中間申告の納付情報をe-Taxのメッセージボックスに自動登録しない理由は

e-Taxにまつわる疑問です。

以前の記事で、e-Taxのメッセージボックスに届く中間申告の「お知らせ」から、納付情報を参照作成できるようになったことをお伝えしました。

予定申告(中間申告)のお知らせを見ていて気づいたことですが、2024年5月に実施されたe-Taxのシ...

これで実務はかなり便利になったのですが、そもそもの疑問として、「最初から納付情報を自動登録してくれればいいのに、なぜそうしないのか」という疑問があります。この点を考えてみたので述べておきます。

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おさらい

e-Taxのシステムが2024年5月にリニューアルしたことにともない、中間申告の納付について「参照作成」が可能になりました。

かいつまむと、e-Taxのメッセージボックスに届く「お知らせ」から納付情報登録依頼の画面に進むことができます。その納付情報登録依頼の画面には、「お知らせ」の内容が自動転記されますので、手間が大幅に削減されます。

e-Taxのマニュアルでも利用方法が説明されています。→(参考1)お知らせからの納付情報登録依頼の作成(お知らせ参照作成) 

「便利になったぞ」という話ではあるのですが、そもそもの疑問として、なぜ最初からメッセージボックスに自動的に納付情報を登録してくれず、わざわざ納税者側に参照作成という手続きを踏ませるのか、という点で疑問を覚える面もあります。

理由は明らかにされていませんので、ブログ筆者で推測してみます。

中間申告の規定はどうなっているか

理由を推測する前に、その前提として規定を再読してみます。

法人税法71条1項では「内国法人である普通法人は、その事業年度が6月を超える場合には、当該事業年度開始の日以後6月を経過した日から2月以内に、税務署長に対し、次に掲げる事項を記載した申告書を提出しなければならない」とあり、通常では前事業年度の半額を納税します。そして73条では、中間申告書の提出がなかった場合には、提出期限において71条1項に掲げる中間申告書の提出があったものとみなす、とされています。

そして76条では「中間申告書を提出した内国法人である普通法人は、当該申告書に記載した第71条第1項第1号に掲げる金額があるときは、当該申告書の提出期限までに、当該金額に相当する法人税を国に納付しなければならない」とあります。

消費税法の中間申告の規定は少しややこしいですが、なじみのある年1回の納付であれば、42条6項に「事業者は、その課税期間開始の日以後6月の期間につき、当該6月中間申告対象期間の末日の翌日から2月以内に、次に掲げる事項を記載した申告書を税務署長に提出しなければならない」とあります。

そして、法人税法と同じように、44条にて中間申告書の提出がなかった場合には提出期限において中間申告書の提出があったものとみなすとされており、48条にて中間申告書を提出した者について申告額を納付しなければならないとされています。

これ以上は長くなるので書きませんが、地方税についてもおおむね同じ感じです。

「中間申告→納税」が前提だから?

規定を読んでみるとわかりますが、納付情報が自動でメッセージボックスに登録されないのは、「中間申告書の提出が前提とされているため」ということでは…… と推測されます。

「中間申告書は面倒だから、出したことなんかない」という話であっても、法律としては申告期限において中間申告書を提出したものとみなされており、その申告書の納付額を申告期限までに納付するという流れです。

法人税や消費税は、法人や事業者による申告納税が前提です。

ということは、申告をしていないのに先に納付情報が自動で登録されるのは、まるで賦課課税のようですし、申告納税とは前提が異なる、ということなのでしょう。

紙の納付書は送られてきたが

そうはいっても、納付額があらかじめ記載されてきた紙の納付書が送付されてきたじゃないか、それならば納付情報が自動で登録されたものとほとんど同じだろう、という気もします。

しかし、この納付書は、予定申告書や中間申告書とセットで送付されているはずです。

申告書はあえて提出しなくても提出したものとみなされる(提出期限において提出したことになる)ので、申告書の提出を無視して納付だけを行ったのは、法人や事業者の任意ということでしょう。

手続きとしては、「申告書の提出(みなす)→納税額の納付」という段取りになっています。

わかってはいるが、モヤモヤする

話を最初に戻します。

この記事で疑問を持っていたのは、メッセージボックスに最初から中間申告に関する納付情報を自動でセッティングしてくれれば、誰でも楽に納付作業ができるのに、ということでした。

紙の納付書であれば、納付書に金額が最初から記載があったわけですし、ペイジーの納付コードもあらかじめ書いてありました。これはもう「納付スタンバイOK」の状態です。ところが、e-Taxだと自分で納付情報登録依頼をしなければならず、負担は大きい状態でした。

細かい点をいえば、e-Taxから納付情報登録依頼を利用しなくても、ペイジーの納付コードは「入力方式」によって自分で作成することも可能ですが、安心感にとぼしく手間もかかるのでここでは省きます。

2024年5月に「参照作成」機能が追加されたことで負担は大幅に軽減されましたが、それでも「参照作成」という段取りを踏まされるわけで、やはりモヤモヤが残ります。その理由を推測すると、「申告納税が前提だから」ということになりそうです。

まとめ

中間申告における納税について、紙の納付書は最初から納付額が記載されているものを送ってくるのに、なぜe-Taxだと納付情報を最初から登録せずに「参照作成」という手順を踏ませるのか、という点で疑問があったので、その点を考える記事でした。

話を整理すると、事務の負担軽減目的と申告納税方式を維持するギリギリの境界として、e-Taxのメッセージボックスに届くお知らせからの「参照作成」(自動転記)という方式が用意されたように思われます。

これは、個人の確定申告書でも似たような話です。他国のような「記入済み申告書」は採用せずに、マイナポータルに集約した情報の自動転記によることで「事実上の記入済み申告書」として現状の申告納税方式を維持することとした、という話に近いように思われます。

これらはあくまで筆者の推測ですので、あらかじめご了承ください。

補足の記事を書きました。

前回の記事の補足です。先に「中間申告の納付情報をe-Taxのメッセージボックスに自動登録しない理由は...

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