2025年3月24日に、税務会計情報サイト「TabisLand」がサービス提供を終了します。終了前にもう一度読んでおきたい記事をとりあげます。
税ニュース 2020.12.18
取り上げるのは、税ニュースのうち、エヌピー通信社が配信した記事(2020年12月18日)です。まもなく削除されてしまうので、重要部分を抜粋して引用します。
税ニュース 2020.12.18
2021年度税制改正 電子帳簿保存法の要件緩和へ
2021年度与党税制改正大綱が12月10日にまとまった。土地にかかる固定資産税の据え置きなど、新型コロナウイルス感染拡大による担税力の落ち込みを考慮し、納税者の負担が増えないよう配慮するメニューが並んだ。
今年は固定資産税、エコカー減税、住宅ローン減税の特例が更新時期にあたり主要課題となったが、議論はスムーズに進んだ。(中略)
一方、今年の税制改正で最後まで揉めたのが電子帳簿保存法の要件緩和だった。
デジタル化の推進を受け、財務省は訂正履歴が残らない会計ソフトによる帳簿(一般電子帳簿)についても一定の要件を満たせば紙による保存が不要とする見直し案をまとめたが、税理士や会計士に近い与党議員が「改ざんの恐れがある一般電子帳簿の普及を認めるべきではない」と反発。自民党の甘利明税調会長は「電子帳簿導入の敷居を下げて電子化を広げていくことが最優先」と譲らず、反対派議員に激怒する場面もあった。
結局、財務省案を維持した上で、大綱に「優良な電子帳簿の普及を促進するための更なる措置」について「早期に検討し、結論を得る」と明記することで決着した。提供元:エヌピー通信社
この記事からわかること
数年前のことなので、もう関心も薄れているかもしれませんが、令和3年度改正では、帳簿の電子保存について「一般」「優良」の制度が創設されました。
これ以前は、会計ソフトで作成した帳簿を電子データで保存するためには、事前の承認が必要だったものの、令和3年度改正で、事前承認不要で電子データでの保存が可能になりました。(参考:当時の改正のパンフレット)
(1)「一般」制度に反対するグループがいた?
この配信記事によれば、帳簿の電子保存のうち「一般」にまで範囲を広げることに反対するため、ロビー活動で影響力を発揮していた税理士グループがいたようすがうかがえます。
ブログ筆者が知る限り、この点に言及したのはエヌピー通信社の配信記事だけです。
帳簿にこだわりを持ち、ロビー活動できるほどの有力な税理士グループがいるとすれば、それが誰なのかはなんとなく想像はできるでしょう。
(2)甘利明氏の判断で「一般」帳簿まで広げる方針が維持された
甘利明氏といえば、TPPでのタフな交渉活動が実績として有名かと思います。
その甘利氏が税調会長のときに、(1)の反対意見に対して、帳簿の電子保存を推し進めるために激怒までして押し切った、という点は興味深いです。
なお、甘利氏は前回の選挙で落選し、次回選挙への立候補をしない旨を表明されています(NHK、2024年12月)。
まとめ
TabisLandの記事のうち、再読しておきたい記事として「2020年12月」のエヌピー通信社の配信記事をとりあげました。あと2ヶ月程度で読めなくなってしまうので、当ブログに引用しておくものです。
エヌピー通信社の配信記事が読めたのも、TabisLandの魅力のひとつだったのですが、こうしたニュースサイトがなくなるのは残念です。
ここでご紹介したとおり、電子帳簿保存法のうち「一般」帳簿の電子保存に関する創設の経緯については、興味深いものがあります。
この経緯を改めて読んで思うことですが、「一般」にまで帳簿の電子保存制度が広まったことで、「帳簿の改ざん」は以前と比べて横行するようになったのでしょうか?
「改ざんの恐れがある一般電子帳簿」などと主張していたわけですから、当時反対していた方々に、数年間で状況はどう変わったのかを聞いてみたいです。