超える課税期間及び令第55条各号《仕入れに係る消費税額の控除の特例の適用がない分割等に係る課税期間》に規定する課税期間を除く。以下13-1-5において同じ。)について、簡易課税制度を選択できるのであるから、当該簡易課税制度選択届出書を提出した日の属する課税期間が令第56条第1項各号《事業を開始した日の属する課税期間等の範囲》に規定する課税期間に該当する場合であっても、当該課税期間の翌課税期間から簡易課税制度を選択することもできることに留意する。(平9課消2-5、平13課消1-5、平15課消1-37、平22課消1-9により改正)

(注) この場合、事業者は、当該簡易課税制度選択届出書において適用開始課税期間の初日の年月日を明確にしなければならない。

とあり、事業開始課税期間の場合は、翌年度からも選択できると書かれています。これを読むと、前回記事の課税事業者選択の流れと同じです。

簡易課税で記入ミス事例は見たことがないが…

前回の記事で、課税事業者選択におけるミス事例が多いことを紹介しましたが、これに比べると簡易課税における課税期間の記入ミスを聞く機会は少ないです。

その理由を考えてみると、インボイス制度の開始前では、新設法人などに該当しない限りは、事業開始から2年度は免税事業者のままでいることが多く、わざわざ簡易課税を選択する意味が乏しかったことが理由としてあるでしょう。

また、あえて課税事業者を選択する場合でも、消費税の還付を受ける目的で選択していたことがほとんどで、簡易課税制度を選択する意味はなかったものと考えられます。

インボイス制度以後は…

インボイス制度の開始後においては、事業開始年度から課税事業者であることも当然になりました。

現在は2割特例の制度がありますので、新設法人などを除いて、事業開始年度では「一般課税」か「2割特例」を申告時に選択できます。2割特例よりも簡易課税のほうが有利な卸売業を除いては、簡易課税制度を事業開始年度に選択する意味はまだ乏しいです。

しかし、この2割特例は「令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する各課税期間」の限定です。この特例もそろそろ終わりが近づいています。

2割特例の終了後は、事業開始年度から簡易課税制度を選択することも普通になっていくのでしょう。

設立時適用が通常になった場合に想定されるミス

怖いのは、課税事業者選択と同じように、簡易課税制度でも適用開始課税期間の記入をミスしてしまうことでしょう。事業開始年度は、とくに記入に慎重であるべきでしょう。

このほか、設立年度が1年未満の法人が、その初年度に簡易課税制度を適用した場合には、いわゆる「2年縛り」ではなく、実質的に「3年度縛り」になる可能性にも留意が必要です。(参考:熊王征秀『タダではすまない!消費税ミス事例集 令和2年度版』大蔵財務協会、2020年)

まとめ

前回に引き続き、消費税の届出書関係のミスで、事業開始年度における簡易課税制度の適用について考えてみました。

適用開始課税期間の記入には要注意、ということで心しておきたいところです。

スポンサーリンク