低未利用土地の特例の実務はどうなっているのだろう?

まとめと疑問だけで終わる記事です。

所得税の譲渡所得の特例のひとつである「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」について考えます。

参考資料

「低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」についての概要は、国税庁タックスアンサー、東京国税局チェックシート、国土交通省のホームページが詳しいです。

No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除(国税庁)

低未利用土地等を譲渡した場合の100万円の特別控除の特例チェックシート・措法35条の3(東京国税局)

土地の譲渡に係る税制(国土交通省) →「2.特別控除」<低未利用地の適切な利用・管理を促進するための特例措置について>

なお、令和5年度改正において、譲渡後の利用要件としてコインパーキングは不可になりましたが、市街化区域等における譲渡価額の要件が800万円以下に拡大されています。(令和5年度税制改正大綱

1年あたり5000件近い適用の可能性

国土交通省の発表によると、令和6年中の低未利用土地についての確認書の交付件数は4,817件だったとのことです。(国土交通省発表、2026年3月31日)

その発表によると、「譲渡前の状態については、空き地が49.6%であり、譲渡後の利用については、住宅が72.1%」とされています。

確認書の交付は申告のために行われているはずですから、低未利用土地の特例を適用した譲渡所得の申告も、これに近い件数で行われているものと考えてよさそうです。

しかし、税務の情報誌などでも、この特例について言及されているのを見た記憶がありません。もう5年近くある制度ですが、控除額が100万円と控えめなためでしょうか。

仲介業者や買取側が主導する制度?

国土交通省の資料を見ると、この制度は「「動かない不動産」を動かすために~自治体と宅建業者等との連携によるマッチング~」「売却時の負担を軽減することで売却インセンティブを付与し、土地に新たな価値を見いだす者への譲渡を促進」という説明が見られます。

かいつまんで整理すると、特例によるインセンティブの付与で、売り手側の負担を軽減し、重い腰をあげてもらい、土地の流動化を図ろう、という趣旨かと思います。

譲渡後の土地活用を目的とした制度であるため、特例の要件も「買主が購入した土地・建物を利用する意向があること」とあり、「宅建業者が仲介を行う場合:宅建業者が買主に利用意向を確認し、宅建業者・買主が署名した様式を提出」する必要があります。特例の適用にあたっては、仲介業者や買主側の協力が想定されている制度といえそうです。

売主側がこの特例を活用して積極的に譲渡しようと思うよりも、むしろ、仲介業者や買主側が未利用の使えそうな土地を探して、持ち主に売ってもらうよう交渉を持ちかけるときに、その交渉材料として使われているという印象を持ちました。(あくまで想像です)

共有の場合の譲渡価額は別々で判定する

この制度を調べていて少し気になったのは、土地が共有になっているものを譲渡した場合、その特例の金額要件の判定については、その土地全体ではなく、持分ごとに判定します。

東京国税局のチェックシートでは、「譲渡(売却)した土地等が共有である場合は、所有者ごとの譲渡価額で判定します」と書かれています。

TAINSで閲覧できる大阪国税局作成の「資産課税関係 誤りやすい事例集(土地等譲渡所得関係 令和7年分用)」でも、「夫が土地1/2と建物所有、妻が土地1/2を所有、土地は全体で600万円、建物は200万円の譲渡価額」だった場合に、夫は「300万円(600万円x1/2)+200万円」、妻は「300万円(600万円x1/2)として判定するので、どちらも500万円以下として特例を適用できると書かれています。

別の特例である「空き家譲渡の特例」では全体で金額判定する要件がありますが、低未利用土地とは判定方法が異なっています。空き家譲渡の特例のイメージがあるためか、なんだかしっくりこない感じです。

例えば、2,000万円の空き地があるとします。これだと一見して低未利用土地の特例の対象外に思えますが、もしこれが4人の共有であれば、1人あたりの譲渡価額は500万円になるので、低未利用土地の特例に該当する可能性が出てきます。市街化区域内であれば、金額要件は800万円以下なので、該当する可能性はさらに高まります。

共有になっている土地の金額判定について、仲介業者や買主で特例の適用可否をきちんと気にしてくれていればいいのですが、どうなのでしょうか。

確認書が必要

空き家譲渡の特例もそうですが、この低未利用土地についても、確定申告の前に事前に役所に申請して、市区町村から確認書の発行を受ける必要があります。

確認書の交付には時間がかかりますので、ギリギリで対応しようとしても、間に合わない可能性もあります。

また、前述のとおり低未利用土地については、仲介業者や買主の協力が想定されているので、この点でもギリギリの対応は難しいと思われます。

実例は?

どんなケースで使われているのか気になっていましたが、国土交通省の発表資料を読んでいると、実際の事例が紹介されていました。

1.非線引用途地域、譲渡価格700万円 →「高速道路ICや駅からも比較的近い地域だが、空き地として何にも使用されていない状況が続いていた土地に、特産品の無人販売所が建設された」

2.市街化区域、譲渡価格795万円 →「空き地を、住宅型有料老人ホームとして活用」

このほか、先ほども紹介した大阪国税局作成の「資産課税関係 誤りやすい事例集(土地等譲渡所得関係 令和7年分用)」でコインパーキングの例が触れられています。

令和5年度改正で譲渡後の利用目的としてコインパーキングは不可とされましたが、譲渡前の利用がコインパーキング、譲渡後の利用が建物等を建てることでより高度な利用をする意向が確認できる場合(確認書による)は特例を適用できる、とあります。

コインパーキングという文字だけを見て、適用不可と決めつけないほうがよさそうです。

まとめ

ここまで情報をまとめましたが、実際のところ、ブログ筆者はこの制度を利用した申告の経験はありません。ただし、この制度の適用可否を気にする状況に出くわしたため、実務のイメージとしてどのような感じになっているのか、気になっていました。

申告としては市区町村の発行した確認書があればいいのでしょうが、その確認書の交付に至るまでの流れは微妙にイメージがわきづらいです。仲介業者や買主が主導する制度ということも、税務向けの情報があまり見られない一因かもしれません。

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