e-Taxの利用者が増えているそうですが、これにともなって、e-Tax送信にまつわるトラブルも増えているようです。
国税不服審判所の非公開裁決の検索結果をもとに、どんな事例が生じているのかを見てみます。
以前に紹介した記事(過去のおさらい)
当ブログでは、e-Taxの送信後には「受信通知」も必ず確認する必要性をお伝えする記事を2020年に書きました。
また、先日には、利用者識別番号を間違うと、正しい申告として扱われない危険性についてお知らせする記事を書きました。
最近のe-Tax関係のトラブル事例
ブログ筆者は2020年に書いた記事の末尾で、e-Taxの利用が増えるに従って、トラブルも増える可能性があると書きましたが、実際にそのような傾向があることがうかがえます。
国税不服審判所の裁決事例検索にて、e-Taxにまつわるトラブルを探してみました。いずれも非公開裁決で、争点は無申告加算税が課されない「正当な理由があると認められる場合」(国税通則法66条①ただし書)に該当するかです。
平28. 1.26 関裁(所)平27-27
e-Taxの「納付情報登録依頼」により納税情報を作成したものが、申告データを送信したものと誤解した事例です。
「納付情報登録依頼」で作成した場合の受信通知には、「※この手続きは、申告データの送信ではありません」という断り書きがありますが、よく読んでいなかったようです。
「納付情報登録依頼」の納付データは、申告の有無によらず作成することが可能です。不慣れな納税者が、申告と納付の手続きの違いをよく理解できていなかった事例といえるでしょう。
令元. 7.29 大裁(諸)令元-7
消費税申告のe-Tax送信で、「終了」という表示画面に到達したことが、申告完了だと誤認した、という事例です。
どうしてそのような「終了」の画面に至ったのかはわかりませんが、裁決要旨を読むと「通常の操作による画面遷移であって、飽くまでも、請求人自身による操作誤りに起因する事実の誤認という主観的な事情が原因」とされています。
納税者が保存している申告書等送信票に「受付日時」や「受付番号」も記載されていないので、申告したものとして扱われていません。
令4.10.12 東裁(所)令4-29
納税者が「送信」ボタンを押したが、それでも送信されてないのは通信トラブルが原因と主張したものの、認められなかった事例です。
要旨では、「e-Taxには、申告データが正常に受信されないといったシステム上の障害は生じておらず、申告データがe-Taxにおいて正常に受信される状況にあったと認められる」とされており、納税者の主張は認められていません。
令5. 6.14 大裁(諸)令4-65
今度は、実際に一時期にe-Taxの障害が生じていた場合にどうなるか、という事例です。送信できていないことの理由に実際に生じたシステム障害を理由にあげても、認められていません。
その理由として、e-Taxの障害が起こった期間が3/14~3/15だとしても、消費税の申告期限は3/31であることや、「仮に、請求人が、障害が発生していた期間に、申告データを送信していたとしても、正常に受信されたか否かについて、e-Taxにおけるメッセージボックスの受付結果から確認することができる」として一蹴されています。
まとめ
e-Taxにまつわるトラブルについて、国税不服審判所の裁決事例から要旨検索システムで確認した内容を整理しました。
ブログの執筆時点で、税理士向けの税務データベース「TAINS」に、上記の非公開裁決は未収録でした。筆者も、これらの非公開裁決を情報公開請求して内容まで詳しくチェックしたわけではないことにご注意ください。
このような裁決事例があるのは、実際に審判所で審理された結果ですから、トラブル事例としては氷山の一角といえるでしょう。
これらのトラブル事例に共通していえるのは、メッセージボックスの「受信通知」をよく確認すれば、申告できていないことに気づけた内容ばかりです。
受信通知ではなくても、確定申告等作成コーナーでは申告完了後に申告書等送信票が交付されますが、この送信票に「受付日時」欄及び「受付番号」があることでも確認できます。
ただし、申告の経験が乏しい納税者は、e-Taxの利用にあたって、そのような確認の方法がよくわかっていない、という可能性もありそうです。
e-Taxのシステムでは、申告や納税の状況を一覧で示すような確認画面があってもよいように思われます。