2022年12月からスタートした、国税庁の「スマホアプリ納付」。手続きの方法などは公式ページなどでも解説されています。
この記事では、税理士事務所の実務としての視点から、スマホアプリ納付について気づいた点を述べてみます。
説明のポイント
- 個人は納付手段が増えて便利だが、納付金額30万円の上限あり
- 法人では、税額の上限もあるため優先順位としては低い
スマホアプリ納付とは
「スマホアプリ納付」は、国税を納付するときに、スマホアプリの「○○ペイ」を使って、納付することができるしくみです。2022年12月から始まりました。
当然ですが、国税だけの対応ですので、地方税は非対応です。
このスマホアプリ納付については、国税庁や政府広報などでもすでに詳しい説明がなされており、メリットの説明、マニュアル、Q&Aなどもそろっています。
- [手続名]スマホアプリ納付の手続(国税庁)
- 国税の支払いがスマホ決済に対応!メリットと使い方は?!(政府広報)
このブログで解説記事を書くほどではないのですが、税理士事務所として気づいた点を整理します。
e-Tax申告後にどうするか?
ここからの説明の時点は、e-Taxで申告が終わったあとで、メッセージボックスから受信通知を参照している場面です。
この受信通知では任意の納税方法を選ぶことができます。
既存の「ダイレクト納付」「インターネットバンキング納付」「クレジットカード納付」「コンビニ納付(QRコード)」のほかに、「スマホアプリ納付」が追加されていることがわかります。
今回は納付額が30万円以下だったので「スマホアプリ納付」が表示されていますが、もし納付額が30万円を超える場合は、この納付方法は表示されないものと思われます。
なお、この受信通知は、納税者側のメッセージボックスから見たものです。
税理士側のメッセージボックスに届いている「納付情報登録依頼」には、この「スマホアプリ納付」のボタンは表示されていません。
税理士事務所側のメッセージボックスでもQRコードが共有されると、納付方法の受け渡しが簡便になるのに……と思いました。
もし納税者側のID・パスワードを税理士側で管理している場合は、税理士が納税者側のメッセージボックスも確認できるので、支障はないと思われます。
「QRコードで納付」は2種類ある
話を続けます。
受信通知で「スマホアプリ納付」のボタンを押すと、QRコードが表示されます。税理士事務所でQRコード付きのPDFを作成し、納税者側に渡す対応などが考えられます。
少し気になったのは、このような「QRコード」を使うのは、すでに利用されている「コンビニ納付(QRコード)」もあるので、微妙にややこしく感じる点です。
「コンビニ納付(QRコード)」の場合は、QRコードをコンビニのキオスク端末で操作して、納付書を発行する方式なので、「スマホアプリ納付」と間違えることはないでしょう。しかし、説明を省略しすぎて「QRコードで納付してください」というあいまいな伝え方をすると、誤解を招く恐れがあるかもしれません。
納付後に届く通知
スマホアプリ納付で納付を完了すると、e-Taxのメッセージボックスに通知が届きます。
また、納付手続のときにメールアドレスを入力した場合は、そのメールアドレスにも納付完了通知が届きます。
納税者自身でQRコードを作成する場合は?
ここまで紹介したのは、税理士の視点で、申告データをもとにQRコードを納税者側に共有する場合(または納税者側でメッセージボックスにログインしスマホアプリ納付を選択する場合)の想定です。
この発行されたQRコードによって、電子申告した納付情報がそのまま引き継がれることで、納付手続の記入負担が軽減されます。(あとはメールアドレスの入力のみでよい)
では、QRコードを共有せずに、納税者側で直接「スマホアプリ納付」のサイトにアクセスした場合はどうでしょうか。
納付情報の作成は必ずしも1つに限定すべきとはされていませんので、電子申告時に自動作成された納付情報によらずとも、納税者側で新たに「スマホアプリ納付」で納付情報を記入し、納付することも問題ないものと思われます。
ただし、納付額や年度など記入の手間が増えますので、少しややこしいことになります。
なお、源泉所得税の納付手続きは、
所得税徴収高計算書の提出が必要となる「源泉所得税及び復興特別所得税」の納付については、e-Tax(国税電子申告・納税システム)において、所得税徴収高計算書データを送信した後、メッセージボックスに格納される受信通知から「国税スマートフォン決済専用サイト」へアクセスする方法により、納付が可能です。(国税庁「スマホアプリ納付のQ&A」Q1-1)
と書かれているため、納税者側が直接「スマホアプリ納付」のサイトにアクセスして納付することはできません。
まず、e-Taxで徴収高計算書を送信し、その受信通知を経由して「スマホアプリ納付」に飛ぶ必要があります。これは、既存のクレジットカード納付でも同様です。
他の納付手段と比較してどうか?
すでに用意されている納付手段と比べてみると、「クレジットカード納付」は納付手数料がかかることに比べて、スマホアプリ納付では手数料は不要なのがメリットです。
「コンビニ納付(QRコード)」との比較では、納税者の外出が不要になるのがメリットといえます。ただし、「コンビニ納付(QRコード)」は誰でも現金で納付できることに比べて、「スマホアプリ納付」は、スマホアプリを使っていないと利用できませんし、残高にチャージも必要です。
法人の実務では、法人口座から出金したほうがわかりやすいことや、納付額の上限があるため、「ダイレクト納付」や「インターネットバンキング納付」を優先して使うことが多いでしょう。スマホアプリ納付だと、経費精算の手間が生じます。
以前の記事で紹介したことがありますが、国税庁が勧めるキャッシュレス納付など、納付手段の多様化の方針のなかで、「クレジットカード納付」や「コンビニ納付(QRコード)」の利用者が少しずつ増えています。
引用:国税庁「令和3年度における e-Tax の利用状況等について」
スマホアプリ納付は、「クレジットカード納付」や「コンビニ納付(QRコード)」に類似する納付方法のひとつであり、同じように活用されていくものと推測されます。
まとめ
2022年12月から始まった、国税のスマホアプリ納付について、税理士の視点で気づいた点を整理しました。
スマホアプリ納付は、クレジットカード納付とは異なり手数料がかからないことに加えて、納付でポイントが付くアプリもあるため、個人向けの納付方法のひとつとして活用されそうです。
なお、納付方法が多彩になったことで、コンビニ納付の方法が2種類(QRコード方式、バーコード方式)と、QRコードを使う方法として「コンビニ納付」と「スマホアプリ納付」が存在することになりました。
微妙にややこしいことになっていますので、他の人に説明するときは、少し慎重にしたほうがよいでしょう。
なお、楽天ペイはこの記事執筆時点では対応していませんが、今後対応予定という報道も見られます。(楽天ペイ、「国税も地方税支払いも対応予定」ITmedia、2022年10月)