2016年6月にリリースされた新しいクラウド型税務ソフト「全力法人税」を紹介します。
説明のポイント
- 税理士が制作するクラウド型の法人税申告書作成ソフト
- 小規模企業向けに特化し、複雑な機能を持たないシンプルなつくり
新しいクラウド型の法人税ソフト
2016年6月、新しい税務ソフトが登場しました。その名も「全力法人税」です。
このソフトを制作するのはジャパンネクス株式会社という会社で、代表者は税理士の方です。
ソフトの特徴
「全力法人税」の特徴は、次のとおりです。
- 小規模企業に特化したシンプルな機能
- クラウド型でインストールは不要。WindowsとMacに両対応
- 初期登録はメールアドレスとパスワードだけ。無料で試用できるが、帳票の印刷ができない
- 標準利用料金は初年度19,800円(税抜)、2年目以降10,000円(税抜)
どんな会社に向いているのか?
このソフトのターゲットは、次のような小規模の株式会社です。
- 売上高は2,000~3,000万円ぐらいまで
- 支店はなく、本店のみの店舗・事務所
- 社長ひとりだけの会社で、事業拡大の意向はない
- 設立1期~2期目など、消費税の納税義務はない
作成できる帳票
作成できる帳票は次のとおりです。
参照:対応書類一覧(ジャパンネクス)
- 法人税申告書別表1(1)、2、4、5(1)(2)、7(1)、14、15、16(1)(2)(6)(7)(8)
- 摘要額明細書
- 事業概況説明書
-
勘定科目内訳明細書1、2、3、4、5、8、9、11、14、15、16
- 固定資産台帳
- 道府県民税申告書6号様式(東京都、その他)、6号様式別表4の3(均等割計算明細書)、6号様式別表9(欠損金額)
- 市町村民税申告書20号様式
これらの意味を一言で説明すると、小規模な企業が提出すべき帳票は網羅できているといえます。
また、他の法人税申告書作成ソフトでは別売りの場合もある、事業概況説明書や勘定科目内訳明細書も作成できます。
その一方で、効果の薄いものや、使う頻度の低い機能は削られています。例えば、所得税額控除ができない点は、シンプルさを優先した象徴といえます。
どのような使い方をするソフトか?
このソフトは、法人税・地方税(法人事業税・法人住民税)の申告書の作成を目的としています。
まず自分の利用している会計ソフトで、決算書を作成します。その決算書は、法人税等の最終的な仕訳を行う直前まで仕上げます。(※最終的な仕訳は、このソフトから指示があります)。
freee、MFクラウド会計、弥生会計を利用している場合は、会計データと固定資産データを税務ソフトに読み込むことができます。読み込んだデータは、法人税別表、勘定科目内訳明細書、事業概況説明書に反映できます。
上記以外の会計ソフトを使用している場合は、弥生会計の形式に出力できるか検討します。データの読込ができない場合は、項目や数字を手入力します。
入力が終わったら帳票を印刷して、税務署と各自治体の役所に郵送すれば、申告は完了です。
留意点
- 消費税の申告書は別に作成する必要があります。freeeと弥生会計は、会計ソフト内部で消費税申告書を作成できます。MFクラウド会計は、消費税申告書の作成機能を持っていません。
- e-taxに非対応で電子申告はできません。
登録するまでの流れ
全力法人税のアカウントを作成するまでの流れを紹介します。
アカウントの作成は無料です。まずは下記のサイトにアクセスします。
サイト:全力法人税(ジャパンネクス)
▲画面右上の「無料アカウント登録」を選択します。
▲登録するメールアドレスを入力し、「送信」を押します。
▲画面に、確認用のメールが送信されたと表示されます。
▲メールソフトから承認の手続きを行います。Gmailだと「迷惑メール」に振り分けられるかもしれません。
▲登録したメールを入力し、任意のパスワードを入力します。
▲「全力法人税」のプランを選択します。
▲登録が完了し、「全力法人税」のトップページに移動しました。
この後、メニュー画面から会社情報などを登録します。設定項目も少ないので、操作に迷うことはほとんどないでしょう。
使用中の画面
使用中の画面を、いくつかキャプチャしました。
▲法人税申告書の別表4。税金計算のもとになる所得調整をここで行います。ここだけ見ると難しそうですが、他の画面で入力した数字が転送されますので、不安はありません。
▲法人税申告書別表5(1)。重要な別表ですが、このソフトではほとんど気にすることはないでしょう。
▲勘定科目内訳明細書の入力画面。手入力できますが、会計ソフトで補助科目を設定していれば、取引先名や金額のインポートが可能です。
▲税額計算が終わると、会計ソフトに入力する最終の仕訳が指示されます。
▲帳票の印刷画面。ここまでは無料で使えますが、帳票の印刷(PDF出力)からは有料です。使用感に納得したら料金を払えばよいでしょう。
使ってみた感想
税理士としての感想ですが、よくできているソフトと評価できます。めずらしいクラウド型の税務ソフトですが、動作に不快感もなく、操作に迷うこともほとんどありませんでした。
これ以上シンプルにするのが難しいくらい、絞り込まれた機能になっています。
小規模な企業の税金計算は複雑ではなく、毎年の税制改正に影響されることも少ないので、有名ソフト会社の作ったソフトではないとしても、使用の不安は少ないでしょう。
いわゆる「業界の事情」により、有名ソフト会社がこのような機能のソフトを作ることは期待できません。使い勝手のよい税務ソフトを作ったジャパンネクスさんには、拍手を送りたいです。
自力で申告できる税務ソフト
税理士に頼らずとも、自力で申告できる可能性を強く秘めている税務ソフトといえます。
- 売上高が2,000~3,000万円ぐらいまで
- 社長ひとりだけの会社で、事業拡大の意向はない
- 設立1期~2期目など、消費税の納税義務はない
という会社であれば、この税務ソフトを利用して申告するのは差し支えないと考えます。なぜなら、会計処理や税務申告に多少のミスが含まれていたとしても、一大事になるようなことは少ないからです。
また、このソフトの初年度利用料は2万円程度(標準料金の場合)で、法人税申告書のほか、勘定科目内訳明細書も作成できます。費用を安く抑えたい企業には助かるでしょう。ソフトはよくできており、初心者にもやさしいつくりです。
自力で申告する場合の注意点
しかし、注意点も認識しておく必要があります。
もし間違った申告をすると、手直しのために修正申告が必要になる場合もあります。今は安く済んだとしても、のちのち税理士に頼んだ場合は、独力で申告した部分の修正のため、追加で報酬が請求される可能性もあります。事業拡大を目指している場合は、先のこともふまえて考えた方がよいでしょう。
とりあえずの方法ですが、申告書の作成方法だけを税理士からアドバイスを仰ぐ方法もあるでしょう。
これなら料金的な負担を抑えられます。ただし、税理士は内容に責任を負わないことから、税理士欄に署名はされません。
まとめ
クラウド型の法人税申告書作成ソフト「全力法人税」を紹介しました。
クラウド型の会計ソフトと組み合わせることで、自力申告の時代がさらに近づいたといえるかもしれません。
サイト:全力法人税(ジャパンネクス)