社会保険に未加入の企業に勤める社員さんに向けて、年末調整をきちんとやらないと損することを説明しています。
説明のポイント
- 年末調整をサボると、所得税の還付金を見逃すことになる
- もっと痛いのは、翌年の住民税が多めに課税されること
- 年末調整用の資料は、問い合わせして取り寄せることができる
社会保険と正社員
すべての企業は、社会保険に加入する義務があります。
ということは、企業に勤めている正社員であれば、厚生年金や健康保険に加入しているのが普通です。しかし、企業におけるもろもろの事情から、社会保険に加入していない企業もあります。
その良し悪しについては述べませんが、この記事では、そんな「社保未加入」の企業に勤めている社員の方について、年末調整への対応をアドバイスします。
年末調整をきちんとやっていれば、焼肉に行けたのに……
私の経験でいえば、社保未加入の企業に勤める社員さんは、年末調整をきちんとやっていない人が多いです。特に若い人にその傾向が見られます。
実はこれ、損してます。
きちんとやれば、所得税の還付金で豪華な焼肉くらいは行けるのですが、そのことを理解せずに、単に面倒くさいと感じている人が多いのでしょう。
年末調整をやらないと、なぜ損をするのか?
どういう意味かを説明します。
現在の1ヶ月あたりの国民年金保険料は、15,590円です(平成27年度の場合)。これを12ヶ月間、毎月納めたとすると、
- 15,590円×12ヶ月分=187,080円
になりますので、年間トータルで187,080円の保険料を納めています。
重要なのはここからです。この払った国民年金保険料は、自分の税の計算(年末調整)において、「社会保険料控除」として使えます。
もっと簡単にいえば、「保険料を払って大変だったね。じゃあ、税金を減らしておくね!」ということです。
この社会保険料控除を年末調整で使わないと、どうなるでしょうか?
- 払った1年間分の国民年金保険料 →187,080円
- 所得税の税率 5.105%
- 還付額=上記1 x 上記2=187,080円x5.105%=9,550円
つまり、9,550円の還付金を見逃すわけです。この計算では、所得税と復興特別所得税の税率を最も低い5.105%と仮定しています。
自分の会社が「社保未加入」かどうかを知る方法
年末調整をやらないと損をする! ということは、ここまでの説明でお分かりいただけたと思います。
ところが実際には、自分が「社会保険に未加入の企業」に勤めているのか? という基本的なことがよくわからない人もいるでしょう。この場合、次の方法で判定できます。
- 正社員なのに、自分で「国民年金保険料」や「国民健康保険料」を払っているなら、社会保険に未加入です。
- 給与明細で、給与からの天引きを確認しましょう。「厚生年金」や「健康保険」という表示で天引きされていない場合、社会保険に未加入と思われます。(※ほとんどの会社では入社2ヶ月目から社会保険料の天引きが始まるので、入社1ヶ月目の給与で判断しないほうがいいでしょう)
自分の会社は、社会保険に加入していた場合(通常)
会社が社会保険に加入している場合、従業員の給料から天引きした金額は会社が把握しています。これが普通の企業です。
この場合は、会社が保険料を集計し、年末調整で自動的に社会保険料を控除します。
つまり、自分で「国民年金保険料」と「国民健康保険料」の資料集めは不要です。もし入社1年目の場合で、入社前に自分で支払ったものがあるときは、その分を社会保険料控除に追加できます。
また、家族のものを払っている場合も、その分も年末調整に追加できます。
自分の会社が、「社保未加入」だった場合
詳しく説明しますので、次の説明に進んでください。
「社保未加入」なんだけど、年末調整はどうすればいい?
上記の判定の結果、自分が「社保未加入」とわかった場合、年末調整はどうすればいいでしょうか?
もし社保未加入の場合、年末調整のために集める資料が多くなります。自分で支払った「国民年金保険料」と「国民健康保険料」の資料が必要になるためです。
1.国民年金保険料
国民年金保険料を支払った金額のわかるハガキが必須です。年末調整の書類を提出するときに、この資料も一緒に会社に提出します。
普通は11月初めぐらいに、下記の写真のハガキが送られてきます。もし手もとにハガキがない場合は、お住まいに近い年金事務所に電話して、資料を再請求をしましょう。(→年金事務所の検索)
2.国民健康保険料(国民健康保険税)
国民健康保険料(市区町村によっては「国民健康保険税」と呼ぶ場合もある)は、支払った金額を証明する資料は提出不要とされています。
つまり、今年の支払額の合計が自分でわかればOKで、領収書を添付する必要はありません。
ちなみに、「今年の支払額」というところが、ちょっとしたポイントです。今年の支払額ということは、「○年度」という表示は関係ありません。
つまり、今年でいえば、「平成27年1月1日~12月31日」に支払ったものが該当します。平成26年度の保険料も、平成27年度の保険料も、とにかく今年支払ったものが対象です。
銀行やコンビニで国民健康保険料を支払った時に、控えとして渡された領収書(下記の写真を参考)があるはずです。しかし、重要なものに見えないので、捨ててしまっている人もいるでしょう。
そんな場合には、お住まいの市区町村の国民健康保険課に問い合わせましょう。納付した金額の証明書を発行してくれる場合もあります。
3.生命保険
もし生命保険や都民共済、県民共済、全労済、コープ共済などに加入しているならば、その保険料も「生命保険料控除」として使用できます。
控除の証明書を紛失した場合、お客様窓口に問い合わせれば再発行を依頼できます。
4.年末調整の書類に記入しましょう
集めた資料をもとに、その年に支払った保険料の額を、「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」という書類に記入します。
記入方法について、簡単な解説を作りました。
この記入用紙を紛失した場合には、下記のサイトからダウンロードできます。
参照:[手続名]給与所得者の保険料控除及び配偶者特別控除の申告(国税庁)
【補足】家族の名前で届いた資料について
- 家族と同居していて、その家族が、その家族の年末調整のために自分の資料を使っている場合は、自分の年末調整ではその資料を重複して使うことはできません。
- 家族の保険料の分も自分が払っている場合は、その資料は、自分の年末調整だけに使えます。
無視した代償は、住民税のほうが痛い!
この手続きをきちんとすると、給与から源泉徴収(天引き)されていた所得税が、12月の給与で還付されます。しかし、その影響は年末調整だけではありません。
この年末調整というものは、来年の住民税にも影響するのです。どういうことか、説明します。
今回の年末調整の結果は、来年1月に、お住まいの市区町村に会社から伝達されます。その結果をもとに、来年6月からの住民税の納付が始まります。
つまり、年末調整をいい加減にやってしまうと、還付金が戻らないだけでなく、住民税まで高くなってしまう場合があるのです。
年末調整をシカトした影響
年末調整をシカトした場合の、住民税への影響を考えてみましょう。
住民税が増える影響は、自分が納付していた社会保険料の10%相当分です。つまり、社会保険料の10%相当が、年末調整を無視したために、住民税を払うことになります。
例えば、国民年金保険料(187,080円)を年末調整で適用していなければ、来年の住民税は18,700円もよけいに増える計算です。恐怖ですね。
年末調整が終わってしまった場合はどうすればいいの?
すでに年末調整が終わってしまった場合は、どうすればいいのでしょうか?
この場合、自分で確定申告をすれば、5年以内に限って税金(所得税と住民税)の還付を受けることができます。
申告書は、国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成して提出します。
まとめ
社会保険に未加入の企業に勤める従業員に向けて、年末調整をきちんと行わない場合の悪影響について説明しました。
このような話があまり出回っていないのは、会社に勤務する従業員は、通常は社会保険に加入しているためです。そのためか、このような想定外の話は、あまり語られないと感じています。