個人型確定拠出年金は、自分自身で年金を管理できる点に注目したい

「個人型確定拠出年金」が話題になっています。よくいわれている「節税」メリット以外にも、強調したい点があります。

説明のポイント

  • 個人型確定拠出年金は3つの節税メリットがある
  • 個人別の年金管理なので、年金受給の見通しが変わる恐れはない
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確定拠出年金とは何か?

港でのんびりする女性

確定拠出年金とは、自分が支払った(=拠出した)お金を年金として積み立てる退職年金制度です。積み立てる年金資産は自分で管理し、将来受け取れる額も運用の結果次第というのが特徴です。

なぜこのような制度ができたかというと、従来の年金制度ではカバーできない問題があったためです。

  1. 充実した企業年金制度がある大企業に比べて、中小企業や自営業者は、そのような年金制度が普及していない
  2. 従業員の退職時に年金資産の持ち運びができない

このため、従来の公的年金(国民年金や厚生年金)に「上乗せ」するかたちで、確定拠出年金制度が平成13年に創設されました。

利用者数の少ない「知る人ぞ知る」制度

ところが、この制度、創設からすでに14年を経っても、まったくと言っていいほどに普及していません。

厚生労働省の27年12月の調査によれば、個人型確定拠出年金の利用者数は24万人程度。このうち、自営業者の利用者は7万人弱。「知る人ぞ知る」という制度になっています。

確定拠出年金の制度は「企業型」と「個人型」の2つに分かれますが、「企業型」というのは、企業内で実施する制度なので、今回の説明では除外します。この記事では、中小企業や自営業者向けの「個人型」を前提にお話しします。

個人型確定拠出年金が「節税」として注目されている

退職後の年金づくりを独自でうながす目的から、確定拠出年金には、税金の優遇措置が設けられています。

この優遇制度に着目し、ファイナンシャルプランナーを中心に、確定拠出年金をすすめる書籍が発売されています。インターネットでも、「確定拠出年金 メリット」などで検索すれば、多くの情報を得られます。

税制のメリット

かいつまんで、税制のメリットをまとめます。

  1. (拠出時のメリット)年金を支払った分が非課税(所得控除)になるのでお得
  2. (運用時のメリット)積み立てた年金の運用益が非課税になるのでお得
  3. (受取時のメリット)退職所得という有利な区分で計算できるのでお得

目先の話では、1.の拠出時のメリットが注目されます。

年金の掛け金を支払ったことによって、具体的にどれぐらいの節税になるのかは、厚生労働省のページに試算があるので参照してください。

参考個人型年金に加入した場合の所得控除の効果(厚生労働省)

ただし、厚生労働省の試算では、所得税だけの効果が計算されています。

所得税以外に、住民税の計算でも所得控除になります。住民税の税率は10%で固定ですので、試算の税率に10%を上乗せして節税効果を計算するとよいでしょう。

払い込んだら「節税」でも、受取時には課税される

私はここで「節税」という言葉を使いましたが、年金の掛金を支払った時に非課税(所得控除)になっても、その積み立てた年金を受け取る時には退職所得として課税されます。

この点を無視して、掛金支払い時の一時的な減税効果を、資産運用の利益のように誤解させる説明が見受けられます。減税と運用益は、あくまで別の結果で生じたものなので、混同するのは誤りでしょう。

節税もいいけど、個人別の年金管理もポイント

従来の年金制度の問題点

既存の公的年金(国民年金や厚生年金)は、相互扶助の年金制度のため、「みんなが払った年金を政府が集めて、みんなに分配する」という仕組みでした。

このため、分配する見込を間違えて年金制度がうまくいかなくなると、支給開始年齢が引き上げられたり、減額されたりする恐れが生じます。

例えていうならば、マラソンのゴールが42.195kmだと思って走っていたら、政府から突然、「マラソンのゴールを10km先に延長しました、ついでに優勝賞金も減らしました」といわれるレベルの話です。

いつもらえるかわからない年金に、国民が疑心暗鬼になるのは当然です。

確定拠出年金は「個人別で管理する年金」

確定拠出年金は、他の公的年金制度と異なる点があります。それは、自分が支払った年金は、自分だけの年金資産として積み立てられるということです。

自分だけの年金資産の「管理口座」があり、その口座の内部で資産を運用していきます。自分が積み立てた年金を、自分の責任で運用し、自分だけがその年金を受け取れます。

個人型確定拠出年金の管理画面

自分で自分の将来を決める年金

すべてが自己責任の年金管理になっているため、「自分の年金は自分のもの」ということです。他の公的年金のように、世代間の不公平さや、受給開始年齢の延長・減額の恐れは少ないわけです。

しかし、自分が運用する年金のため、資産運用について勉強する必要があります。運用が失敗すれば、積み立てた年金が減ってしまう場合もあります。

どうしてもお金を減らしたくなければ、積み立てた年金は「定期預金」として運用しておけば、積み立てた年金資産が減るリスクはありません。しかし資産が増えることもほとんど期待できません。

まとめ

まったく普及していない個人型確定拠出年金制度ですが、資産運用を理解して、使い始めた人からメリットを得られる制度です。

世間にいわれるように「節税」のメリットは確かに大きいです。しかし、私が強調したいのは、「自分が預けたお金が自分だけの年金資産として受け取れる」という点です。

個人型確定拠出年金を始める場合は、最初に、年金管理を任せるための金融機関を選ぶ必要があります。興味を持たれた方は、まずは、下記の国民年金基金連合会による公式情報を参照するとよいでしょう。

参考個人型確定拠出年金(国民年金基金連合会)

個人型確定拠出年金は、「自分のもらう年金は自分で決める」、という制度に共感できる方におすすめします。

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