携帯電話端末の分割払いと経理処理を考える(2)

前回の記事の補足です。10万円未満の経費については比較的油断が生じやすいことと、備品管理への対応を考えます。

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前回記事の概要

前回の記事をかいつまむと、割賦で購入した携帯電話の分割払いであれば、10万円未満の経費であっても購入時に全額損金にしないと減価償却資産の計上もれになる。納税者不利を受け入れる簡便的な処理として、分割払いの支払時に損金計上・課税仕入れを提案する向きもあるが、償却資産税の影響も気になるということを述べました。

今回の記事は、前回検討した内容をもう少し掘り下げてみたいと思います。

少額減価償却資産は損金経理が要件

前回の記事でも述べましたが、10万円未満の少額減価償却資産については、要件として法人税法施行令133条で損金経理が求められています。

(少額の減価償却資産の取得価額の損金算入)
第百三十三条 内国法人がその事業の用に供した減価償却資産(第四十八条第一項第六号及び第四十八条の二第一項第六号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるものを除く。)で、取得価額(第五十四条第一項各号(減価償却資産の取得価額)の規定により計算した価額をいう。次条第一項において同じ。)が十万円未満であるもの(貸付け(主要な事業として行われるものを除く。)の用に供したものを除く。)又は前条第一号に規定する使用可能期間が一年未満であるものを有する場合において、その内国法人が当該資産の当該取得価額に相当する金額につきその事業の用に供した日の属する事業年度において損金経理をしたときは、その損金経理をした金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

端末を一括払いで購入した場合、10万円未満の経費では一般的に消耗品費などに含めることが多いでしょうから、そのまま損金経理されるでしょう。

ここで難しいのは、10万円未満の携帯電話を分割払いで購入したときの認識です。分割払いで購入した携帯電話の購入資料が手もとにあるが、「10万円未満だから、これは減価償却資産ではない」という油断が生じやすいのでは、ということです。

減価償却資産は、法人税法2条23項で「・・・工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるもの」とされています。金額的な要件はありません。

もし300万円の車両を分割払いで購入したとすれば、会社も会計事務所にその旨を伝えるでしょう。会計事務所もその話を聞いたならば、「分割払いの資料をください」と会社に伝えるはずです。

しかし、10万円未満の分割払いでは、こうした認識があいまいになりやすいのでは、ということです。金額的に少額ですし、料金が上下する通話料に含めて支払いが生じますので外観的に気づきづらいです。

こうした事情が、あとで気づいたなどで結果的に簡便な処理を容認せざるを得ない、という事情につながっている可能性もありそうです。

全額を損金経理しなければ、減価償却資産への計上が必要

10万円未満の少額減価償却資産を「減価償却資産として計上する必要はない」というのは、「当該取得価額に相当する金額につきその事業の用に供した日の属する事業年度において損金経理をした」ことが条件です。

逆にいうと、取得価額の全額を損金経理しなければ減価償却資産として計上する必要が生じるものといえます。この処理は償却資産税にも連動していますので、複数台の社用携帯を購入しているのであれば、影響がそれなりにあるようにも思われます。

「10万円未満は減価償却資産ではない」というのは、税金の有利さだけに着目した「ある種の思い込み」ともいえるかもしれません。例えば、10万円未満の減価償却資産であっても実務上の必要性から、固定資産として計上している会社もあることでしょう。

税金的には不利であっても、固定資産台帳と社内の備品管理簿をなるべく一致させたい、もしくは兼用させたいために、そのような処理をすることもあるかもしれません。

個人の場合は、所得税法施行令138条1項により、10万円未満の減価償却資産は減価償却をすることなく全額を必要経費に算入します。

社内の備品管理はどうなっているのか

一定の会社の規模になれば、社内の備品管理もよりしっかりする必要が生じます。社内で購入している備品の管理がおろそかであれば、社内における不正が生じる懸念もあるからです。

話を戻すと、携帯電話の分割払いを実務上の簡便さを優先して、購入時は未処理、支払時に経費化するとなると、購入時における携帯電話の備品管理の認識はどうなっているのかが気になります。

経理と備品管理は別もので、きちんと備品管理ができていればいいのですが、どうでしょうか。

備品管理を徹底するのであれば、経理や固定資産台帳との関連付けも意識する必要があるわけで、この点で購入時に未処理というのは、備品管理の面から見て微妙な感じがします。

こうして考えてみると、簡便的な処理が「黙認」されるのは、規模の小さい会社に限定されるように思われますがどうでしょうか。

まとめ

前回の記事の補足を書きました。

「10万円未満は減価償却資産ではない」というのは、全額を購入時に損金経理していれば当てはまるのですが、少額の分割払いにおいては、こうした認識がこぼれ落ちやすい印象を持ちました。

また、備品管理の面から会社の認識がどうなっているのかも気になります。備品管理を徹底させる意味では、購入時の処理をキチンとすることが望ましいように思われます。

ここに書いた内容はすべて私見です。他の見解を否定するものではありません。

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