電子納税は3年で倍増 窓口納付からの移行は進むか

国税庁は納税のデジタル化を推進しており、キャッシュレス納付の割合を令和7年度(2025年度)までに40%程度に引き上げることを目標としています。

令和3年度の実績が発表されていましたので、現状を見てみます。

説明のポイント

  • 電子納税の割合は増えている。キャッシュレス納付の2025年度目標である40%も見えてきた。
  • 件数で見ると窓口納付の件数はあまり減っていない。全体での納付件数が増加していることも影響か。
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国税庁発表の納付実績

このブログでは電子納税に注目しており、国税庁が推進する「キャッシュレス納付」についても、その動向を興味深く見ています。

2022年8月、令和3年度(21年7月~22年6月)の実績である「令和3年度における e-Tax の利用状況等について」という資料が発表されました。

このなかでとくに注目したいのは、キャッシュレス納付の割合です。資料を転載します。

令和3年度のキャッシュレス納付割合は、32.2%でした。

前年比で+2.9%、3年前と比較すると+9.0%ですので、キャッシュレス納付の割合は高まっています。

令和7年度の目標である40%は、あと4年と考えると、手が届きそうなラインです。

ちなみに、キャッシュレス納付とは、「振替納税」「電子納税」「クレジットカード」の3つを合わせた、キャッシュレスの手段による納税をいいます。

振替納税は個人のみ対応ですので、法人は電子納税かクレジットカードを利用します。

振替納税は増えていない

興味深い点としては、個人のみが利用できる振替納税は増えておらず、むしろ微減という点です。

振替納税は、口座振替としてキャッシュレス納付の手段に含まれていますが、これから開業する個人事業主には、好評とはいえないようにも見えます。

一方で、コンビニのQRコード納付が伸びています。インターネットバンキングの利用を想定していない30万円以下の少額納付は、通常の納付書からこちらに流れている可能性もあります。ただし、源泉所得税の納付には非対応です。

あとは、ポイント目的もあり、新規層はクレジットカード納付に流れている…… という話もありそうですが、この点はよくわかりません。

窓口納付の件数もあまり減っていない

キャッシュレス納付の割合が増えているのであれば、窓口納付の件数は減っていてもよさそうですが、劇的な変動は見られません。

令和2年度(20年7月~21年6月)において、窓口納付の件数は減少していますが、これはコロナの影響でしょう。令和2年度と3年度の比較では、窓口納付の件数に変化は見られません。

気になるのは、全体の納付件数が令和3年度で大きく増加していることです。この理由はよくわかりませんが、令和2年度と3年度の比較で大幅な増加になっています。

窓口納付の件数が減っていないのは、全体の納付件数が増えている影響もありそうです。割合としては、前年比で、66.4%→62.7%と減っています。

電子納税は3年間で倍増だが……

先ほども述べたとおり、電子納税の件数は3年間で倍増(402万件→865万件)になっています。

インターネットバンキングとダイレクト納付の内訳が、2:1程度だった比率は、令和3年度でも変化は見られません。

国税庁はダイレクト納付を推奨していますが、利用件数の増加はゆっくりという印象です。

当ブログには、インターネットバンキングで電子納税する方法を解説したページがありますが、アクセスログを見ると閲覧数も多く、電子納税に関心を示している層も多いと推察されます。

アクセスログの推移を見ると、2020年以後に閲覧数が大幅に増加しはじめたことから、コロナがきっかけとなって接触機会の減少と効率化がうながされたように見えます。

全体でみると……?(まとめ)

電子納税、窓口納付、全体の3年間の推移ですが、

  • 電子納税 463万件 増
  • 窓口 253万件 減
  • 全体 281万件 増

という感じで、全体で増えた分(+281万)と、窓口で減った分(▲253万)は、電子納税(+463万)に流れています。

前年比で納付件数が大幅に増えた理由はわかりませんが、電子納税の利用割合としてはゆるやかに増えつつあります。

ただし、旧来の経理サイクルが定着している場合では、電子納税にあまり関心を示していないようにも見えます。

窓口納付の件数における6割は、源泉所得税の納付とされています(「東京税理士界」780号、P16)。

この点を考えると、経理サイクルを改善する目的としてはダイレクト納付の利用がもっと高まってもよさそうですが、内訳を見てみると、大幅な増加とはいえない程度に留まっています。

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