会計freeeは、なぜ「複式簿記ができない」と勘違いされるのか?

クラウド会計ソフト「会計freee」につきまとう、「複式簿記に対応していない」という誤解がうまれやすい原因を考えます。

説明のポイント

  • 「単式簿記風」の入力形式が、単式簿記に見えてしまう
  • 振替伝票の入力形式が表立って表示されていない
  • これらの複合的な要因で、誤解を招きやすい?
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「freeeは複式簿記に対応していない」の謎

会計freeeが「単式簿記の会計ソフト」「複式簿記に対応していない」という誤解は、たまに耳にする話です。

筆者も、以前に他の税理士とクラウド会計ソフトについて意見交換をしていたときに、「freeeの入力は単式簿記風だよね」という話を耳にしました。

ここでいう「単式簿記風」というのがポイントです。

freeeの独特な入力形式は、「単式簿記」というイメージを生みやすいように考えられます。

freeeの入力がなぜ「単式簿記風」であり、複式簿記ができないように見えてしまうのか? その理由はのちほど説明します。

単式簿記(簡易簿記)は、使用目的ごとに金額を集計した帳簿です。家計簿をイメージしてください。

freeeは以前から誤解を解くように説明している

freeeは、ちまたにあふれる誤解を解くために、「freeeは複式簿記に対応しています」と以前からいい続けています。

例えばfreeeのヘルプでは、「freee は複式簿記(仕訳)形式に対応してる? – はい、対応しています。 」という項目が見られます。

会計ソフトのヘルプにこうした項目があるのは、異例といえます。会計ソフトは複式簿記で帳簿をつけるためのものですから、複式簿記に対応しているのが当然です。

また、最近公開されるようになった「フィードバック一覧」においても、「複式簿記ができない」という問い合わせが、いまだに寄せ続けられている状況が明らかになっています。

これに対するfreeeの回答は、当然のことですが「freeeは複式簿記に対応しております」と述べています。

複式簿記に非対応の会計ソフトというものは、「家計簿」「お小遣い帳」などの簡易的なものを除いて、ほとんど考えられない話です。(「家計簿」や「お小遣い帳」を会計ソフトと呼ぶかは別として)

このような問い合わせが続いているのは、ある意味、異常といえるでしょう。

フィードバックの最初にこの回答が明記されていることから考えても、「freeeって、複式簿記に対応していないの?」という誤解は、いまだに解消されていない状況です。

クラウド会計ソフトの知名度が高まった2018年の現在でも、このような状態であることは、ある意味驚くべきことです。

誤解が生まれやすい理由とは

ここからは、なぜ会計freeeが「複式簿記に対応していない」と誤解されやすいのか。誤解を生みやすい原因を考えてみます。

1.口座を主軸にした入力方式

freeeの入力形式の特徴は、「口座」を主軸としていることです。

具体的にいえば、口座から読み込んだデータをもとに帳簿をつけていく方式をいいます。口座はすでに決まっているので、あとはその口座の動きのデータを分類すればいいわけです。

 

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【銀行のデータ】
みずほ銀行
5/12 出金 100,000 ヘンサイ
【帳簿】
5/12 [借入金] 100,000 [みずほ銀行] 100,000 借入返済

上記の仕訳を例にすると、[みずほ銀行]は固定化されています。みずほ銀行から取得したデータなのだから、入力時にもう一度[みずほ銀行]と入力する必要はないわけです。

これはある意味「単式簿記風」です。なぜなら、[みずほ銀行]と入力しないでよいので、なんだか複式簿記ではないように見えるからです。

従来型の会計ソフトは、帳簿を入力にあたって「複式簿記の書式」での入力を求めていました。このため、従来型の会計ソフトを使っていた人から見ると、freeeの入力は、すぐには理解しづらい方式です。

上記の例でいえば、[借入金]も[みずほ銀行]も、「振替伝票」のようにすべて手入力で打ち込むのが従来型の会計ソフトの方式です。

しかしfreeeは、銀行の口座からデータを取得するという、新しい技術を基盤に出発した会計ソフトです。

[みずほ銀行]という固定化された口座は、意識させる必要がないので省略されているわけですが、これがかえって仇となり、「単式簿記風」の入力だったことが誤解を招く一因になっていると推測されます。

2.以前は複式簿記の仕訳を表示していなかった

1で述べたとおり、freeeは口座にひもづく入力方式であることから、入力は「単式簿記風」です。

しかし、「口座」は相手方の勘定科目を構成しますので、できあがる仕訳データはきちんと複式簿記になっています。

「仕訳帳」のデータを見れば、その点は一目瞭然なのですが、使い始めの人にとっては理解しづらいことでしょう。

freeeの仕様改善により、現在では仕訳の入力画面において「複式簿記」の形式での仕訳プレビューが表示されるようになっています。

これは、「複式簿記に対応していない」という誤解が生まれやすいことへの対応といえるでしょう。

以前はこのような表示がなかったため、誤解を招きやすかった状況が推測されます。

3.「振替伝票」が別の分類になっている

freeeは、従来型の入力方式を推奨していないようです。従来型の方式は、「振替伝票」という項目に集約されています。

「口座」を経由しない仕訳は、この振替伝票で入力することができます。

freeeが振替伝票で入力してほしくない理由は、いくつか推測できます。

  • 事業の取引のほとんどは「口座」を経由するため、重要性が低い
  • 変な「振替伝票」を入力すると、帳簿が混乱するもとになるため、初心者に触らせないようにしている

freeeは「口座」で入力する会計ソフトであるため、伝票形式での入力は推奨されていません。

このことが、従来型の会計ソフトに慣れすぎた人にとっては、違和感を生む原因となっています。

従来型の会計ソフトでは当たり前の「振替伝票」の形式が、freeeでは見つけづらいことも、単式簿記の方式と誤解しやすい原因といえるでしょう。

4.freeeは初心者でも使いやすい→業界人には違和感

freeeは、複式簿記を知らない初心者でも、比較的扱いやすい会計ソフトです。

「簿記を知らなくても問題ない!」とはいいませんが、簿記を知らない人でも扱いやすいように工夫されていることは確かです。

初心者にもわかりやすく、複式簿記を意識させない入力方式が、会計業界のひとには従来型とは異なる方式であり「単式簿記」に見えてしまう……。

そのような事情がうかがえるわけです。

まとめ

会計freeeが、「複式簿記に対応していない」という誤解が生まれやすい原因を考察しました。

その理由とは、次のようなものです。

  • 「単式簿記風」の入力形式が、単式簿記に見えてしまう
  • 振替伝票の入力形式は表立って表示されていない

なお、ライバル会計ソフトの「MFクラウド会計」も、口座から取得したデータの入力は「単式簿記風」です。

しかし、詳細入力の画面では振替伝票に切り替わるため、「複式簿記に対応していない」というイメージを抱くことはありません。入力形式のひとつに振替伝票が採用されていることも、従来型の複式簿記と同じです。

こうして比較してみると、freeeが単式簿記と誤解されてしまうのは、複合的な要因のように考えられます。