前回の記事の補足です。前回の記事で「10万円未満は減価償却資産ではない」というのは思い込みである、と書きましたが、この点について追加で触れておきます。
会計はどうなっているのか
前回の記事を整理すると、減価償却資産に金額の要件はなく、10万円未満の減価償却資産については取得価額相当額を損金経理しない限り、減価償却資産としての計上が必要になるということでした。
ところが、10万円未満の分割払いだと「減価償却資産ではない」と思っているところに、購入時の支払いはないことが盲点になって、処理がもれやすいのではと推測しました。
ところで、私のような税務を扱う者は、税務の処理だけをとかく気にしがちですが、会計についても配慮が必要です。
少額の減価償却資産について、中小企業に関する会計ではどう考えられているのでしょうか。
「中小企業の会計に関する指針」(令和5年5月改正)によると、
33.固定資産の取得価額
(3) 少額の減価償却資産
減価償却資産のうち取得価額が少額のものについては、その取得した事業年度
において費用処理することができる。
と書かれています。
「費用処理することができる」というのは、法人税法施行令133条を意識した扱いであるかと思われます。(措法第67条の5の、30万円未満の特例まで意識された意味であるかは、ブログ筆者はわかりません)
会計では費用処理しなければ、減価償却資産になるわけです。この点を見ても、「少額の減価償却資産は、減価償却資産ではない」というのは、思い込みといえそうです。
「少額の減価償却資産は、取得価額の全額を費用処理(損金経理)すれば、減価償却資産の計上は不要」が正しい認識になるでしょう。
なお、中小企業の会計に関する基本要領では、少額の減価償却資産に触れた内容はありませんでした。
まとめ
携帯電話の分割払いの処理からは話が離れてしまいましたが、10万円未満の分割払いの端末購入の認識という点で、話を深掘りしてきました。
繰り返しになりますが、分割払いだと購入時に支払いがないことに加え、10万円未満であることで、認識が薄れやすくなって「盲点」になるのでしょう。
普段何度も同じことを繰り返していると、その行為がマンネリ化した結果、そもそもの要件が何であるか、その意識が薄れがちになりやすいです。これは人間の「性能」の限界ともいえるので、やむを得ない点もあります。
今回考えたことは、そのような点を再認識させられるものでした。