名刺の肩書きだけ「専務」「副社長」と名乗らせるのはやめましょう

名刺を差し出す人

名刺の肩書きで「専務」や「副社長」と名乗っていても、実際の地位と異なる場合(自称専務)を見かけます。しかし、これはなるべくやめることをおすすめします。

説明のポイント

  • 自称専務の問題を、会社法、法人税法、雇用保険とのかねあいから説明している
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名刺に「専務」?

名刺に「専務」や「副社長」と書いてあっても、実際は単なる従業員である場合を見かけます。

営業上の取引相手に重要人物であることを印象づけたい理由で、「専務」という役員の地位を名乗らせることが多いようです。

しかし、次の理由からおすすめしていません。

会社法とのかねあい

会社のしくみとして、役員(取締役など)と、従業員は明確に区分されています。これは、会社法という法律で決められています。

役員は、株主総会で選任され、会社に対する各種の責任も生じます。一方従業員は、会社に雇われているのであって、会社に対する重い責任はありません。

役員ではない従業員が、役員のように振る舞うのは、組織管理として問題があるわけです。

どんなに小さい企業であっても、会社はひとつの組織です。

法人税法とのかねあい

会社の税金を決める法律である「法人税法」にも、要注意です。

この法律は、役員に支払う給与に厳しく目を光らせています。どのくらい厳しいかというと、このようなイメージです。

「役員へ支払う給与は経費になりません! ただし、ある条件を満たせば経費にできます」

法律のつくりがこの厳しさです。最初の一文だけを読んだら、「え?経費にならないの?」と思ってしまうでしょう。

従業員の給与では、こんなことはありません。支払えば経費になります。

ちなみに、一般的に「経費」と考えているものは、法人税法では「損金(そんきん)」と呼んでいます。

法人税法がこんな厳しい書き方なのには、理由があります。

役員に対する給与をうまく利用して、節税をさせないように厳しく条件を定めているわけです。その点については以前の記事で触れました。

参考厳しい役員報酬の制限 利益を見ながら変更・調整はできない (当サイト、2016年1月20日)

従業員などに「専務」を名乗らせると、税務調査でややこしいことになりますし、調査官にもいい印象を与えません。

では、役員と従業員を兼務する役員(使用人兼務役員といいます) が、名刺で「専務」を名乗っていた場合はどうでしょうか。

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専務は、会社における管理監督に専念する立場であり、従業員と兼務することはできないはずです。

この場合、その専務の地位が株主総会などで決議されたものでない限りは、本来の専務としては扱わないという通達もあります。しかし、誤解を招くことはやめたほうがいいでしょう。

雇用保険とのかねあい

会社法の説明でも述べましたが、役員と従業員は立場が違います。

役員は株主総会で選ばれた立場であり、会社に雇用されていませんので、労災保険と雇用保険には入れません。この点を考えても、従業員に「専務」を名乗らせるのは、やめたほうがいいことになります。

なお、従業員を兼務する役員(使用人兼務役員)の場合は、条件付きで保険に加入できます。

参考労働者の取扱い(例示)(厚生労働省)

まとめ

起業したばかりの企業でよくあるのは、単なる従業員に「副社長」や「専務」を名乗らせているケースです。

一方、歴史のある企業では、従業員を使用人兼務役員としたのち、肩書きだけ「常務」などと名乗らせているケースを見かけます。勤続年数の長い従業員に対して報いる気持ちがあるようですが、「常務」は使用人を兼務できません。

これらを確認する場合は、登記や株主総会の議事録などを見ます。肩書きと組織上の本来の地位は、きちんと一致させるようにしましょう。

税理士・税務ブロガー・クラウド会計研究家。都内を中心に活動する“フリー”の税理士です。「クラウド会計で帳簿をつけて、税務は税理士に質問したい」という、ミニビジネス志向の事業家サポートに力を入れています。
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