免税事業者向け経過措置の改正 電子請求書の取扱いのバグとり

インボイス制度後に免税事業者から受け取った請求書の経過措置について、令和4年度改正にて改正がありました。それは、請求書が電子請求書だった場合の取扱いです。

こんな問題があったのだな……ということで、改正の内容を確認します。

説明のポイント

  • インボイス制度後に、免税事業者から電子請求書を受け取った場合の経過措置
  • 免税事業者が発行する電子請求書は、経過措置では対象外とされる問題があったが、令和4年度改正でふさがれた
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令和4年度改正の内容

この記事で採りあげる改正の内容について、大綱から抜粋します。

(3)区分記載請求書の記載事項に係る電磁的記録の提供を受けた場合について、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れに係る税額控除に関する経過措置の適用を受けることができることとする。

これだけ読むと、なんだかイマイチわかりづらいです。

要は、「インボイス制度後の経過措置で、免税事業者が発行した電子請求書(※電子インボイスと書くと誤解がありそうなので「電子請求書」としておきます)でも、経過措置の適用OK」ということです。

これを読んで筆者が思ったのは、「え? もともと、ふつうに経過措置に対応していると思っていたわ……」ということでした。

どこが改正で変わったのか?

最近のブログ(2022年4月8日)でもお伝えしたことがありますが、インボイスではない請求書等に関する仕入税額控除の経過措置は、改正法附則(平成28年3月31日法律第15号)第52条(※リンク先からかなり下にスクロールすると52条があります)に書かれています。

この改正法附則を読むと、旧法該当の区分記載請求書(=インボイスではない請求書)も新法該当の請求書等とみなして一定割合の仕入税額控除が可能、という扱いになっています。

そして、今回の令和4年度改正の新旧対照表を見ると、改正前は旧法の「同条第九項に規定する請求書等を新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなし」だった部分が、

同条第九項に規定する請求書等又は当該請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律(平成十年法律第二十五号)第二条第三号に規定する電磁的記録をいう。次項並びに次条第一項及び第二項において同じ。)を新消費税法第三十条第九項に規定する請求書等とみなし

に改正されており、「又は当該請求書等に記載すべき事項に係る電磁的記録」が追加されていることがわかります。

旧法(といっても、この記事執筆時点では現行法ですが)の第30条第9項における「請求書等」はもともと電磁的記録を含んでいなかったので、この改正で手当したらしいことがわかります。

現行の第30条第9項を見ると……

この記事執筆時点の、現行の消費税法第30条第9項を読んでみます。ここには、

9 第七項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類をいう。

と書かれています。そして、第7項を読むと「請求書等」については、

7 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(同項に規定する課税仕入れに係る支払対価の額の合計額が少額である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。

となっています。

太字で示した部分のとおり、政令で定める場合に該当するときは帳簿の保存だけでよく、請求書等が含まれていません。

そして、現行の電子請求書の取扱いは、第30条第7項の「政令で定める場合」として、施行令第49条第1項2号では「同条第七項に規定する請求書等の交付を受けなかつたことにつきやむを得ない理由があるとき」に該当しています。(参考:国税庁質疑応答事例「インターネットを通じて取引を行った場合の仕入税額控除の適用について」

つまり、現行における電子請求書は、「同条第七項に規定する請求書等の交付を受けなかつた」という扱いです。

経過措置は旧法を参照しつつ、新法該当のインボイスは除くとしています。つまり、免税事業者が発行する電子請求書は、新法の電子インボイスには当然に該当しません。

そして前述のとおり、電子請求書は「(旧法)同条第九項に規定する請求書等」にも含まれていないわけですので、このままだと経過措置の適用対象外となってしまう……ということだったのでしょう。

まとめ

令和4年度税制改正から、経過措置と電子請求書についての改正を採りあげました。

この改正、大綱には「経過措置の適用を受けることができることとする」とありますが、本当のところは「免税事業者の電子請求書も経過措置に含まれているつもりだったけど、なんかバグがあったんで直しておいたわ」ということなのでしょう。

それにしてもこの問題点に気づいた人は、条文の読み込みがすごいです。改正法附則に書いてある経過措置をよく読んだ上で、現行の電子請求書(電子インボイス)における取扱いと施行令49条を熟読しないと、まず気づかないでしょう。

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