多くの給与計算ソフトは、給与支払報告書のデータ送信に非対応という悩み

電卓と数字の画像

多くの給与計算ソフトが電子申告(eLTAX)に対応していないため、給与支払報告書を郵送する事務負担が生じている問題点について触れます。

説明のポイント

  • 多くの給与計算ソフトでは、eLTAX非対応
  • 給与支払報告書を印刷して郵送する事務負担を軽減できない
  • 公式ソフトPCdeskを使えばデータ送信は可能だが、難易度が高い
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電子申告とは?

電子申告とは、データ送信によって申告書を提出する方法です。提出する側にとっては、紙の印刷代、郵送代などのコスト削減につながります。

また、提出を受ける側にとっても、受け取った紙の申告書を保管、データ化するコストが削減されます。双方にメリットがあることから、国を挙げて電子申告の実施が推奨されています。

税務における電子申告の提出先は、

  • 国税庁の「e-tax」(イータックス)
  • 地方自治体の「eLTAX」(エルタックス)

の2つです。国と地方では管轄が分かれているため、別々のシステムが構築されています。e-taxという名前は耳にしたことがある人も多いでしょう。

税務のはざまで置き去りの給与計算ソフト

電子申告を行うためには、専用の税務ソフトを使います。税務ソフトを提供するソフトウェア業界は、国の推進する電子申告に歩調を合わせており、ほとんどの税務ソフトで電子申告が可能です。

つまり、税務ソフトとe-taxの相性は非常に良好なのですが、これに比べて残念なのが、給与計算ソフトにおける状況です。有名な給与計算ソフトの多くは、データ送信に対応していない現状があります。

給与計算で電子申告なんて必要なの?

「給与計算で電子申告なんて必要なの?」という疑問が浮かぶでしょう。

これは、年末調整後の翌年1月に、給与支払報告書を提出する場合が該当します。(そのほかに、法定調書合計表に添付する一部の源泉徴収票もあります)

給与支払報告書とは?

給与支払報告書とは、従業員に対してその年に支払った給与の詳細を集計した書類です。従業員を雇用する会社は、従業員の住んでいる市区町村あてに給与支払報告書を提出する必要があります。

給与支払報告書の送付は会社が行うため、従業員が自分で提出する必要はありません。これは、従業員が確定申告をしなくても、従業員の所得を市区町村がわかるようにするための処理です。

給与支払報告書の取り扱いはほとんどが紙ベース

この給与支払報告書の提出は、いまだにその多くが紙ベースで印刷され、郵送されています。従業員が居住する市区町村は様々ですので、都内の企業ならば、23区のほとんどの区に報告書を郵送することは別にめずらしくありません。

このような仕分け作業、投函にかかる作業は膨大なコストを生んでいます。

給与支払報告書平成29年度様式

▲給与支払報告書(平成29年度新様式) 品川区HPより引用

なぜ電子申告できないのか?

電子申告ができる給与計算ソフトは、eLTAX対応ソフトウェアを利用している場合に限られます。

給与支払報告書を電子申告で送信したい場合は、税務ソフトメーカーの提供する給与計算ソフトを購入する必要があります。弥生給与やクラウド給与ソフトなど、非税務ソフトメーカーの給与計算ソフトでは、電子申告はできません。

税務ソフトメーカーと会計ソフトメーカーの違い

このあたりは、給与計算ソフトの抱える事情がありそうです。一般的に税務ソフトでは、「電子申告送信用ソフト」をセットで購入します。

ところが、給与計算ソフトを単独で提供される場合は、送信用の電子申告ソフトは提供されません。給与支払報告書のデータ送信のためだけに、送信用ソフトを提供する意義は乏しいという事情があるのでしょう。

参考:eLTAX対応ソフトウェア一覧

eLTAX対応ソフトウェア一覧

▲eLTAX対応のソフトウェアは、すべて税務ソフトメーカー。

普通の給与計算ソフトを使っているけど、電子申告できないの?

このように、一般的な給与計算ソフトを使っている場合は、紙ベースの処理は避けられません。でも、紙ベースはなるべくやめたいので、給与支払報告書も電子申告したいと思うのが当然です。

eLTAXは、公式の税務ソフトとして「PCdesk」を提供しています。このソフトを使えば、給与支払報告書を電子申告することは可能です。

参考:給与支払報告書、給与所得者異動届出書を提出するには

PCdeskで送信するには

PCdeskを使って電子申告で送信する方法は、

  1. PCdeskにデータを入力していく方法
  2. CSVデータを加工したうえで、そのデータをPCdeskに読み込ませる方法

があります。

少人数なら、PCdeskにひとりひとりの情報を直接入力して送信する方法が可能でしょう。

これに比べ、少人数ではない企業では、それぞれの情報を手入力すると大変な手間です。このため、CSVを加工してPCdeskに読み込んでから送信したいところです。

PCdeskの申告データ作成メニュー

▲PCdeskの申告書作成画面

CSVを加工してPCdeskで読み込んでから提出する

PCdeskにcsvをインポートして、そのデータをeLTAXに送信することができます。eLTAXのサイトから、提出用CSVのレイアウトサンプルを取得できます。「各種ドキュメント」のページにアクセスしてください。

参考:各種ドキュメント>様式の留意事項/仕様書

eLTAXの給与支払報告書CSVレイアウト仕様

この仕様書とレイアウトサンプルを参考にCSVを加工すれば、PCdeskで電子申告することができます。ただし、ハッキリいって根気のいる作業です。

余力のある大企業ならメリットもあるでしょうが、中小企業では意味が乏しい作業でしょう。

給与支払報告書CSVサンプル

▲CSVのレイアウトサンプル

本来は、給与計算ソフトでCSVデータを出力できればいいのですが、対応しているものを知りません。

MFクラウド給与が、2017年1月にeLTAX取り込み用のCSVデータの出力に対応しました。
参考:eLTAX取込み用の給与支払報告書・源泉徴収票CSVの出力に対応しました(MFクラウド給与、2017年1月6日)

まとめ

主要な給与計算ソフトの多くは、電子申告に対応していません。このため、1月における給与支払報告書の提出は、紙ベースの印刷、封入、郵送という事務が続いています。

給与支払報告書のデータを、PCdeskを使用して送信する方法もあります。ただし、PCdeskの操作性は快適といいがたい実態があります。

本来は給与計算ソフト側でPCdesk送信用のCSVを出力できることが理想ですが、実現していないようです。

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