電子インボイスが書面保存で仕入税額控除を適用できるのはなぜか?

電子取引に係る電子データは、電子データのまま保存が必要です。これは2022年からの話です。しかし、消費税のインボイス制度の電子インボイスでは、電子データを書面に出力しての仕入税額控除の適用が認められています。

その理由はなぜなのか。ブログにメモを残しておきます。

説明のポイント

  • 当初、電子インボイスの交付は相手方の承諾が必要とされていた(平成28年度改正で創設)
  • 受領者は電子インボイスを出力して書面保存で仕入税額控除を適用できることとし、電子インボイスの交付者も交付先(受領者)からあらかじめ承諾を得ることは不要になった(平成30年度改正)
  • 改正の理由は、事前承諾を拒否された場合、交付者がシステム対応上困る恐れがあるためか
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電子インボイスは書面保存OKだが……

電子帳簿保存法における電子取引の保存では、電子データのまま保存が必要なのに、電子インボイスの仕入税額控除については書面に出力しての適用が可能です。

法人税と消費税で対応が一致していないように見えるのは、いったいなぜなのか……。疑問を覚えるところでしょう。

この点、国税庁の電子帳簿保存法一問一答を読むと、「その保存の有無が税額計算に影響を及ぼすことなどを勘案して」という程度で、シンプルに説明されているのみです。

この件について、Youtubeチャンネル「「月刊 税理」WEBセミナー」の「【電子インボイス~その検討の方向性と実務ポイント】」において、税理士の安部和彦先生が理由を解説されていました。

疑問が氷解したので、メモとして残しておくしだいです。

書面保存可能になったのは平成30年度改正

当初のインボイス制度の法令は平成28年度改正で創設され、その2年後である平成30年度改正において、電子インボイスの書面保存により仕入税額控除を適用できる改正が行われました。

平成30年度改正における財務省担当官の解説を引用します。

適格請求書等の記載事項に係る電磁的記録を受領した場合の仕入税額控除のための当該電磁的記録の保存方法として、当該電磁的記録を書面により出力したものを保存する方法も認められることとされたため、必ずしも電磁的記録で保存する必要がなくなったこと等を踏まえ、適格請求書等の記載事項に係る電磁的記録を提供する場合にあらかじめ課税資産の譲渡等を受ける他の事業者の承諾を得ることとする要件は削除されました。

これを読むと、電子インボイスの受領者が仕入税額控除を受ける場合に、書面出力による保存が可能になった、と書かれています。

また、交付者があらかじめ相手方の承諾を得る要件が削除された、という点もポイントとして書かれています。

この点、平成30年度改正の新旧対照表を見ると、改正前の条文(法57条の4⑤)にあった

あらかじめ、課税資産の譲渡等を受ける他の事業者又は売上に係る対価の返還等を受ける他の事業者の承諾を得て

という、事前承諾の部分が削除されています。

そして、施行規則15条の5が新設されたことで書面保存による仕入税額控除が可能とされたほか、施行令50条も改正され、電磁的記録の保存ルールが定められています。

拒否されたら交付側が困ってしまう

この改正の理由について安部先生は、受領者側が電子インボイスを拒否した場合に、交付者側としてはシステムの対応上難しいことになるからではないか、と述べられています。

受領者側は紙ベースが望ましいと考えているところ、それでも仕方なく電子インボイスとして受け取った場合でも、これを書面印刷をすれば、消費税の仕入税額控除としては要件を満たせます。

しかし、もし事前承諾が必要だった場合、少しでも拒否しそうな取引先が予想されると、電子インボイスのシステム対応が難しくなる恐れもあります。

こうした点を解決するための措置ではないか、と考えられるわけです。

知られていないのは、大綱になかったから?

思い返してみると、インボイス制度の話が出た当初、電子インボイスの交付には事前承諾が必要……という話も耳にした記憶がうっすらとあるものの、いつの間にかその話は立ち消えになっていたような気もします。

この点、気になったので筆者も調べてみました。

まず、平成30年度税制改正大綱では、この改正についてはとくに触れられていなかったようです。(同時に改正された、適格簡易請求書の電子インボイス容認の記載はある)

税制改正については大綱ベースで理解することが多いでしょうから、フォローが欠けやすくなる傾向があるでしょう。

また、未施行の法律を改正したためか、新旧対照表も別(消費税法ではない、第22条関係というところに新旧対照表がある)になっています。間近に迫った改正ではないので、関心が薄く、把握もしづらいように思われます。

これに加えて、電子インボイスの書面印刷による仕入税額控除の容認についても、施行規則として新規で追加されており、時期としてもかなり先の施行です。

国税庁のインボイス制度Q&Aについても、電子インボイスの交付と事前承諾に関しては、Q&Aが一番最初に出た時点でもとくに触れられていなかったようです。触れられていなければ当然に改訂もありませんので、この点も気づきにくい一因に思われます。

加えて、現行の消費税法でわかるように、そもそも電子インボイスになじみがすくないこともあるでしょう。

まとめ

なぜ消費税の電子インボイスは、書面保存での仕入税額控除が可能とされているのか。その理由は、平成30年度改正で、電子インボイスの発行にあたり事前承諾が不要になったことと関係している、ということです。

安部先生も言及されているように、あまり知られていない改正ではないかと思われます。

しかし、事前承諾が不要ということでシステム導入を進めやすくなったとしても、実務で考えてみると、相手方の承諾なしにいきなり電子インボイスを送ることは考えづらいように思われます。

嫌がる相手に電子インボイスを送りつけて、仕入税額控除を適用したければあとは好きに書面印刷してください(ただし、令和3年度改正で電子取引の電子データの保存も必要だけどな!)というのは、なかなかハードモードです。

電子化対応が遅れている受領者側は、電子インボイスを書面出力で保存して仕入税額控除を適用できるとしても、令和3年度改正で電子帳簿保存法(法人税)としての電子取引における電子データの保存が必要となったことで、やはりなんらかの対応が必要ということになるでしょう。

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