あまり知られていませんが、お手持ちのスマートフォンで、e-Tax(国税の電子申告)を操作することができます。
説明のポイント
- スマホのe-Tax(SP版)では、納税証明書の交付請求、源泉所得税の納税ができる
スマホでe-Tax? e-Taxソフト(SP版)とは
e-Taxの電子申告というと、パソコンで操作するイメージがほとんどです。スマホで操作できるといわれても、そういうイメージが乏しい印象でしょう。
この記事では、国税庁が提供している「e-Taxソフト(SP版)」について紹介します。どんなことができるのか、知っておきましょう。
SP版では、こんなことができる
「e-Taxソフト(SP版)」のSPは、スマートフォン(SmartPhone)の略称です。この記事では、SP版と呼ぶことにします。
このSP版は、平成26年(2014年)から提供されています。比較的最近のことです。
SP版では、どんなことができるのでしょうか? 以下にまとめました。
- 利用者情報の登録・確認・変更(法人の場合は「確認」だけ)
- 納付情報登録依頼(申告データを税務署に伝えて、ネットバンキングでの納税を要請する)
- 納税証明書の交付請求
- 徴収高計算書による納税(事業主がする源泉所得税の納付)
- メッセージボックスの確認
- 還付金処理状況の確認
これらを簡単にわかりやすくまとめると、具体的な税の申告は一切できません。
利便性の感じられる手続きとしては、源泉所得税の納付手続きぐらいでしょう。
対応OS・ログインするまでの手順
対応OSは、iOSとAndroidに両対応です。
利用を開始するまでには、次の対応が必要です。
- スマートフォンに、「ルート証明書」をインストールする
- 利用者識別番号(ID)を取得する
ルート証明書のインストールは、すぐに完了できます。トップページから、その手順を参照してください。
利用者識別番号(ID)を持っていない場合は、事前の登録が必要です。利用者識別番号は、スマホからでも取得できるようです(未確認)。
利用するメリットは?
SP版のメリットを挙げてみましょう。
1.簡単・安く、納税証明書を取得できる
e-Taxで納税証明書の交付請求を行う場合は、税務署の窓口で申請するよりも、次のメリットがあります。
- 手数料が微妙に安い
- 短時間で受け取れる
手数料については、窓口で請求すると「1税目1年度1枚あたりで400円」ですが、e-Tax経由だと、370円になります。
あまりe-Taxを利用しない人でも、SP版ならハードルは低いでしょう。将来的に利用者識別番号の取得が不要になれば、ハードルはもっと下がるはずです。
2.スマホで手軽に源泉税の納税
いまのところの最大の活用方法は、源泉所得税の納税でしょう。パソコンがなくても、申告から納税ができるのは魅力的です。
SP版で源泉税の内容を送信したあと、そのままネットバンキングに移行するか、クレジットカードの入力画面に移行して、そのまま納税できます。
実際にやるかどうかは別として、「できる」ということは重要です。
なんで税の申告がスマホからできないの?
よくありそうな質問ですが、「なんでスマホを使って税の申告ができないのか」ということが想定されます。
その理由ですが、SP版では電子署名(本人確認)の機能がないためと考えられます。
電子署名は、「なりすまし」を防ぐために必要なものです。ネット上の本人確認の役目を果たすのが、電子証明書を用いた電子署名です。
本人確認ができないので、税の申告のように影響の大きい処理は、現状では対応できないものと考えられます。
なお、e-Taxのひとつである「確定申告書等作成コーナー」では、個人の確定申告書をスマホで作成することはできますが、最終的には印刷・郵送で対応します。
将来的にどうなるか?
いまのところ、国税庁からは、SP版の機能拡張についての情報はありません。
先ほども述べたとおり、スマホでは電子署名ができないこともあり、申告などの複雑な手続きは現在のところできません。
将来的には、
- マイナンバーカードをスマートフォンで読み取り
- 電子証明書をスマホにダウンロード
などの方法で、スマホからも電子署名ができるようになると期待されます。そうすれば、SP版の機能拡張も今後期待できるのではないかと考えます。
少なくとも、所得税の確定申告書は、スマホでも申告・納税できることが理想的でしょう。
まとめ
スマホ版(SP版)のe-Taxで、何ができるのかを確認しました。
会社の実務としては、パソコンを利用することがほとんど考えられます。スマホの利便性が求められるのは、個人向けの分野でしょう。
今後は、電子証明書をスマホにダウンロードできるしくみも見込まれているようですので、確定申告書等作成コーナーや、SP版の機能アップが期待されます。
参考:スマホでマイナンバー活用 政府、「公的個人認証法」改正へ(SankeiBiz、2017年10月2日)