多数ある電卓アプリを厳選して、「本当に使えるもの」、つまり経理などの実務でも使えるものを紹介します。2016年に入ってから、新しい高機能な電卓アプリもリリースされていますので、要チェックです。
説明のポイント
- 実務向けなら「AppCalc」か「実務電卓C」がおすすめ
- 無料で広告表示なしのもので選ぶなら「う電卓」
電卓アプリは補助電卓として使える
経理部門や会計事務所に勤務する人なら、電卓にこだわりのある人も多いでしょう。現在ではパソコンへの入力やExcelを活用する機会が増えており、実は電卓よりもテンキーのほうが重要性が高いという話もあります。
スマートフォンに性能のよい電卓アプリがあれば、普段使いの電卓に加えて、スマートフォンを補助電卓として活用することができます。
私がちょっと気になっていたのは、今年(2016年)に入ってから、iOSの経理向け電卓アプリが充実してきているということです。そこで今回は、iOS向けの電卓アプリを厳選して紹介します。
記事を書いた人のスペック
- 36歳税理士。
- 利き手は右手で、電卓を打つのも右手。
- 電卓の入力スピードは、一般の方より少し速い程度。
- My電卓はシャープの経理向け電卓「COMPET CS-S932」。
アプリに求める最低条件
iTuneストアにて、アプリを「電卓」で検索すると、山のように電卓アプリが引っかかります。iOSにも標準の電卓アプリがインストールされています。
しかし、プロが求める性能は、少し条件が高めです。今回、アプリを調べるにあたって、最低条件とした項目は次のとおりです。
- アプリのインストール時は無料であること(有料だと使用感がわからないので除外)
- 入力桁数の上限が12桁以上であること
- メモリー機能(M+/M-/RM/CM(またはMRC)のボタン)があること
- バックスペース(1文字戻って削除)ができること
この条件をもとに検索した結果ですが、桁数が12桁に満たないアプリがほとんどでした。ご家庭の家計簿に使う場合は問題ないですが、多額の数字を扱う場合は不安が残ります。
また、メモリー機能を持たない電卓アプリも多いです。これは実務ではなくても備えて欲しい機能でしょう。
電卓アプリは山のようにありますが、この最低条件によって、そのほとんどがふるい落とされてしまいました。最低条件を満たしたアプリは次のとおりです。
Tiny App 電卓
Tiny App 電卓は、2016年6月にリリースされました。細かい設定項目などはなく、シンプルなアプリです。
画像でも見てわかるとおり、シンプルな感じのアプリです。
普通の電卓に近い、5列のボタン配置です。ただし、iPhoneだとボタンが小さく感じます。レイアウトとして、広告枠が上部に大きいのが気になります。
また、入力時の効果音を消せないのは、仕事で使うには少し気になります。消費税の計算ができないことや、定数計算(計算が終わった後に、先ほどの計算に使用した1つの数字を固定化して、次の計算で利用する方法)ができないのも、使う人によっては不満の残るところでしょう。
さらに高性能な条件で探しました
実際の経理仕様の電卓は、もっと高機能を備えています。その機能と同等なレベルの電卓アプリを探しました。
前述の最低条件の上に、さらに求める条件は次のとおりです。
- 数字に「00」があること
- GT(グランドトータル機能)があること
- 小数点の桁数設定ができること
- 端数の四捨五入・切り上げ・切り捨ての設定ができること
私が探した範囲では、次の4つのアプリがこの高い条件を満たしました。
AddCalc
AddCalcは、経理用電卓アプリとしては古株です。サブ電卓としての使用者も多いのではないかと思います。
AddCalcは、ボタンの配置が4列です。メモリー機能は下に配置されています。特徴は、加算器方式(+と=ボタンがひとつになっているもの)と一般方式の計算の切り替えが可能なことです。この機能を備えているのは、このアプリが唯一です。
その他の特徴は、計算の読み上げ機能をもっています。計算結果のログをコピー、出力できるのも、この記事で採り上げた中ではこのアプリだけでした。
気になる点は、定数計算ができない(?)点と、消費税の計算ができないことぐらいでしょうか。消費税の計算ができないのは、ボタン配置の都合でしょう。広告を解除できる有料版は240円です。
実務電卓C
実務電卓Cは、2016年6月リリースされた高機能電卓アプリです。
実務電卓Cは、ボタンの配置が5列です。カシオの電卓を意識した仕様で、「=」ボタンが一番右下にないのは、好みが分かれるところでしょう。
定数計算もきちんとできるようになっており、計算方法もカシオ仕様です。(※数字を1回入力後に四則演算の記号を2回押すと、定数計算モードに入る)
なお、設定画面を表示すると、3回に1回の頻度で全面広告が表示されます。広告解除は120円です。
このアプリは、新規のリリース段階から高機能を備えてきました。AddCalcの有力な対抗馬になりそうな予感です。
う電卓
う電卓は、2016年1月にリリースされた電卓アプリです。
う電卓は、ボタンの配置が4列です。広告表示がない電卓アプリに限ると、試した中でもっとも有能でした。
無料版では、「消費税計算・チップ計算」「割り勘」の機能に使用時間帯の制限があります。解除するには120円です。
消費税計算は「税抜計算」ができません。また、定数計算もできません。バージョンアップ(v1.4.5)により、消費税計算および定数計算が分かりやすく計算できるようになりました。(参考:一往確認日記(作者さんのブログ)、2016年12月21日)
経理電卓Lite
経理電卓Liteは、2013年5月にリリースされた電卓アプリです。
紹介したアプリの中では唯一、画面の縦横表示に対応しています。縦表示の場合のボタン配置は5列です。
最終アップデートが2014年2月で止まっているため、アプリ使用開始時の消費税率が5%になっていました。約2年半も更新がないことを考えると、今後の機能向上は期待できないかもしれません。
定数計算に対応しており、入力方法はWindowsの電卓と同じ仕様です。(※計算する2つの数字のうち、後の数字を定数とする)
縦表示の場合、広告枠が一番下にあって「=」ボタンを押すのに緊張を感じたり、入力時の効果音を消せないなど、気になる点もあります。広告表示を消せる有料版のProバージョンは240円です。
まとめ
以上、経理向けの本当に使える電卓アプリをiOS向けで探しました。数多くある電卓アプリのうち、メモリー機能があるなど最低条件を満たしたのは1アプリ、さらに高機能な経理向けの条件を満たしたのは4アプリでした。
どうしても無料で高機能なものを使いたいならば、広告表示がなく不満の少ない「う電卓」がおすすめです。
有料での使用を前提とすれば、「AddCalc」か「実務電卓C」のどちらか、という感じがします。電卓アプリは補助の用途が想定されますので、高すぎる要求は無理な気もしますね。