2020年も3分の2の終わりを目前にし、いよいよ年末調整を意識する時期が近づいてきました。今年の年末調整の注目点である「年末調整手続の電子化」について、対応を事前に検討するためのアドバイス集を提供します。
説明のポイント
- 年末調整ソフトは、国税庁が無料で配布するため、従業員の導入ハードルは低い
- 従業員の独自判断は望ましくない。事前にソフト利用の可否も含めて周知をした方がよい
「年末調整手続の電子化」への対応は情報不足
2020年(令和2年)における年末調整の注目点といえば、「年末調整手続の電子化」といえます。
しかし、税務関係者にとって年末調整は関心の高い分野ではないことなどの事情から、会社の対応の策定にあたり役立ちそうな情報提供は、不足気味といえます。
そこで、当ブログで独自に「年末調整手続の電子化」を研究した成果をもとに、対応を策定するためのアドバイス集を提供します。
【1】そもそも、年末調整ソフトを使うか?
今回のテーマは、「そもそも、年末調整ソフトを使うべきか?」という点です。
なお、「年末調整ソフト」に関する初歩的な説明は、この記事では省略します。国税庁ホームページの「年末調整手続の電子化」ページを見て、ある程度の内容を理解していることを前提に説明を進めます。
これからまもなくの2020年10月において、国税庁は「年末調整ソフト」の配布を開始します。
そこで、会社が事前の対応を検討する上で必要なことは、「そもそも、このソフトの使用を従業員に許可するか」という点です。
対応を放置すると、気の利いた従業員が使ってくる可能性
給与担当者が、年末調整ソフトについて何も周知しなかった場合、気の利いた従業員が「年末調整ソフト」を独自に利用してくることが想定されます。
もしくは、「年末調整ソフトを使っていいですか?」という問い合わせを受けることもありえるでしょう。
つまり、従業員に何も案内しなければ、後日にしわ寄せも起こりえるわけです。何らかの事前の周知は必要であると考えます。
もし従業員が独自に年末調整ソフトを利用した場合、「年末調整ソフト」仕様の書類の提出を受けることになります。
当ブログですでにお伝えしていますが、年末調整ソフトで書面印刷された年末調整書類は、国税庁が配布する標準形式とは大きく異なっています(下の画像参照)。
給与ソフトへの転記を考えると、一部の従業員が提出した書類だけが「年末調整ソフト」出力の書面で受け付けることになります。チグハグな対応となって、苦労も予想されるでしょう。
対応に悩むなら、いっそのこと使わないのも一案
「年末調整手続の電子化」に興味がない場合や、年末調整ソフトの提供初年度はよくわからないので対応を見送りたい場合は、いっそのこと「年末調整ソフト」を使わないように従業員に周知するのも一つの案といえます。
従来からの年末調整の手順が確立している場合や、新型コロナ対応に追われて新しい業務サイクルの確立で手一杯ということもあるでしょう。
前述のとおり、担当者として困ってしまうのは、従業員がそれぞれに違った対応をしてチグハグな面が生じることです。
担当者としては、従業員への対応はできるだけ統一したほうが望ましいといえます。「年末調整ソフトは使わないでほしい」という周知をすることも、それはそれで一つの選択といえます。
業務手順の変更は慎重に
新しいソフト、便利なソフトが提供されたからといって、これを取り入れれば、すぐに改善の成果が現れるというものではありません。むしろ混乱を招く恐れもあります。
従来のサイクルと比較し、導入によってどのような改善が見込めるのかについては、慎重な検討が必要といえます。
例えばテストケースとして、今年はITリテラシーのある少数の従業員に年末調整ソフトを使ってもらい、その反応を確認し、翌年に利用者数を拡大させるということでもよいと考えます。
「年末調整ソフト」は国税庁ホームページなどで無料配布されることから、従業員の入手のハードルは相当に低いといえます。
事前に混乱を防ぐために、従業員には、このソフトを使用してよいかという初歩のレベルについて、事前に検討しておく必要があるでしょう。
まとめ
「年末調整手続の電子化」への対応にあたり、お役立ちのアドバイスをお伝えしています。
第1回目は、そもそも年末調整ソフトを使うべきか? という段階からの検討をアドバイスしました。
なお、当ブログでは今後もアドバイス集を作成していく予定です。そして、このアドバイスを集めていくと、チェックリストとして活用できることを想定しています。
このほか、すでに書いた過去記事にも、役立ちそうな情報があるかもしれません。過去記事「年末調整・法定調書」の一覧もご参照ください。