Xデーに備え、社内の防災ミーティングで危機意識を共有しよう

防災は、企業にとって重要な危機管理のひとつです。Xデーに備え、いざというときの危機管理をしましょう。

説明のポイント

  • 防災対策は、危機管理のひとつ。
  • 備蓄品の準備、災害時のマニュアル整備も必要
  • 災害時は、従業員を一度に帰宅させてはいけない
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東京は「危険都市」

この記事の執筆時点において、東日本大震災(2011年3月)から5年が過ぎようとしています。

スイスの再保険会社が2013年にまとめた調査によれば、東京・横浜は、自然災害リスクの高い都市ランキングにおいて上位にランクされています。

ここでいう自然災害とは、洪水、嵐、高潮、地震、津波を指しています。まったくうれしくない評価ですが、東京の危険性は、世界が認めたレベルということです。

参考:スイス・リー、都市地域の最も大きなリスクは河川の洪水と地震であるとする最新レポートを発表(2013年9月)

日本で特に危ないのは地震

中央防災会議の発表では、今後30年以内のM7程度の首都直下型地震が起こる確率は、70%ということです。

これは「いつ直下型地震が起きてもおかしくない」ということを意味しています。

中央防災会議が対象とした大規模地震

引用:内閣府「これまでの首都直下地震対策について」

3.11の教訓

東日本大震災(3.11)を振り返ってみると、震源は東京から離れていたため、首都圏において甚大な被害は発生しませんでした。

しかし、次のような問題が生じていました。

  • 長期振動で高層ビルの上層階ほど大きく揺れた
  • 湾岸地区で液状化現象が発生した
  • 電車が止まり、帰宅困難者が多く発生した
  • 携帯電話が使えなくなった(PHS以外)
  • 電気やガスが止まった
  • スーパーやコンビニで買い占めが発生した

これらのことを記憶にとどめておくべきでしょう。なぜなら、首都直下型地震が起これば、もっと恐ろしい結果が予想されるからです。

企業が採るべき対策とは

防災に備える人

では、企業は具体的にどんな対策を取ればよいのでしょうか?

ここで参考になるのが、東京都の示す対策です。東京都は、大規模災害の発生に備えて「東京都帰宅困難者対策条例」を制定しています。

この条例によれば、企業における対策として「事業者の責務」「従業員の一斉帰宅抑制」が定められています。具体的に企業が行う事前対策を見てみましょう。

1.オフィス内の危険度チェック

東京都の防災ハンドブック「東京防災」は、オフィスにひそむ危険として次のものを挙げています。(P.104~105)

  • 窓ガラス
  • キャビネット
  • コピー機
  • 掲示板
  • パーテーション

災害時に、割れるもの、倒れるものが危険物として挙げられています。災害時は、これらが凶器に変わる可能性があるからです。

このほかにも、次の注意点が挙げられています。

  • 避難経路をふさがないように、出入り口の近くに物を置かない
  • パソコンは粘着マットなどでデスクに固定し、デスク同士も連結金具で固定する
  • 壁面収納は、L字金具で固定する
  • 引き出しや扉をにストッパーをつける
  • 収納の上に落下しやすいものをのせない

まずは、事業所の内外において危険度をチェックしましょう。

2.帰宅困難者への対応

次に、帰宅困難者になりうる従業員についても目配りが必要です。

まず災害が起こったからといって、従業員をすぐに帰宅させてはいけません! 災害が発生すれば、電車やバスはまともに動かないことが想定されます。

東日本大震災では、従業員に早期の帰宅を促したことが、駅前や主要幹線での混雑や渋滞を引き起こしました。主要幹線の渋滞は、消防車や救急車など、緊急車両の移動の妨げとなります。

また、東日本大震災では首都圏の被害が少なかったため、従業員が帰宅できる「成功体験」が生まれました。しかし、首都直下型地震の場合においては、東日本大震災とは比較にならないレベルの、首都圏の被害が想定されており、同じように行動することは危険です。

ここで重要なのは、やはり事前の打ち合わせでしょう。帰宅を希望しても、それができないことを、従業員はあらかじめ知っておく必要があるでしょう。

帰宅時に潜む危険性にも目配りが必要です。

災害時において、平常時と同様のモラルは期待できません。夜間になれば、従業員の身が危険にさらされることも当然にありえます。

また、延焼火災の恐れもあります。都内の環状七号線を中心とした、木造家屋の密集地区は「木賃ベルト」と呼ばれ、火災の危険が特に高いといわれています。

都心のオフィス街では安全だったものが、環七に出たら危険度が増したということは、普通にありえるのです。

消失棟数の分布(都心部)

引用:内閣府「これまでの首都直下地震対策について」

冬の時期に風速15メートルの強風が吹いている場合、65万棟の家屋焼失が予想されています。首都直下型地震においては、徒歩で帰宅することは命の危険に直結します。

しつこいようですがもう一度述べておきます。

政府や自治体は、災害時において従業員の帰宅を抑制するように企業に要請しています。従業員の帰宅や連絡網をどうするか、ルール作りを話し合っておくことが必要です。

3.備蓄品をそろえておく

ここまで説明したとおり、首都直下型地震では、帰宅できない従業員が発生することを見込んでおく必要があります。

また、災害がひどいほど、長期の帰宅困難者の発生が予想されます。

従業員を施設内に待機させるため、あらかじめ飲料水や食料を備蓄しておく必要もあるでしょう。東京都の条例では、企業に対して備蓄を要請しており、「努力義務」とされています。

東日本大震災で経験したとおり、震災発生後は恐怖に怯える人たちの買い占めが必ず起こります。災害後に必要なものを購入することは難しいと認識しておきましょう。

企業では、どんな備蓄品が必要でしょうか?

必要な備蓄量は、最低1人あたり3日分とされています。これは3日間あれば、最低限の救援が見込めるためです。望ましいレベルは、1週間程度の備蓄とされています。

具体的な備蓄量ですが、飲料水は1人あたりで1日3リットルです。3日間なら9リットルですので、かなりの量になります。これに食料が加わります。

備蓄品の買い替えは手間ですので、長期保存に適した保存水や、食料品を購入しましょう。

また、断水になると、トイレの水が流せないことにも留意しましょう。小規模なオフィスでは、トイレ対策も必要でしょう。

このほか、高齢者、障がい者、女性、外国人従業員への配慮も必要です。

4.従業員以外の人々への対応

ここまでは従業員を想定した対策を挙げました。

これにくわえて、来店型の施設の場合は、その来客が施設にとどまることができるように準備する必要もあります。震災が起こったからといって、退去してもらうことはできないからです。

備蓄だけにとどまらず、立地によっては津波対策、観光客保護なども必要でしょう。必要な対策は、企業の業種や立地によって、異なります。

まとめ

企業の防災対策は、重要な危機管理のひとつです。

従業員と防災について話し合い、社内に備蓄があることを伝えておくことは、従業員満足度の向上にもつながります。なお、防災用品の購入は、会社の経費になります

遠隔地に事業所がある場合には、事前の対応方法を決めておくことも必要です。従業員と一緒に防災を考えることで、社内の安心感や一体感も高まるはずです。

この記事の記述は、次のサイトと書籍を参考にしました。より詳しいチェックリストは、下記のサイトと書籍を参照してください。

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