税理士の宣伝と「秘密を守る義務」との悩ましい境界

いつも税務のことを書いているこのブログですが、たまには趣向を変えて、「税理士という業務」の話をしてみます。このブログを4年書いて気になったことのひとつに、税理士による宣伝と「秘密を守る義務」には、ジレンマもあるように感じているからです。

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税理士業務と営業活動

税理士は「先生」などと呼ばれる職業のひとつですが、ふんぞり返っていてもご飯は食べられません。お客様から報酬をいただくことができなければ、当然ですが事務所は維持できません。

税理士業も競争が激しくなっているという話ですが、顧客からの選別眼が厳しくなっているのは事実です。

「税理士なら誰でも同じ」という時代は過去のものであり、税理士としても、生き抜くための営業活動が必要です。専門家でありながら、同時に、営業活動を兼ねる必要があるわけです。

そんな営業活動のひとつには、インターネットによる情報発信があります。このブログも例外ではありません。

営業活動ですから、「私の事務所はこれが有名です。これだけの人気があります」ということをアピールすることも、時には必要かもしれません。

しかし、このようなアピールも、税理士の「秘密を守る義務」との関係で見ると、どれぐらいのレベルが許容されているのかは明文化されておらず、各税理士の常識による点も多々あると感じます。

税理士法の「秘密を守る義務」とは?

当たり前の話ですが、顧客は税理士が秘密を守ることを前提として、重要な話を打ち明けています。

税金や帳簿という重要な情報を扱う職業ですから、秘密を守ることが強制されるのは、当然のことです。

税理士法では、「税理士は、正当な理由がなくて、税理士業務に関して知り得た秘密を他に洩らし、又は窃用してはならない」と定められています。

ここでいう「秘密」とは何なのか? という点が気になるところです。

そこで税理士法の通達を見てみると、「税理士業務を行うに当たって、依頼人の陳述又は自己の判断によって知り得た事実で、一般に知られていない事項及び当該事実の関係者が他言を禁じた事項をいうものとする」とされています。

難しい情報発信

「依頼人の陳述で知り得た事実で、一般に知られていない事項」とは、どこまでの範囲が含まれるのかは微妙なところです。

 

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例えば、次のような発信をした場合、税理士として秘密を守っていることになるのでしょうか?

本日は新規にご相談で来られたお客様がいらっしゃいました。フリーランスのエンジニアの方で、法人の設立を検討されています。当事務所はフリーランスの顧客が多数いますので、税務はおまかせください。

そのお客様の具体的な名前は明らかにしていないものの、個人の相談内容と、フリーランスという顧客情報の一部を開示しています。

こうした情報は「秘密」にあたるのでしょうか。それとも、匿名であれば問題はないのでしょうか。

その個人が「フリーランスのエンジニア」であるという情報は、お客様の陳述がなければ知り得なかった事実であることは間違いありません。しかし、「一般に知られていない事項」とまで言い切れるのかは微妙です。

法人を設立したいという相談内容まで開示したことについては、「一般に知られていない事項」にあたりそうで、かなり危ない印象です。

顧客の了解を得たほうが無難だが……

「依頼人の陳述又は自己の判断によって知り得た事実」という点をかなり厳しく見ると、基本的に顧客との接触で得た情報は、そのすべてが「秘密」にあたる可能性もあります。

これを自己の宣伝のために開示していいのか、というのはかなり微妙です。

そうなると安全策としては、自己の宣伝のために、次のような了解を得ることも必要かもしれません。

事務所のブログやSNSで、お客様が来られたことを宣伝してもよいですか? ただし、お客様の名前は匿名にしますし、相談内容も開示しません。

……こう書いていてみると、けっこう微妙です。

個人情報に敏感な時代ですから、このような説明をしたときに、どれだけのお客様が同意してくださるかはわかりません。むしろ説明するほどに悪印象な気がしてきます(汗)

(私の考え)ブログ、SNSでの情報発信は慎重に

話を戻します。

ブログやSNSによる情報発信は、手広い人に見てもらえる可能性のある媒体ですが、誰が見ているのかわからないという危険性を備えています。

筆者の考えとしては、「宣伝は事務所の営業のために重要だが、顧客に関する情報は公開しないことが前提となる」という方針が無難だと考えています。

SNSやブログも含めて、その情報の取扱いには慎重を期すべきです。その記述が、あとでどのように業務に影響するかもわかりません。

また、どうしても顧客に関する情報をからめて宣伝したい場合は、その顧客の了承が前提であると考えます。

帳簿という最高機密を扱う税理士には、極めて厳しい情報管理の責任が課せられています。「金庫番」としての信頼を得るためには、「口の堅いこと」は当然であり、義務です。

その一方で、営業活動で考えると、ブログやSNSを使うとなれば、厳しい制限のもとで宣伝することとなり、ジレンマが生じます。こうした考え方は、税理士によって判断がわかれるといえそうです。