e-TaxとeLTAX、規制改革推進会議にてID・パスワードの統合を求められる

e-TaxとeLTAXについて、ID・パスワードの統合を求める発言が規制改革推進会議で見られました。このまま知られないのも惜しい話なので、周知のために載せておきます。

説明のポイント

  • 現在は別々のID・パスワードであるe-Tax・eLTAXについて、法人認証基盤を活用した連携・統合を求める発言が、政府内の検討会で見られた
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e-TaxとeLTAXで、本人認証とID・パスワードの統合検討か

内閣府で行われている規制改革推進会議の「行政手続部会第15回」(平成31年4月11日開催)において、興味深いやりとりがありました。これは、先日公開された議事録でわかったことです。

議事録を見ると、国税庁と総務省に対して「ID・パスワード」の統合を検討するように、会議の部会長から求められています。

経緯を知っている人からすれば、「目からうろこ」というか、ギョッとすることでしょう。

法人認証基盤と税関係のID統合?

まずこの会議の前提についてですが、行政の効率化のため、国税と地方税とのあいだで書式・様式の統一化を進めている事情があります。

そして、現状でどんな検討課題があるのかについては、こちらの資料「基本計画(国税・地方税)及び書式・様式の統一(地方税関係)の論点」で確認できます。

そして、その論点のひとつが、

⑪ 事業者による電子申請の本人確認の手段として、法人認証基盤(ID・パスワード方式)の利用は検討しているか。

というものでした。

これについて会議の議事録を見ると、国税庁は「経済産業省と協議を進めている」と回答していました。(議事録10ページ)

これも重要な話ですが、ここまでは違和感はありません。

そして気になるのが、ここからです。

議事録20ページの最終行から21ページで、e-TaxとeLTAXのIDについて、髙橋滋 部会長(法政大学教授)から

統一化という流れでいうとe-TaxとeLTAXというのは本人確認とかパスワードは一緒なのですか。

という質問が出ています。

これに対して、国税・地方税の担当者ともにこの質問への回答には戸惑いが見られるようで、「比較したことがない」という消極的な回答になっています。

会議資料をみる限りでは、議題は「法人認証基盤とe-Taxの連携」となっていたところ、「e-Tax・eLTAX・法人認証基盤のID統合」にまで会議内で踏み込んだのは、とくに総務省担当者にとっては予想外だったようにも思われます。

髙橋滋部会長は、会議のまとめでも再度念押ししており、

本人認証の仕方とID・パスワードは将来的にe-TaxとeLTAXで一緒にしていただきたい。統合していただきたいと思います。

と述べています。(議事録24ページ)

補足

これだけだと、税の専門家にしかわからない話になるので、補足としての情報も載せておきます。

安倍政権が行政の効率化に取り組んでいることは、よく知られています。これは、グローバルランキングで、日本の国際的な評価がかんばしくないことも影響しているのでしょう。

税の分野についても同様です。税に関する電子申告をしようとすれば、国税はe-Taxというネットワークを使いますが、地方税はeLTAXというネットワークを使います。

同じ税であっても、電子申告のネットワークが別なので、それぞれ別のID・パスワードを作成する必要があるわけです。

国税は財務省・国税庁、地方税は総務省の管轄です。

これらの省庁からすれば、経済産業省が後から作った「法人認証基盤」の旗の下にまとまるように要求されているわけですから、「面白くない」気持ちがあるのも当然でしょう。

しかし利用者からすれば「国税と地方税、両方の作業を同時にやるのに、なんで別々のシステムで別々のIDが必要なんだよ」と思うのも当然です。

税務に関わる人にとっては、もはや固定観念化した「常識」であっても、端から見ればやはり「無駄」なことといえます。

本人認証についても、法人認証基盤を活用できれば、さらに望ましいことといえます。

法人認証基盤との活用・連携については、国税担当は「検討している」という回答をしていますが、総務省担当者の回答は議事録に出ていません。

個人的な感想を述べておくと、社会保険分野はID・パスワード方式へ移行予定ですが、企業内税務での認証方式の簡便化は、どうも取り残されている感もあります。(もともと、税理士が申請・申告を代行することが多いという事情もあるでしょうが)

まとめ

内閣府の規制改革推進会議 行政手続部会第15回(平成31年4月11日開催)において、e-TaxとeLTAXのID統合の検討要請があったことをお伝えしました。

経済産業省が主導する法人認証基盤は、2021年度に本格稼働が予定されています。

議事録を見た限り、法人認証基盤との統合・連携について国税はやる気を感じますが、総務省についての回答は、要求が予想外だったためか対応は不透明です。

既存のシステムと、新システムがどのように統合・連携するのか興味深いところです。

ちなみにこの規制改革推進会議における議事録の前半(1~7ページ)には、「AI-CON登記」をリリースしたGVA TECHの山本俊弁護士による説明も載っています。

税務とは分野違いですが、こちらの話も興味深いので、資料だけでも一読をお勧めします。

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