日本の税の始まりは、神様へのお供え物だった

神主の祈祷

国家を維持するうえで税は必要なものです。その税の起源は、神道にみられる「初穂料」(はつほりょう)にあることが定説とされています。古代日本における税の起源について紹介します。

説明のポイント

  • 神道における初穂料が、税の起源とされている。
  • 「魏志倭人伝」に日本の税に関する最古の記録があり、宗教と税の関係がうかがえる。
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日本最古の税の記録は「魏志倭人伝」

まず、税に関する記録から確認します。

古代日本について言及している「魏志倭人伝」は、知らない人はいない史料でしょう。この「魏志倭人伝」は通称で、中国の三国時代(184年~280年)の歴史書「魏書」のうち、魏の国より東に住む倭(日本)の人々について述べた項目を指します。

「魏志倭人伝」の原文は漢文のため、吉野ヶ里歴史公園が運営するホームページ「弥生ミュージアム」から、「魏志倭人伝」の訳を一部抜粋します。

……人の寿命は、あるいは百年、あるいは八~九十年で、その習俗は支配身分の者はみな四、五人の妻をもち、一般の村民でも二、三人の妻をもっている。婦人は淫らでなく、嫉妬もしないし、盗みもなく、争いごとも少ない。法を犯せば、軽いものは妻子を没官され、重いものは家族と一族が殺される。身分の上下の秩序はよく守られ、十分に臣服している。租税、賦役を収め、そのための建物(倉)がたてられ、国々には物資を交易する市があり、大倭に命じて、これを監督させている。

弥生ミュージアム「魏志倭人伝」より)

訳に「租税、賦役を収め」とある部分が、日本における税の最古の記録とされています。原文では「收租賦」としか書かれておらず、どのような内容の税だったのか詳細はわかりません。

中国の三国時代は、日本の弥生時代にあたります。「魏志倭人伝」によれば、日本の弥生時代において税の制度がすでに存在していたことがわかります。

また、「魏志倭人伝」では邪馬台国の女王・卑弥呼は、シャーマン(祈祷師)として描かれています。古代国家が宗教的な要素を色濃く持っており、その国家を維持するために税を徴収していたようすがうかがえます。

初穂料が日本の税の起源

稲穂の実る田んぼ

その税の始まりを探ると、考古学・宗教学の学説では「初穂料」が起源とされています。宗教学の書籍には、このような記述があります。

 

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 宗教と経済を考えるにあたっては、利子や税と宗教の関係が重要な問題になってくるが、この利子や税の起源は、日本においては信仰と深く結びついていると考えられる。神道の信仰においては、収穫をもたらしてくれた神に対して、その収穫物の最初のものを、初穂料として捧げることになっているが、これが利子や税の起源であるとされている。

(保坂俊司、賴住光子、新免光比呂『比較宗教への途2 人間の社会と宗教』、1998年)

初穂料とは、神前に捧げるお供えものを意味することばです。また、「弥生ミュージアム」のホームページにも、このような記述があります。

「租」はその起源を「初穂献納儀礼」と結びつけて考える説が古代史の研究者により古くから唱えられています。初穂献納はその年に収穫した稲の初穂を神・祖霊に捧げる農耕儀礼です。殷・周時代の古代中国でも、租税は神を祀るための祭祀料として徴収されたという指摘もあります。

吉野ヶ里遺跡に祖霊を祀ったと考えられる北墳丘墓があり、その近くにクニの倉と見られる倉庫群と市があったことから想像すれば、弥生時代の租税は祖霊を祀る祭祀と深く結びついていたと考えられ、ムラムラからクニの祖霊に初穂を捧げる儀礼の一環であったと考えられます。

(弥生ミュージアム「弥生時代の租税」より)

古代では、先祖をまつる信仰と税が深く結びついていたという指摘は、興味深いものがあります。無事の収穫ができたことをご先祖様に感謝した光景が思い浮かびます。

「租」や「税」の字源

前述のとおり、弥生ミュージアムの解説では、殷・周時代(紀元前17世紀~紀元前8世紀)の中国でも同様の制度があったと述べています。

そこで参考として、租や税の字源をあたってみます。漢字とは、古代中国のようすを描いたものだからです。

  • 【租】……「且」は、そなえ物の象形で、稲のそなえ物、みつぎものの意味(漢語林)。お供えをするための「まないた」の意味(字統)。
  • 【税】……「兌」は、ぬけおちるの意味。自分の年間の収穫の中からぬけおちる穀物の意味から、租税の意味を表す(漢語林)。
  • のぎへん「禾」は、穂先が茎の先端にたれかかる形にかたどり、いねの意味を表す。(漢語林)

こうしてみると「租」や「税」の字源は、神様に農作物をお供えをした意味から生じていることがわかります。

まとめ

日本の税の起源は初穂料が定説とされています。

また、「魏志倭人伝」では、邪馬台国の女王・卑弥呼は、シャーマンとして描かれています。税として供出された初穂料とお祝いの儀式の結びつきを考えると、原始的な宗教と国家のようすがおぼろげに想像できます。

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