中小企業投資促進税制の対象となる「ソフトウェア」とは 中小企業庁パンフの変遷

前回の記事では、中小企業投資促進税制とソフトウェアに関する要件の変遷を確認しました。今回は、中小企業投資促進税制とソフトウェアのうち、中小企業庁のパンフに書かれている案内に変化が生じていること、過去のパンフレットは参考になるのかという話です。

説明のポイント

  • ソフトウェアが中小企業投資促進税制の対象となって以降、2013年に作成されていたパンフレットまでは「自社利用ソフトウェアとして無形固定資産に計上されるものは原則として対象」と書かれていた。
  • 2016年以降のパンフレットは「合計の取得価額が70万円以上の一定のソフトウエアが対象」だけで具体例もなく、書き方が控えめになっている。
スポンサーリンク

 

中小企業庁パンフレットと中小企業投資促進税制

中小企業向けの税制について理解するために、中小企業庁の作成したパンフレットを読むこともあるでしょう。

過去2回の記事で、中小企業投資促進税制とソフトウェアに関する要件を気にしてきましたが、この記事では中小企業庁のパンフレットに着目して、変遷を追ってみます。

なお、この記事で着目しているのは、中小企業投資促進税制において対象となるソフトウェアとは何なのか、という話です。

ソフトウェアが対象に含まれた当時(2006)

2006年版のパンフレットにおける記述を見ると、中小企業投資促進税制においてソフトウェアとして追加された旨が書かれているほか、「自社利用ソフトウェアとして無形固定資産に計上されるものは原則として対象」と書かれています。

パンフレットのデザイン変更(2010)

2010年版のパンフレットでも、「自社利用ソフトウェアとして無形固定資産に計上されるものは原則として対象」という案内は同じままです。

さらに、パンフレットのデザイン変更にともなって、Q&Aが少し詳しくなっています。

問 中小企業投資促進税制の対象となるソフトウェアとは、具体的にどういうものですか?
答 対象となるソフトウェアは、次のようなものをいいます。
業務用に使用されるワープロソフト・表計算ソフト・経理ソフト・給与ソフトの他にも、イラストソフト・画像ソフト・CADソフトが該当します。これらのソフトウェアは、減価償却資産として貸借対照表に計上される必要があり、30万円未満を即時償却できる少額減価償却資産の特例などを利用している場合は、重複適用ができません。また、ソフトウェア販売会社が市販するために開発したソフトの原本や、会社が研究開発用のために購入したソフトウェアは適用されません。これ以外に、適用されないものは次の通りです。
(略)

これを見ると、ソフトウェアの具体例が明示されているので、イメージがつかみやすいです。

パンフレットのデザイン変更(2014)

2014年版のパンフレットでもデザイン変更が行われ、その内容も変化しています。従来の「自社利用ソフトウェアとして無形固定資産に計上されるものは原則として対象」の記述はありませんが、一定のソフトウェアを除いて「全てのソフトウエアが対象」というように、むしろ積極的な案内になっています。

【問】 中小企業投資促進税制の対象となるソフトウエアとは、具体的にどういうものですか?
【答】 対象となるソフトウェアは、①から⑤のソフトウエア以外、全てのソフトウエアが対象です。
(略)

Q&Aの変更(2016)

2016年版のパンフレットでは、過去のパンフレットでは見られた表現が控えめになりました。

【問】 中小企業投資促進税制で対象になるのは、どのようなソフトウエアですか?
【答】 合計の取得価額が70万円以上の一定のソフトウエアが対象となります。
(略)

対象となるソフトウェアの案内が「一定のソフトウエア」だけで、その一定のソフトウエアについての案内はパンフレットのなかにはありません。

この記事執筆時点で現在提供されているパンフレット(令和4年度版)でも、この表示は同じままです。

「一定のソフトウエア」だけではイメージしづらい

ささいな着目点ですが、パンフレットの書き方を見ても、それなりの変遷があることに気づきます。

気になるのは、2016年版以降のパンフレットにおいて、ソフトウェアの対象範囲に関する書き方が控えめになっていることです。正直な話、「一定のソフトウエア」では、何を意味しているのかイメージはつかみづらいでしょう。

中小企業庁ホームページ国税庁タックスアンサーではソフトウェアの具体例まではわからないから、情報をもとめてパンフレットを見たとしても、結局のところはなんだかよくわからないまま……という状況になっていると思われます。

過去パンフの案内は有効か

前回の記事で中小企業投資促進税制とソフトウェアに関する要件の変遷を確認したのは、2016年版からパンフレットの表現が控えめになった理由を確認することと、過去のパンフレットで案内された「対象となるソフトウェア」の認識は現在も有効なのか? を考えるためです。

2016年版のパンフレットで、対象となるソフトウェアの表現が控えめになったことについては、ソフトウェアに関する税制の変化とは、とくに関係は無いと思われます。ソフトウェアの対象要件が変更されたのは、平成24年度(2012年度)改正が最後です。

また、過去のパンフレットで案内されたソフトウェアの範囲について、その要件に大幅な変更はありません。そう考えると、過去のパンフレットも参考にしても問題ないのでは……と思われます。

まとめ

中小企業庁が過去に作成したパンフレットにおいて、中小企業投資促進税制とソフトウェアに関する案内に着目して変遷を追ってみました。

従来はソフトウェアは広く対象になるという書き方だったのが、2016年版以降のパンフレットでは、そのような記述がカットされています。

カットされた理由はわかりませんが、税制改正による影響とは思われませんので、過去のパンフレットの記述を参照しても問題はないように思われます。

スポンサーリンク