少額のソフトウェアも合計70万円以上なら中小企業投資促進税制もありうる

中小企業投資促進税制とソフトウェアに関する記事の4回目です。今回は、少額のソフトウェアでも合計で70万円以上の場合は中小企業投資促進税制の対象になりうる点を紹介します。

説明のポイント

  • 中小企業投資促進税制におけるソフトウェアの要件は、合計取得金額が70万円以上でも対象になる
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中小企業投資促進税制とソフトウェアの要件

以前の記事(1回目)で、中小企業投資促進税制についてソフトウェアの適用がもれやすい、という問題を指摘しました。

その記事の補足になりますが、ソフトウェアの要件の「70万円以上」は、ソフトウェア単体ではなく、合計であっても対象となります。この点も意外と危ないように思われます。

2回目の記事で確認した要件を再掲します。

措置法施行令27条の6③
三 ソフトウエア 一のソフトウエアの取得価額が七十万円以上のもの(当該中小企業者等が当該事業年度(法第四十二条の六第一項に規定する指定期間の末日以前に開始し、かつ、当該末日後に終了する事業年度にあつては、当該事業年度開始の日から当該末日までの期間に限る。)において、取得又は製作をして国内にある当該中小企業者等の営む同項に規定する指定事業の用に供した同項第二号に掲げるソフトウエア(法人税法施行令第百三十三条又は第百三十三条の二の規定の適用を受けるものを除く。)の取得価額の合計額が七十万円以上である場合の当該ソフトウエアを含む。)

措置法施行令をみるとわかりますが、「一のソフトウエアの取得価額が七十万円以上のもの」のほかに、「ソフトウエアの取得価額の合計額が七十万円以上である場合の当該ソフトウエアを含む」とされています。

また、「法人税法施行令第百三十三条又は第百三十三条の二の規定の適用を受けるものを除く」ともあります。これらは、10万円未満の「少額の減価償却資産の取得価額の損金算入」、20万円未満の「一括償却資産の損金算入」のことを指していますので、少額のソフトウェアとして損金としたものは対象外です。

中小企業庁のパンフレットでは

第3回の記事で紹介しましたが、中小企業庁の中小企業税制を紹介するパンフレット(2010年版)では、具体例が書かれています。

問 中小企業投資促進税制の対象となるソフトウェアとは、具体的にどういうものですか?
答 対象となるソフトウェアは、次のようなものをいいます。
業務用に使用されるワープロソフト・表計算ソフト・経理ソフト・給与ソフトの他にも、イラストソフト・画像ソフト・CADソフトが該当します。これらのソフトウェアは、減価償却資産として貸借対照表に計上される必要があり、30万円未満を即時償却できる少額減価償却資産の特例などを利用している場合は、重複適用ができません。また、ソフトウェア販売会社が市販するために開発したソフトの原本や、会社が研究開発用のために購入したソフトウェアは適用されません。これ以外に、適用されないものは次の通りです。
(略)


出典中小企業庁「中小企業税制39問39答」(平成22年度版)

引用した文章でわかるとおり、中小企業投資促進税制の対象にするためには、ソフトウェアとして減価償却資産の計上が必要です。

30万円未満の「少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」との重複適用も不可とされています。

少額のソフトウェアを多数購入した場合は……?

中小企業投資促進税制におけるソフトウェアの要件は、「取得又は製作をして国内にある当該中小企業者等の営む同項に規定する指定事業の用に供した同項第二号に掲げるソフトウエアの取得価額の合計額が七十万円以上である場合の当該ソフトウエアを含む」とされていました。

では、ソフトウェアのパッケージで「1本あたり8万円」のものがあるとして、これを10本購入して使用した場合はどうでしょうか。

この場合、ソフトウェアの取得価額の合計額は80万円ですので、減価償却資産として計上した場合は、中小企業投資促進税制の対象になりうると考えられます。

しかし、実務上は1本あたり8万円ということで消耗品費とし、特段気にせず「少額の減価償却資産」で即時に全額経費してしまいそうです。

ソフトウェアとして5年かけて償却するよりも、即時償却のメリットを納得して選んでいるのであれば問題ありませんが、その前段階の判断として、税額控除の可能性を意識しておく必要がありそうです。

関連する話ですが、異なるソフトウェアを個別に買って、それらの合計が70万以上になった場合でも中小企業投資促進税制の対象になるかというのは、よく考えると意外に悩むところです。

施行令では「当該中小企業者等が当該事業年度において、当該中小企業者等の営む同項に規定する指定事業の用に供した同項第二号に掲げるソフトウエアの取得価額の合計額が七十万円以上である場合の当該ソフトウエア」とあります。

この合計の取得価額とは、「事業年度」「指定事業ごと」「取得ごと」のいずれの合計で判定するのか、という悩みがあるわけです。

中小企業庁のパンフレット(令和4年度版)を読む限りでは、「事業年度」の合計額で考えてもよさそうに思われます。

まとめ

中小企業投資促進税制とソフトウェアについて、合計ベースでの検討も必要な点をお伝えしました。

合計取得金額が70万円以上とされているため、単体が10万円未満であっても複数購入している場合は、税額控除の可能性に要注意といえそうです。

ただし、実務的に中小・小規模事業者でお目にかかるかというと、なかなか機会は少ないです。クラウド型のソフトも普及しているため、少額ソフトウェアの大量購入という機会も減っているように思われます。

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