国税のコンビニ納付(QRコード納税)は、どれぐらい使えそうか?

2019年1月から新しく始まるという、QRコードを使った国税のコンビニ納付について、どれぐらいの活用が見込めそうなのか? わかっている情報をもとに整理します。

説明のポイント

  • コンビニに設置されたマルチメディア端末を利用する
  • 実務に与える影響は少ないと考えられる
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QRコードによる納税とは

国税(所得税や消費税)を納税する方法は、いくつかあります。一般的なものは、紙の納付書を記入して、これをもって銀行や税務署で納付する、という方法です。

納付書とは、下記のような画像のものをいいます。この納付書に自分で金額を記入して、納付するということです。

納付書ブランク

しかし、自分で納付書に金額を記入したり、銀行の窓口に行くのは、なにかと苦労が生じます。

そこで、もっとハードルの低い納税方法として、「QRコードを自分で印字し、コンビニで納付できる」という新方式が、2019年1月から提供される予定です。

コンビニで納付って、めずらしくないけど?

コンビニで納税という方法は、別にめずらしいものではないでしょう。

なぜなら、個人が納付する地方税(住民税や固定資産税)や国民健康保険料では、こうした納付がすでに実現している自治体も多いからです。

また、国民年金保険料の納付でも、コンビニ納付を利用している人は多いでしょう。

ではなぜ、国税(所得税や消費税)では、コンビニ納付のイメージがとぼしいのでしょうか?

その疑問について答えると、それは「自分で納税額を計算して、自分で納付する」というスタイルだからです。つまり、国税では、自分で納付書に納付額を記入することが多いわけです。

一方、コンビニ納付ができるものは、「納付額はこうなってるから、あとで払ってね!」という、決められた金額を払う方式です。納付書にバーコードが書いてあるので、それを読み取るだけでOKです。

こうしてみると、国税のコンビニ納付に対応するためには、

  • 税務署側で何の申告であるかと、その納税額を認識させるため、税務署側にあらかじめ申告データを送信しておく必要がある
  • その申告に対応する納付用コード(QRコード)も自分で用意する必要がある

ということがわかります。

利便性はどのように向上するか?【2018年11月改訂】

「コンビニ納付(QRコード)」に関する国税庁の発表によれば、QRコードの納付が使えるのは、

  • 「確定申告書等作成コーナー」を利用する
  • 「国税庁ホームページのコンビニ納付用QRコード作成専用画面」を利用する(スマホも対応)

とされています。

また、そのQRコードは、そのままレジで直接読み取るのではなく、

  • マルチメディア端末(セブンイレブンのコピー機や、ファミマ・ローソンのチケット発行機)でQRコードを読み取る
  • そこで発行された納付書を持って、レジで納付する

とのことです。

個人事業主の場合

個人の確定申告では、コンビニ納付以外の納税方法として、次の方法が用意されています。

  • 専用の納付書を記入して、税務署や銀行に持っていく
  • 口座振替
  • クレジットカード納付
  • オンラインバンキングからのペイジー納付
  • ダイレクト納付(要事前登録)

よく利用されているのは口座振替でしょう。

また、電子申告を利用している方であれば、オンラインバンキングを利用している可能性も高いでしょう。ペイジーを利用すれば外出せずに納税できるので、コンビニ納付を使うメリットはありません。

ではQRコードによるコンビニ納付が使えるのは、どんな場合でしょうか?

メリットが感じられるのは、書面提出の場合でしょう。これまで税務署などで納付書を取り寄せていた場合は、コンビニ納付による納付も選択肢のひとつに入ります。

会計事務所に申告を依頼している個人事業主の場合は、会計事務所が電子申告をするものの、その納付は納付書であるケースもあるため、この点で改善が見込める可能性もあります。

ただし、オンラインバンキングを利用していない人が、わざわざコンビニのマルチメディア端末を操作して納税することを想像するのは難しいでしょう。

また、納税額の上限は30万円とされています。コンビニで大金を扱うことの心理的抵抗もありますので、金融機関のほうが安心だというひとも多いはずです。

法人の場合

法人の場合ですが、納付額の上限は30万円であるうえに、通常の源泉所得税の納付には対応していないことを考えると、QRコードによるコンビニ納付が始まっても、会計事務所や法人の業務効率に貢献するとは考えづらいでしょう。

また、会計事務所の関与がある場合は、「ダイレクト納付」という納付方式を推進しています。この納付方式であればオンラインバンキングを使っていない場合でも利用できるうえに、会計事務所側から納付の操作ができるため、利便性の高さが好まれています。

これらを考えると、コンビニ納付を法人業務で使うメリットはとぼしいといえます。

もしメリットを見出すとすれば、QRコードの納付書を会計事務所が作成したあと、そのPDFをネットで送信して、関与先法人に渡せる点があげられるでしょう。紙の納付書の郵送に比べると、利便性は高まります。

真のメリットはどこにあるのか?【2018年11月追加】

ここまで紹介したとおり、QRコードを利用したコンビニ納付は、あまり活用方法を見出すことが難しいものです。

納税額の上限が30万円ということもあります。これらを考えていくと、この納税を利用する層は次のようなひとでしょう。

  • 給与所得は年末調整を受けているサラリーマン
  • 副業をしており、雑所得がある
  • 源泉徴収されていない雑所得のため、申告により納税が生じる
  • 電子申告はしておらず、確定申告書は書面で提出する(=電子納税ができない)
  • クレジットカードをもっていない(=クレジットカード納税ができない)

こうしてみると、副業時代に対応した新しい納税方法と見ることもできるでしょう。

スマホ申告に対応した納税方法か?【2018年11月追加】

コンビニ納付は、納付用のQRコードをスマートフォンで作成することができます。

この点を考えると、スマートフォンで確定申告書を作成している場合に、利便性が高い方法といえます。

副業の雑所得がある場合はスマートフォンでも確定申告書の作成はむずかしくありません。(ただし本格的に決算書を作成する場合は、パソコンを利用したほうが早いでしょう)

こうして情報を整理していくと、コンビニ納付は「副業+スマホ」という点からのメリットがあると感じられます。

セブンイレブンは対応するのか?【2018年11月改訂】

2017年12月に発表された平成30年度与党税制改正大綱の内容を受けて、日本経済新聞の報道(2018年1月8日)が報じたところでは、

納税者が電子申告するとその税額や、所得税や法人税といった税目などのデータを記録したQRコードがPDFとして表示される。利用者がスマホ画面などに表示されたQRコードをコンビニの読み取り端末にかざすと、税目や税額が印字された書類が発行され、レジで税金を納めることができる。

納税は現金で、全ての税目が対象となる。読み取り端末はセブンイレブンの「マルチコピー機」やファミリーマートの「Famiポート」、ローソンの「Loppi」などを想定する。

という詳細が明らかにされていました。記事中には「セブンイレブンのマルチコピー機」と書かれています。

また、2018年4月に、国税庁からの随意契約に関する公示にて、

QRコードを利用したコンビニエンスストアにおける国税の納付受託業務 のべ5,027,000件

4 随意契約を予定している相手方の名称
  株式会社イーコンテクスト
  株式会社セブン-イレブン・ジャパン

という内容が明らかにされています。

QRコード納付が始まる2019年1月においては、セブンイレブンではQRコード納付は利用できませんが、いずれ利用できるようになるものとも予想されます。

まとめ

QRコードによる国税のコンビニ納税について、その情報を検討しました。

この記事の初出時、2018年9月現在の情報で内容を検討していました。その後国税庁の公式発表に対応するよう、2018年11月に情報を改定しました。

これらの検討の結果では、実務に与える影響はあまりないという印象です。

マルチメディア端末でQRコードを読み取ってから、その後でレジで納付するというのも煩雑さを感じます。また、納税額が30万円を限度としている点も気になります。

こうしてみるとメリットを感じる層は、

  • 副業による納税が生じる
  • スマートフォンを活用している

などの場合が考えられるでしょう。

2018年9月の記事初出時、日経新聞の報道をもとに電子申告で利用する方法と記載していました。その知識は古いものですのでご注意ください。

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