請求書に「消費税」と書いてあるかは、消費税の納税義務とは関係ない

当ブログのアクセスログを見ていると、免税事業者の対応について関心が寄せられていることがわかります。

このため、これまで消費税の免税事業者だった人向けに、知識をプラスする記事を追加していきます。今回は、消費税の納税義務について書いてみます。

「消費税」を請求していなければ、消費税の納税義務はないのでは……と思われるかもしれませんが、どのように請求しようと同じだよ、という話です。

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想定

私はこれまでは消費税の免税事業者でした。インボイス制度が始まったあとも、引き続き免税事業者を続けるつもりです。

世間では、免税事業者に対して「いままで消費税をもらっていたのに、納税していなかったのだからずるい、益税だ」と批判されているのを見かけますが、私は請求書に「消費税」と書いたことは一度もありません。

私は「消費税」をもらっていないのですから、今後も消費税の納税義務はないですよね?

検討

結論からいうと、事業者がどのように請求したかは関係なく、取引において消費税の課税対象であれば、納税義務があります。

誤解が生じるかもしれないのは、請求書に「消費税」と書いていなければ、消費税はもらっていないので、納税の必要もないのでは? という点です。

もし「消費税」と書かなければ納税しなくていいのであれば、みんな請求書に「消費税」と書かないでしょうし、誰も納税しないことになってしまいます。

つまり、請求書に「消費税」と書いてあるかは関係ありません。課税対象となる取引額(免税事業者は取引の総額が課税売上高となる)をもとに計算します。

納税義務の判定では、基準期間(2年前の期間)の課税売上高が1,000万円以下の場合は免税になり、1,000万円を超えた場合は課税事業者に該当します。

これまで消費税を納税しなくてよかったのは、課税取引はあるけども、課税売上高が少なくて免税だったから、ということでしょう。請求書に「消費税」と書いたかどうかは一切関係ありません。

「消費税」と書いたことで違いはあるのか

先ほどの事例では、「消費税」をもらっていなかった、というケースで考えました。しかし、実際には免税事業者であっても「消費税」を収受している場合もあるでしょう。

免税事業者は消費税の納税義務がないので、「消費税相当額」を収受することは予定されていない、と国税庁は説明しています。

もし「消費税相当額」をもらわないとしても、仕入や経費には消費税がかかっていますので、その仕入や経費の消費税分を売上請求額に価格転嫁しないと、競争上不利になります。

取引においてどのように請求するかは、あくまで商習慣や取引のなかでの合意で決まるものです。

もし「消費税」と書けば、その「消費税」という名目の請求も含めた全体の金額が取引総額です(例:請求額110で、その内訳は本体価格100+税10)

一方、「消費税」と書かない場合は、書かなかった請求額が取引総額です(例:請求額110)。

インボイス制度以前では「税抜+税」と分けて記載するのは、法的に強制されたルールではなく、商習慣や、課税事業者における税額計算上の配慮のためだったものといえます。規定上は「税込金額」の記載だけが求められていました。
インボイス制度後では、免税事業者の請求で何の補足説明もなく「消費税」と記載するとインボイスの登録事業者と誤解される恐れがあるため、記載のしかたには配慮が必要です。

まとめ

請求書に「消費税」と書いたかは、消費税の納税義務には関係ないという話でした。

「消費税」という請求がなかったとしても、取引総額が1,000万円を超えれば課税事業者になります。これはインボイス制度に関係なく同じことです。

誤解する人もいるかもと思ったので、税の知識のスキマを埋める意味で記事を書いてみました。

この記事は免税事業者に向けた記事です。インボイス制度に登録した事業者は、発行するインボイスには「消費税額」(簡易インボイスの場合は税額または税率のいずれか)を記載する必要があります。

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