「法人認証基盤」で激変する実務 税・社会保険の手続きはオンラインが標準に

日経が先日報じた、税と社会保険の手続きにおいて電子署名を不要とする、という報道は驚きでした。インパクトのある内容と考えますので、そのもとになった資料から情報を確認します。

説明のポイント

  • 税・社会保険・補助金の手続きは、オンラインを標準化
  • 事業主は付与されたIDを利用し、オンラインだけで申請を完結できる
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税と社会保険の実務が変化する

先日、日経が報じた内容(1月29日)は衝撃でした。

その内容とは、これまで税と社会保険のオンライン手続きにおいて、電子署名が必要だったものを省略し、それに変わるものとして一律に申請用のID・パスワードを無料で交付する、というものでした。

税や社会保険の実務に与える変化としては、近年においても、相当に大きいものになるでしょう。

これは非常に重要な変化であると考え、報道のもとになった資料をきちんと読んでみることにしました。

その内容を、この記事でまとめておきます。

もとの資料はなにか?

日経が報じた内容のもととなっているのは、内閣府の規制改革推進会議の行政手続部会などのようです。

この会議で配布された資料を読むと、日経の報じているとおりであることが確認できます。

参考規制改革推進会議 第6回行政手続部会(内閣府、2018年1月31日)

そして、規制改革推進会議の資料の引用元になっているのは、首相官邸での「中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議」となっています。

参考第2回中小企業・小規模事業者の活力向上のための関係省庁連絡会議(首相官邸、2018年1月11日)

どのように実務は変化するか?

これらの会議で配布された資料をもとに、中小企業の実務がどのように変化するのかを詳しく読んでみましょう。

1.税・社会保険の手続きで電子署名を極力省略

  • ID/パスワード等による「法人認証基盤」を構築し、従来の電子署名は極力省略を目指す
  • 個人事業主にもID付与の方向
  • 社会保険手続における従業員の押印又は署名についても、順次不要とする
  • 3年間で中小企業・小規模事業者約100万社へのITツール導入の支援を行う

まず、新たに「法人認証基盤」というシステムをつくり、従来の電子署名に変わる本人確認用のインフラを整備するとのことです。

現行で法人に利用されている電子証明書は、年間の利用コストが7,900円かかるうえに、オンラインで取得できないという問題があり、中小企業におけるオンライン申請の普及の妨げとなっていました。(取得方法の参考:SmartHR副島氏による記事(2017年8月))

 

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それが、この「法人認証基盤」において、すべての法人や個人事業主にIDとパスワードを付与することで、問題を解決する方針です。

導入次期は、平成32年度から本格導入予定とされています。そのための業務の洗い出しが、各省庁において開始される予定です。

「法人認証基盤」で利用するIDは、すでに法人に付与されている「法人番号」を使用します。また、個人事業主へのID付与についても、要検討とされています。

個人事業主にもIDの付与を検討する点は、日経の報道では省略されていたので、ここも重要なポイントでしょう。(税理士会などが要望しているとおり、個人事業主にも法人番号が付与されるかもしれません)

この「法人認証基盤」ができることで、各種の手続きにおいて、電子署名は極力省略されます。そして、電子署名が必要な手続きは、本当に必要なものに限定されるとのことです。

このほか、社会保険の手続きにおいて、従業員の押印を求めていた各種手続きについても、廃止・簡素化するとのことです。

また、「ITツール導入の支援」が含まれていますが、これは経済産業省・中小企業庁がすでに実施している「IT導入補助金」のことでしょうか。(ここに含めた意図は不明ですが、予算確保のため?)

2.補助金・助成金申請手続きの簡素化

  • 平成30年度から、主要な中小企業向け補助金から補助金申請システムを構築し、実証。
  • 紙での申請、窓口での申請を不要とする
  • 申請書の記入の簡略化(企業の基本情報(法人基本情報、財務情報等)は、何度も記入しなくてよい)

補助金の申請というと、紙の用紙に必要事項を記入し、添付書類をたくさんつけて、窓口で提出する、といった手続きが当然とされていました。

この手続きにおいても、簡素化・オンライン化が実施される予定です。

厚生労働省が実施する助成金についても、この「中小企業向け補助金申請システム」に統合される予定となっています。

3.従業員等に関する手続きの簡素化

  • 社会保険(厚生年金、健康保険、労働保険)の従業員に関する手続きの簡便化
  • 行政機関への提出書類に含まれる情報について、重複提供を不要とする仕組みの整備

従業員に関する社会保険の手続きについて、マイナンバーによる手続きを基本とします。

行政においては、基礎年金番号とマイナンバーのひもづけを実施します。これにより、住所変更届、氏名変更届を省略する方針です。

事業主においては、基礎年金番号(年金手帳)の収集は不要となり、マイナンバーでの管理に一本化できます。

また、上記1でも述べたとおり、オンラインでの申請が本格化しますので、年金機構やハローワークにおいても、年金や雇用保険の申請システムの改修が検討されています。

これらの改修により、年金とハローワークの手続きについても、これまで分断されていた申請が一本化される予定となっています。

【参考】オンライン申請システムの分断がわかる図

企業を取り巻くオンラインの行政システムが、どのように分断されているかは、下記の図がわかりやすいです。

これは法人設立に関するオンライン申請を表した図であり、おもむきは若干異なりますが、理解の参考になるため、掲載しておきます。

法人設立手続きに関するオンライン申請システム

出典法人設立手続オンライン・ワンストップ化検討会(第3回)配布資料(首相官邸、2017年10月)

まとめ

日経が報じた情報をもとに、そのもとになった会議資料を読み、情報をまとめました。

とくに、平成30年から構築がはじまる「法人認証基盤」は、オンライン申請のポータル的な位置づけとなるようです。

役所によって分断されていた各種の手続きは一本化され、オンラインでの申請が当たり前となっていくでしょう。

こうした情報は、中小企業の実務において非常に重要であると考えます。当ブログにおいても、情報を引き続きキャッチアップしていきます。