GビズIDがe-Taxで利用できれば便利になるか。令和8年度予定

令和6年度税制改正における納税環境整備のひとつに、「GビズIDとの連携によるe-Taxの利便性の向上」があります。

法人がe-Taxを利用するにあたり、利便性の向上につながるのかを考えてみます。

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令和6年度改正で示されたGビズID連携

行政ごとにそれぞれシステムを作った結果、行政システムのIDやパスワードがそれぞれ異なる問題が生じており、不便になっていました。これを横断的に整理していく動きとして、マイナポータルやGビズIDと連携する政府方針があります。

令和6年度税制改正では、国税のe-TaxとGビズIDとの連携が掲げられました。税制改正大綱を引用します。

所要の法令改正等を前提に、法人が、GビズID(法人共通認証基盤)(一定の認証レベルを有するものに限る。)を入力して、電子情報処理組織を使用する方法(e-Tax)により申請等又は国税の納付を行う場合には、その申請等を行う際の識別符号及び暗証符号の入力、電子署名並びにその電子署名に係る電子証明書の送信又はその国税の納付を行う際の識別符号及び暗証符号の入力を要しないこととする。

この図解が財務省のパンフレット「令和6年度税制改正」にありますので、こちらも引用します。

改正のポイントとしては、(1)e-Taxの利用者識別番号と暗証番号によらずとも、GビズIDでログインが可能になること、(2)GビズIDでログインした場合は、送信にあたっての電子署名・電子証明書の送信は不要とする の2点です。

とくに改善と感じられるのは、(2)の電子署名が不要になることでしょう。

コストは少なく便利に使える?

これまで法人がe-Taxで電子申告をするにあたっては、一般的には商業登記電子証明書を用いるか、法人代表者のマイナンバーカード(公的個人認証サービス)を用いていたものと思われます。

商業登記電子証明書は有料であり、維持コストがかかることから、小規模企業では取得するメリットはあまり感じられません。

このため、小規模企業でe-Taxを行う場合は、法人代表者のマイナンバーカードを用いるか、代理可能な手続きであれば税理士に依頼していたことが多かったと推測されます。

では、e-TaxでGビズIDを利用できるようになれば、利便性は高まるのでしょうか。

社会保険の申請では、2020年4月からGビズIDを利用した電子申請に対応しています(厚生労働省パンフ)。これと同じような感覚で、e-Taxでも利用が進んでいく可能性がありますが、社会保険申請においてどれほどの効果があったのかを示す資料は見つけられませんでした。

権限の委任はどうなるか?

GビズIDを利用するにあたっては、GビズIDアプリでの認証が必要(※執筆時点ではSMS認証も可能)で、この場合は利用者のスマートフォンが必要になります。

e-Taxの利用でも代表者のスマートフォンが必要になると、結局はマイナンバーカードであれ、スマートフォンであれ、代表者が手続きを行う必要が生じます。

手間が大幅に削減されるかというと疑問ですが、マイナンバーカードよりも心理的にハードルは低いように思われます。

この点で、社内におけるメンバーへの委任設定(と権限設定)により利用できるかは気になるところです。

現在のところe-Taxでは、代表者以外の法人役員・職員が電子署名する場合には、代表者の電子委任状が必要とされています(参考)。

この扱いが、GビズIDの認証と委任の関係ではどうなるのでしょうか。本来は代表者が電子署名するものが、委任された認証によって代替できるのかは不明です。

社会保険や労働保険では、代理人を選任する届出が事前に必要とされているようなので、e-Taxでも似たような取扱いが図られる可能性はあるかもしれません(社会保険は「健康保険・厚生年金保険事業所関係変更(訂正)届」、労働保険は「労働保険代理人選任・解任届」)。

署名ではなく認証

筆者もあまり深く認識していなかったのですが、GビズIDは「認証」の話であって、マイナンバーカードや商業登記電子証明書は「署名」の話です。

これまでe-Taxでは、認証についてはさほど厳格ではなく、「ID・パスワード方式」における個人の電子申告では例外的に事前の認証方式を採っていることがありますが、原則としてはマイナンバーカードなどでの「署名」がほとんどでした。

e-Taxにおける法人の利用者識別番号の取得では、事前の認証はないので、電子署名と電子証明書の送信によって本人である証明を行っています。

GビズIDプライムの場合、そのアカウントは事前に認証されているので、e-Taxの利用でも電子署名・電子証明書の送信は不要とされます。この点で、e-Taxとしては、新しい方法といえるでしょう。

この新しい方式がいつから実施されるのか、とくに記載はなかったのですが、「税務通信」3802号( 2024年5月20日)によると「国税当局の基幹業務システムが刷新された後の令和8年度以降を予定する」と報じられています。

まとめ

GビズIDとe-Taxの連携について考える記事でした。

社会保険や労働保険の申請ではGビズIDが活用されていますが、e-Taxでも同じように活用できることで、利便性の向上が期待されます。

地方税のeLTAXについてはとくに話は聞きませんが、いずれは連携していくことになるのでしょう。

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