消費税は本当に「悪税」か。国際比較で考えてみる【1】直間比率

日本の消費税は「海外と比較してどうなのか」という点が気になっているので、財務省ホームページで手軽に見られる資料をもとに考えてみます。

今回は、税収構造における税の割合をもとに考えます。

スポンサーリンク

 

1.消費課税の税収比の割合はOECD諸国の平均以下

財務省ホームページには、「OECD加盟国(38ヵ国)における所得・消費・資産課税等の税収構成比の比較(国税+地方税)」という資料があります。

この資料では、国際比較として、税収に占める税の割合が各国でどう異なっているかを比較しています。元資料は「OECD “Revenue Statistics 1965-2021″のデータを使用」とあるので、確かな根拠であるといえます。

この記事でとくに注目したいのは、消費課税の割合です。この消費課税は、一般消費税(私たちが通常「消費税」と呼ぶもの)のほかに、個別消費税(たばこ税や酒税など)も含む割合です。

資料を見ると、日本の税収に占める消費課税の割合は35.0%とされています。OECD諸国の平均は45.0%となっています。

これを見ると、消費課税の税収に占める比率は、国際比較で見ると割合としてむしろ低いといえます。

2.個人への所得課税の割合は平均並み

上記1.で見たとおり、消費課税が税収に占める割合は国際比較で見ると低いわけですが、個人所得の課税についてはどうでしょうか。

国際比較で見ると、日本は31.4%で、OECD諸国の平均は32.6%です。おおよそ平均並みといえそうです。

3.法人所得課税の割合はむしろ高い

消費課税の割合が低く、個人所得課税の割合が平均並みであれば、そのしわ寄せがどこにあるのかというと、法人課税です。

意外なのですが、税収に占める法人課税の割合は、国際比較で見ると上から4位に来ています。日本の割合は19.6%ですが、OECD諸国の平均では12.3%です。

割合的に見ると、「消費税悪玉」論には違和感

世間では「法人税を下げる財源になったのは消費税だ。大企業が大もうけして、その犠牲になったのは庶民だ」「消費税が日本の衰退の原因となった」という意見を述べる人がいますが、このブログの筆者はこうした意見に懐疑的な姿勢です。

上記の資料を見ると、税収のうち法人課税に占める割合は、国際比較で見ると高いことが示されています。

その一方で、「犠牲になった」はずの個人は、個人所得課税と消費課税の税収との割合は国際比較では平均よりも低いとされています。もし「重税にあえぐ庶民」ということであれば、所得課税と消費課税の割合は国際比較でむしろ高いほうが自然に思われますが、どうでしょうか。

少なくとも、「大企業がいい思い」をしているならば、法人課税の割合が税収比で高いのは違和感があります。

また、消費税が日本が衰退の原因になったというのも、この比率で見ると違和感があります。ドイツ、フランス、イタリア、英国は、いずれも日本より消費課税の割合が高いからです。

もし「消費税が日本の衰退の原因」になったのであれば、「消費課税の割合が日本より高い他の先進国はもっと衰退している」ことをあわせて示してほしいところです。

「消費税だけ」が原因であれば、日本よりも消費課税の割合が高い国は、みんな衰退していないと違和感のある話といえます。

参考資料ですが、過去55年間のOECD諸国の税収のトレンドを見ると、一般消費税が個別消費税に代替するようになった一方で、それ以外の税収構造の比率はさほどの変化はないように見えます。(参考:OECD. Figure 1.5. Evolution of the tax mix as a percentage of total tax revenue 1965-2020

日本の消費税(一般消費税)は、個別消費税の問題点を解消する目的で導入された経緯がありますので、国際的に見てトレンドに反することではないように思われます。

もし消費税が「悪い税金」で「衰退」の原因と主張するならば、国際比較で見てどうなのか、という点で意見を聞いてみたいところです。

スポンサーリンク