中小企業庁がとりまとめた「中小企業白書」と「小規模企業白書」が、2016年4月22日に閣議決定されました。
公表されている「小規模企業白書」から、気になったグラフを紹介しています。
説明のポイント
- 中小企業庁のとりまとめた「小規模企業白書」を紹介している
- 政府統計やアンケート調査から、小規模企業の現状分析が行われている
- ITの活用や記帳、棚卸しと売上・粗利の相関関係など、興味深い分析も
「小規模企業白書」とは?
白書では、中小企業のうち、従業員数が20人以下(商業・サービス業の場合は5人以下)の事業者を「小規模企業」と定義しています。
全国に325万の小規模企業があるとされ、中小企業のうちに占める割合は85%とのことです。
この小規模企業の実態を明らかにするために、政府統計やアンケート調査などの結果から、現状分析を行ったのが「小規模企業白書」です。2016年は2回目の白書になります。
白書を全部読むと大変ですが、まとめとして「概要」(PDF)が公表されていますので、これを読めば一通りをつかむことができます。
また、小規模企業白書の本家として、「中小企業白書」もあります。
筆者が注目したグラフの紹介
筆者である私が注目したグラフを、小規模企業白書の中から、10個ほど採り上げます。
フリーランスについてのアンケート調査もあって、なかなか読み応えがありました。
1.小規模事業者は減少しつつも、売上高の総額は変化なし
まずは、小規模事業者数の変化の要因の図です。
小規模事業者の総数は減少していますが、開業・廃業もそれぞれにあって、適度な新陳代謝が行われていることがわかります。
小規模事業者数の増減を示したグラフです。業種としては、小売、製造、建設業の減少が顕著になっており、その理由は高齢化によるものです。
事業者数は減っていていますが、売上高の総額に注目してみると、特段の変化はありません。このため、事業者ひとりあたりの売上高は増加していることがわかります。
2.ITの活用
ITの活用にも注目してみましょう。
調査によると、Word、Excelなどの事務処理ソフトを使用していない業者は4割弱もいるとのこと。結構多いですね。
「経理ソフト」を使っていない事業者も6割いるとのこと。紙の帳簿なのか、税理士に丸投げなのかは不明です。
宣伝媒体としての、ブログやSNSに関する調査です。ブログやSNSを活用している企業は、売上高の増加傾向が高いことがわかります。
売上高に占めるインターネットからの受注比率と、売上高の傾向を示したグラフです。
ネット受注比率は、思ったほど大きな割合を占めていないようです。しかし、ネットからの受注比率が高いほうが、売上高は増加傾向にあります。
ネットを活用することが売上高増加のカギになっています。
3.記帳、棚卸しと粗利の相関関係
意外なことですが、記帳の頻度と粗利には明確な相関関係は見られない、という結果になっています。
帳簿をいつもきちんとつけましょう、という説得力はやや薄れてしまいますね。
棚卸しの頻度と粗利には、相関関係が見られます。また、その頻度が高いほど、粗利が増加傾向にあります。
4.経営計画の有無、人材育成への取り組みと売上高の相関関係
経営計画を作成したことがある事業者のほうが、売上高が増加傾向にあります。
人材育成への取り組みを行っている事業者の方が、売上高が増加傾向にあります。
5.事業承継
親族外への事業承継の抵抗感は、ある・ないが半数ずつとなっています。また、国の支援する「事業引継ぎ支援センター」を知っているかの問いには、77%が知らないと回答しています。
6.フリーランスとしての働き方
フリーランスでも、週40時間を超える平均労働時間になる場合も多くあります。
フリーランスは、収入や社会的評価の面で不満はあるものの、やりがいや自由度の面で満足度が見られます。
まとめ
今年度の「小規模企業白書」から、気になったグラフを採り上げました。ITの活用、棚卸しの頻度と売上・粗利との分析など、興味深い調査が含まれていました。
注目点を整理してみると、次のような点でしょう。
- 小規模事業者の数は減っているものの、事業者間のほどよい新陳代謝が行われている
- 小規模事業者の数は減っているものの、全体としての売上が減っているわけではない
- ブログ、SNSを活用している企業は、売上が増加傾向にある
- 棚卸をよく実施している企業ほど、粗利率が増加傾向にある
もちろん、それぞれ興味のある分野は違うでしょう。小規模企業白書は無料で読めますので、データ分析が好きな方におすすめです。
お時間がない方は、概要(PDF)にだけ目を通しておけばいいでしょう。