帳簿の摘要には、何を書いたらいいんですか? という質問への答え

たまに受ける質問のひとつに、会計ソフトの「摘要」って何を書いたらいいんですかね? というものがあります。わかりやすく説明します。

説明のポイント

  • 摘要には、「相手先」「取引内容」を書いておく
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摘要には何を書く?

会計ソフトを使って帳簿をつけ始めた。

ところが、「摘要」という欄があるものの、何を書いたらいいのか、いまいち自信がない……という話もあるようです。

「まあとりあえず、それっぽい感じで書いておけばイーンジャネ?」という印象もあります。

法令上では記載する内容が決められている

しかし、この摘要の欄は「雰囲気」で書いておけばいい、というものではありません。

なぜかというと、税法では、帳簿に記載する内容が決められているからです。

そこから、クドクドと税法の講義をはじめると、おそらく大半の人がブラウザの「×」ボタンや「戻る」ボタンを押しそう……なので、ざっくりした解説を続けます。

何を書いたらいいか?

あなたが青色申告を適用していることを前提とすれば、摘要の欄に書く内容は、次のものを書けば問題ありません。

  • 相手先
  • 取引内容

このうち「内容」というものの詳細ですが、第三者が見て、概要がわかるものであれば問題はないでしょう。

あまりにも細かい内容を書きすぎて、帳簿の摘要がふくれあがっている事例も目にしますが、そこまで神経質になる必要はありません。

また、「内容」を厳密に見ると、税法によっては細かい要件もあって、「売上」「仕入」などについて、

  • 数量、単価

が記載要件である場合もあります。

以下、Q&A方式で説明しますね。

Q1.どこまで細かく摘要欄に書けばいいですか?

先ほどお伝えしたとおり、仕入れなどの数量・単価なども記載要件とされています。

しかし、仕入れた品物のひとつひとつの種類を、仕訳帳に書くことは不可能ですし、不効率です。仕入れたものを把握する別の帳簿(補助簿)を作成して、そこで数量・単価の管理していれば、帳簿の要件を満たします。

このことから、すべてを仕訳の摘要欄に書く必要はありません。仕入れなどを管理する「補助簿」に書いてもOKなのです。補助簿がない場合は、仕訳帳に書くことになります。

ただし、消費税の要件が影響することから、次の点にもご配慮ください。

  • 帳簿とあわせて請求書も保存すること
  • 補助簿に記載している場合でも、仕訳帳にも相手先、内容(補助簿のコードでもOK)を記載すること

Q2.内容を書くのが面倒なんですが?

クラウド会計の普及により、通帳のデータから「相手先」が自動で取り込まれることも多くなりました。

しかし、さきほどお示ししたとおり、相手先だけでなく、「内容」についても摘要欄に記載する必要があります。

Q3.「内容」だけ記載するアプリがありますが?

筆者が確認した事例では、スマホの記帳アプリなどで、標準の設定で、相手先の記載を想定していないものがあります。

この場合は、自分で相手先を考慮した設定をするか、帳簿をExcelなどに出力して手入力で追記が必要です。(実際にやるひとは少なそうですが……)

Q4.もし相手先や内容を書かないと、どうなりますか?

Q1~Q2関連の質問です。「相手先」や「内容」を書かないとどうなるか、ということです。

厳密にいえば、これは税法の要件を満たしていないことになります。

このため、最悪のケースでは、青色申告の取り消しや、消費税の仕入税額控除(仕入代金や経費の消費税を、売上の消費税から差し引く制度)が受けられなくなる可能性があります。

しかし、これはあくまで最悪のケースです。

Q5.実際にダメだったケースはありますか?

Q3のような話をすると、実際にダメだったケースが知りたくなるでしょう。

インターネットで簡単に読める資料では、消費税における記載要件を満たしていないということで、仕入税額控除(仕入代金や経費の消費税を、売上の消費税から差し引く制度)の適用が認められなかったという、国税不服審判所の裁決事例があります。

かいつまんで紹介すると、次のような事例です。

  • 仕入帳の仕入先欄(仕入金額欄の余白)、商品出納帳の備考欄、現金仕入納品書の氏名欄に、仕入先の氏名の氏に相当する部分のみを記載していた
  • 調査担当職員は、仕入先が特定できない場合には仕入税額控除は認められない旨説明し、本件取引の仕入先を特定するよう求めたが、請求人はこれに応じなかった

どうやら、メモ程度に、相手先氏名の「氏」だけを書いていた、というケースです。

この事例を読むと、調査官が取引内容について詳細を尋ねており、それを拒否したためにもめたようです。このため、「帳簿の不備=即、アウト」ということにはなっていません。

だから、帳簿は指摘されるまで適当でいい、というつもりは毛頭ありませんが、ある種の「線引」の事例として参考になるでしょう。

帳簿の記載要件については、税務においても、ほとんど注目されない印象があります。

また、調査においてもそのような点が問題になった事例は、耳にしません。指摘があったとしても、現場レベルで終わっているのでしょうか。

まとめ

帳簿の摘要欄について、何を記載するかをお伝えしました。

上記の説明は、読みやすい内容にまとめたため、細かい税法の説明をぜんぶ抜きにしています。

筆者は、関連法令・大蔵省告示をすべて読んだ上で記事を書きましたが、わかりやすさ優先のざっくりした説明ということでご了承ください。

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