電子取引の平成17年度改正を再整理する

電子取引についてはよく知られているように、令和3年度改正が波紋を呼びました。この令和3年度改正以前に行われた大型の改正は、平成17年度改正が最後だったようです。

ブログ筆者も含む、新参の税務関係者にはあまり知られていない平成17年度改正について、再整理します。

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真実性の要件は平成17年度改正で追加された

電子帳簿保存法が平成10年度改正で創設され、このときに電子取引のデータ保存の要件も創設されました。

しかし、この当時の要件を読むと「真実性の確保の要件」は存在していませんでした。この点は以前のブログでも触れました。

電子帳簿保存法の電子取引における「真実性の確保の要件」のうち、「正当な理由がない訂正及び削除の防止に...

その後、平成17年度改正で真実性の確保の要件が追加されました。これにあわせて、青色申告の承認取消しの規定も追加されています。

なぜ真実性の確保の要件が追加されたのかについては、当時の財務省担当官の税制改正の解説を読むと、「情報通信技術の進展やペーパーレス取引が進む中、適正公平な課税を確保するための環境整備」とされています。

該当の部分も引用しておきます。

電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存については、システム概要書や可視性の確保、日付に関する検索機能の確保を保存要件としていましたが、情報通信技術の進展やペーパーレス取引が進む中、適正公平な課税を確保するための環境整備として、電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存要件が整備されました。

この改正の経緯をもっとよく知りたかったのですが、ブログ筆者が探した限りでは、これ以上の情報は見つかりませんでした。

平成17年度改正ではスキャナ保存制度が創設されたことで、その影響を受けた可能性もあるかもしれませんが、あくまで推測です。スキャナ保存の創設時の「真実性の確保の要件」は、タイムスタンプの他に電子署名も必要で、電子取引よりも厳しいです。

検索要件も平成17年度改正で強化された

検索要件についても、創設当時の施行規則を読むと、緩やかだったことがわかります。

創設当時の検索要件については、取引年月日の範囲検索は必要ですが、金額の範囲検索は求められていませんでした。また、組み合わせ検索の要件もありませんでした。

これが、次のとおりの要件に改正されました。

⑷ 検索機能の確保
次の要件を満たす検索機能を確保しておくこと。
① 取引年月日、その他の日付け、取引金額その他の国税関係書類の種類に応じた主要な記録項目(記録項目)を検索の条件として設定することができること。
② 日付け又は金額に係る記録項目については、その範囲を指定して条件を設定することができること。
③ 2以上の任意の記録項目を組み合わせて条件を設定することができること。

引用:財務省『平成17年度税制改正の解説』P.405

通達改正で電子取引の範囲が具体的に示された

税制改正の影響を受けてのことと思われますが、電子取引に関する通達改正も行われています。

電子帳簿保存法取扱通達2-3(電子取引の範囲)が追加されたのは、平成17年2月28日付けです。(参考平成17年2月28日付課総4-5ほか8課共同「『電子帳簿保存法取扱通達の制定について』の一部改正について」(法令解釈通達)等の趣旨説明について

この通達改正により、電子取引の範囲がより具体的に示されています。

(1) いわゆるEDI取引
(2) インターネット等による取引
(3) 電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む。)
(4) インターネット上にサイトを設け、当該サイトを通じて取引情報を授受する取引

趣旨説明では、

・・・インターネット等の急速な進展により、いわゆるEDI(Electronic Data Interchange)取引以外にも、様々な取引形態が発生してきており、納税者が行っている取引が電子取引に該当するか否かの判断に迷うケースもあると考えられる。したがって、取引情報の授受が電磁的方式によって行われる取引はすべて該当するのであるが、その内容をある程度明示する必要があることから、一般に行われている電子取引について念のため例示したものである。

という背景が示されています。

ちなみに改正前の通達では、

2-3 法第2条第6号((電子取引の意義))に規定する「電子取引」には、いわゆるEDI取引のほか、インターネット等による取引も、これに含まれることに留意する。

とだけ書かれていました。

この趣旨説明では、電子取引がEDI取引と同義語であると誤解するのを避けるために、「インターネットやパソコン通信により取引情報を授受する取引も、これに含まれることを明らかにしたもの」と説明されています。

まとめ

ここまで整理したところによると、電子取引のデータ保存については、平成10年度創設時のものが平成17年度改正で、要件が厳しくなっていることがわかります。

また、平成17年度改正の内容を見ると、令和3年改正までにおいて、その大枠はほとんど変わっていないこともわかります。

このような整理をした理由は、波紋を呼んだ令和3年改正を再考するうえで、その前の大型改正を理解しておく必要があると考えたためです。

次回は、令和3年改正とは何だったのかを改めて考えてみたいと思います。

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