平成30年度税制改正により、法人の代表者以外の取締役・従業員でも、委任状を添付すれば、代理で電子申告することが可能になりました。この変更についてお伝えします。
説明のポイント
- 従業員に電子申告を代理させることができるようになった
- 委任状の作成が必要だが、e-TaxとeLTAXで方法が微妙に異なる
従業員も代理で申告できる
平成30年度税制改正により、税務に関する電子申告の制度がいくつか変更されました。その改正のひとつが、従業員でも電子申告を代理できるようになった、というものです。
これまで法人が電子申告をする場合、代表者による電子署名が必須でした。改正後は、経理担当などの従業員も、電子署名をして送信できるようになりました。
ただし、多くの中小企業では、税理士に申告を依頼していることがほとんどでしょうから、この改正を気にする必要はありません。なぜなら、税理士が電子署名すれば、法人側の署名は不要だからです。
よって、この改正に影響するのは、法人だけで申告している企業であるといえます。
e-Tax向け委任状の作り方
内容を具体的に見ていきましょう。改正の影響で、従業員が電子申告をするための手続きが発表されています。
国税を扱う「e-Tax」では、従業員が代理するにあたって、次の対応が必要とされています。
- 任意の形式の委任状(PDF形式)を作成
- PDFに、代表者の電子証明書により電子署名を付与
- e-Taxに、代表者から委任を受けた者の電子証明書を登録
- 申告・申請等データに、委任状データを添付して送信
引用:平成30年度税制改正に伴い実施するe-Taxの利便性向上施策について(国税庁e-Taxサイト)の4番
eLTAX向け委任状の作り方
地方税を扱う「eLTAX」でも、同様の措置が取られることになりました。
「eLTAX」における委任状の作成手順は次のとおりです。
- 任意の形式の委任状に代表者が押印をして、PDF形式で作成
- eLTAXに、代表者から委任を受けた者の電子証明書を登録
- 申告・申請等データに、委任状データを添付して送信
引用:法人の代表者から委任を受けた者の署名緩和について(eLTAX)
2つの比較
e-TaxとeLTAXでは、委任状の作成に微妙な違いが見られます。
e-Taxでは、委任状のPDFに、代表者の電子署名が必要とされています。一方、eLTAXでは、委任状の作成段階で押印したものをPDF化するものとし、代表者の電子署名は必ずしも必要ではないとされています。
法人が申告する場合は、e-Tax(国税)とeLTAX(地方税)の両方にデータを送信することになるでしょう。
2つの税務ネットワークの対応が微妙に異なっています。電子委任状を1枚にまとめるならば、両方の条件を満たす電子委任状に仕上げる必要がありそうです。
すなわち、
- 代表者の押印つき
- 代表者の電子署名あり
という電子委任状です。電子委任状の形式はどちらも任意とされていますので、e-Tax側の必要事項をベースにすればよいでしょう。
なぜ違いがあるのか?
2つの税務ネットワークで、対応に違いが分かれたのは興味深いところです。
e-Tax側が委任状に電子署名を求めているのは、「電子署名の代理」という面から見ると理にかなっていますが、メリット的にはどうでしょうか。
代表者は申告書に電子署名しなくてよいけれども、委任状への電子署名が必要です。
e-Taxの「電子署名等を要しない者を定める告示」の改正を見ると、電子委任状の形式は、
当該委任を受けたことを証する電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)
と書かれていますが、その電子委任状(電磁的記録)に代表者の電子署名を付すということは、書いてありません。
なぜ、委任状に電子署名が必要なのかは、この告示だけでは理解しづらいです。
まとめ
ここ最近で明らかにされた情報をもとに、電子申告の改正点をお伝えしました。
税理士が申告を代理する中小企業では、ほとんど気にする必要のない話ですが、e-TaxとeLTAXの対応の違いが興味深かったので話をまとめてみました。