10月1日から、地方税の税務が変化します。変化のひとつは「地方税共通納税システム」の稼働であり、もうひとつは地方税の税務ソフト「PCdesk」のリニューアルです。注目すべき点を先にお伝えしておくことで、今後正式に公表される内容を理解しやすくするための記事です。
説明のポイント
- 地方税の公式税務ソフト「PCdesk」が、2019年10月にリニューアルする
- 地方税の電子納税は、PCdeskを利用する。とくに、今回新規提供されることになるWEB版がおすすめ
会社が無料で使える税務ソフトとは
突然ですが、国税の公式税務ソフトといえば「e-Taxソフト(WEB版)」がおなじみでしょう。(下の画像)
毎月の源泉所得税の納税のために、このソフトにお世話になっている中小企業も多いはずです。国税庁が提供する公式税務ソフトなので、無料で使えるのがうれしいです。
WEB版はブラウザ画面から源泉所得税の納税や、法定調書の提出ができます。少し難しかった電子納税も改良がすすみ、ほとんど違和感はなくなりました。
中小企業が必要とする国税の税務は、WEB版ひとつでOKです。WEB版は余計な機能がそぎ落とされており、中小企業の実務に特化しているのがポイントといえます。
地方税はどうなの?
そんな国税に比べ、会社における地方税の税務はイマイチです。
「PCdesk」という、企業向けの公式税務ソフト(無料)もありますが、インストールが必要なうえに、操作感も極めて悪いものでした。筆者のような専門家が使っても、操作に戸惑うレベルのソフトです。
そんな悪評を考慮したのか、この度「PCdesk」もリニューアルされることになりました。
リニューアルにあたっての重要なポイントは、PCdeskにWEB版が提供されることです。電子納税に注目している当ブログとしては、とくにこの点を強調しておきたいです。
PCdeskは3種類になる
もう少し詳しく見てみましょう。リニューアル後の、2019年10月からの地方税の税務ソフト「PCdesk」は、
- DL版 (ダウンロード・インストール利用)
- WEB版 (ブラウザ利用)
- SP版 (スマートフォン利用)
の3種類になります。
引用:「地方税共通納税システムの概要」(地方税共同機構、以下同じ)
このうちSP版は、メッセージの確認しかできないので、中小企業の税務では不要でしょう。税務で必要なのは、DL版とWEB版です。
ちなみに、地方税の電子申告は「eLTAX(エルタックス)」といいます。このeLTAXを操作するための税務ソフトが「PCdesk」です。
DL版とは?
DL版(ダウンロード版)は、インストールして利用するタイプの税務ソフトです。
電子申告の機能はDL版に限られています。リニューアル前と同様であれば、償却資産の申告や給与支払報告書の提出ができるのは、DL版のみです。
WEB版とは?
次に、WEB版を見てみましょう。
WEB版は、リニューアル前に「利用届出」「電子申請」という機能で提供されていたものが、統合されて新しくなったものです。WEB版のポイントは、次のとおりです。
- WEB版も電子納税に対応する【重要】
- eLTAXの利用開始届は、WEB版のみで対応(リニューアル前の「利用届出」と同じ。ただし会計事務所が関与していれば、すでに利用開始済みの可能性が高い)
- 事務所の移転届等はWEB版のみで対応(リニューアル前の「電子申請」と同じ)
この記事を執筆している9月9日時点で利用できるのは、PCdesk(WEB版)の仮オープンの状態です。
これらを見た感じですと、それなりにわかりやすくできている印象です。
利用環境ですが、Windowsで対応しているブラウザは「Internet Explorer11」のみで、Edgeは非対応です。Macも非対応です。
これは9月の仮利用の環境ですが、10月の正式リリースでも同じままかもしれません。
次に、WEB版からの納税処理を確認します。
中小企業が抑えるべきPCdeskと地方税共通納税システムのポイントも、まさにこのWEB版の電子納税にあるといって過言ではありません。
まず、「納税メニュー」のボタンをクリックすると……
「電子申告」「個人住民税(特別徴収)」「みなし・見込納付」の納付情報を登録できるボタンがあります。
また、その依頼で発行されたもの電子納税も、「確認・納付」のボタンで可能になります。これらは、2019年10月に「地方税共通納税システム」が稼働することに連動した、新しい電子納税の流れとなります。
電子納税以外の部分も見てみましょう。
新規にeLTAX(エルタックス)を利用開始する場合は、WEBから申請します。
初心者でもWEB版のトップページに行けばよい流れで、利用開始のハードルは低くなっています。(ただし会計事務所に顧問を依頼していれば、自社での利用届出は基本的に不要)
会社で理解すべき操作は?
DL版とWEB版の違いがなんとなくわかったところで、会社の税務として理解すべき点を整理しましょう。
把握すべき点は、次の3点です。
- 住民税(特別徴収)の電子納税 ……DL版・WEB版で両対応
- 償却資産の申告。毎年1月31日期限(年1回) ……DL版のみ
- 給与支払報告書の提出。毎年1月31日期限(年1回) ……DL版のみ
とくに重要なのは、住民税(特別徴収)の電子納税です。
DL版でしかできない業務は、会計事務所など外部に委託している可能性もあるため、優先度は低いです。
このため、中小企業はWEB版を活用して、住民税(特別徴収)の電子納税に関する操作を覚える必要があります。
「地方税共通納税システム」は、このPCdeskを介して利用すればいいので、中小企業が覚えるべき税務もここにあるといってよいでしょう。
その手順ですが、WEB版にログインして納付情報を発行し、その依頼情報をもとに電子納税をする流れと考えられます。
どのような操作方法であるのかは、9月24日に公開予定とされているPCdeskのマニュアルで確認できます。
筆者は電子納税までの流れにおいて電子署名が必要か?という点が微妙に気になっていますが、納付情報の登録依頼であれば署名は不要と予想しています。
まとめ
地方税の公式税務ソフト「PCdesk」がリニューアルすることと、とくにWEB版が新規提供されることで、中小企業でも電子納税しやすくなることをお伝えしました。
PCdeskの正式なマニュアルは、9月24日に公開とされていますので、こちらも参照してください。(当ブログでもお伝えします)
以下、補足としての説明です。
「地方税共通納税システム」が始まるという情報は、すでに目にされた方も多いでしょう。ただし、それだけを聞いても、中小企業にとっては何をすればいいのかよくわかりません。
「地方税共通納税システム」を利用して電子納税を実現するためには、中小企業の実務においては、PCdeskの利用がカギとなります。
そのなかでもWEB版は、利用開始のハードルも低く、その活用方法に注目すべきと考えます。