日税連保険サービスの過去の事故事例を読んでいて気づきましたが、マイホームの譲渡にあたり譲渡損失が出た場合の特例については、意外にミスがあるようです。
どのような点に気をつけるべきか、考えを整理しておきます。
日税連保険サービスの事故事例より
税理士にはおなじみ、読むだけで血圧が上昇する日税連保険サービスの事故事例集(リンク先の下の方にある)から、マイホームの譲渡で譲渡損失が出た場合の事故事例を見てみます。
2020年版で1事例、2022年版で2事例が掲載されています。内容をかいつまむと、
2020年版の事例(事前相談2)は、新居を先に取得し、旧宅の譲渡は取得年の2年後の年に行ったため、特例の要件を満たせなかった事例です。
2022年版の事例(主契約9)は、譲渡損失が発生していたが、買換資産の取得のために住宅ローンを借りていたことに気づかずに、特例の適用を見落とした事例です。
2022年版の事例(事前相談1)は、買換資産の取得にあたり住宅ローンを借りるべきかどうか、特例を満たすためのアドバイスを仕損じたために特例が適用できなかった事例です。
いずれも、措法41条の5(居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)に関するミス事例です。
何に気をつけるべきか
昨今はマイホームの譲渡では譲渡益が生じるケースが多いと思いますが、住宅価格の高騰がピークに達すれば、いずれは譲渡損になるケースも増えてくると思われます。
「マイホームを買い換えます」という話を聞いたときに、相談を受ける側としては何を気をつければいいのでしょうか。聞き取りが必要そうなことをあげてみます。
- 旧宅は今後どうするか。譲渡(相手は誰か)、賃貸、取壊しの方針は
- 新居は買い換えによる取得か。中古の場合はリフォームはあるか
- 譲渡益と譲渡損のどちらになりそうか
- 所有期間は10年超(長期軽課)、長期、短期のどれか
- 新居の取得が先になる場合、旧宅を譲渡するのはいつの予定か(税賠事例2020年事前相談2)
- 新居への引越しの時期
- 旧宅について住宅ローンを借りているか
- 新居の取得で住宅ローンを借りるか(税賠事例2022年主契約9、2022年事前相談1)
まずは譲渡益と譲渡損のどちらになるかを、概算を出して把握したほうがよさそうです。とくに譲渡損失が出るケースでミスが多いことを認識しておく必要があるでしょう。
また、特例の適用を見込んでいる場合は、早めにチェックシートを見ておくことも重要です。相談側の納税者と、相談を受けた時点でいっしょにチェックシートを見ておくことも、相互の認識共有のために有効と思われます。
個人的に気になった点ですが、東京国税局のチェックシート(措法41条の5)では、買換資産について、
9 買換資産は令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に取得していますか?又は取得の予定ですか?
と書いてあります。
このシートは令和7年版なので、令和7年に譲渡した資産を基準に、譲渡の前年~譲渡の翌年を範囲として買換資産の取得時期を確認しています。
もし買換資産の取得が先行する場合は、「新居取得→旧宅譲渡」という流れになります。チェックシートでは譲渡を基準に買換資産の取得時期を見ているので、買換資産の取得が先になる場合では少し意味が把握しづらい気もします。
法律の書き方もそうなっているので、チェックシートの書き方に注文があるわけではありませんが、チェックシートの活用にあたっては読み流しをせずに、譲渡と取得の時期を強く意識して読む必要がありそうです。
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