「e-Tax詐欺事件」との報道だが、e-Taxは悪くないのでは?

少し前に報道された、虚偽の還付申告で不正があった問題について触れます。

報道を見ると、e-Taxが悪者のように扱われている感じもあるのですが、e-Taxは別に悪くないように思えるので、その点を指摘しておきます。

事件の概要

高知さんさんテレビの報道がよくまとまっていますので、リンクしておきます。

報道をかいつまむと、納税者が自らのe-Taxの「ID・パスワード」を実行犯(実行役)に差し出した結果、そのIDを用いて虚偽の申告による不正還付が行われ、納税者の口座に還付金が振り込まれて、その還付金をいわれるままに指定口座に振り込んだ、ということのようです。

e-Taxが悪いのか?

高知さんさんテレビから取材された税理士の先生も述べているとおり、「e-Tax自体に問題があって起こることではなく、紙で出しても事件はある」と意見されています。

それなのに、なぜ「e-Tax詐欺事件」というタイトルになるのか、微妙に疑問を覚えました。

e-Taxがわかりやすいから、タイトルに「e-Tax」をつけたのだとしても、e-Taxはあくまでツールであって、問題は「還付申告の問題を突いた事件」です。下手をすると、物事の本質を見誤る危険性があるように思えます。

「ID・パスワード方式」は問題がある制度か

個人がe-Taxを利用するためには、通常は「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」のいずれかを利用します。

このうち「ID・パスワード方式」は、マイナンバーカードを利用しない人向けの暫定的な措置で、本人確認をもとに税務署からe-Taxの利用者IDの交付を受けます。

ある報道では、e-Taxの普及を急いだ国税庁を批判する内容もありました。しかし、e-Taxを利用せずとも、書面でも還付申告は可能ですから、この点をもってe-Taxを批判するのは無理があるように思えます。

例えば、コロナ対策の給付金では、納税者が虚偽の申告書を提出して、その申告書を用いて給付金を不正受給したという問題もありました。しかし、この虚偽の申告について、書面申告かe-Taxのどちらを利用したかはとくに問題にされていなかったように思われます。

この点を見ても、虚偽の申告について今回だけe-Taxが批判されるのは、方向性が違うように感じます。

ただし、e-Taxの還付申告は、還付金の迅速な処理がメリットの一つに挙げられていましたので、今回の事件を受けて、対応の見直しが図られる可能性もありそうです(参考:国税庁「e-Taxを利用して提出された申告書の早期還付について」)。

ID・パスワード方式は、納税者がその制度の意味をよく理解せずに、自らのIDやパスワードを他人に伝えてしまう可能性もあり、制度としては好ましくないのは事実でしょう。原則的な制度であるマイナンバーカード方式への統合を進める時期と思えます。

マイナンバーカード方式であれば、マイナンバーカードを他人に預けることには戸惑いを感じる人も多いでしょうから、e-Taxを利用した不正な還付申告はID・パスワード方式よりも難しくなると思われます。

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