個人事業主の青色申告、メリットはあまり実感されていない可能性あり

個人事業主による確定申告では、その多くが青色申告となっていることでしょう。しかし、青色申告によるメリットに注目すると、事業主にはすべてのメリットが実感されていない可能性もありそうです。

説明のポイント

  • 中小企業庁実施の個人事業主向けのアンケート調査結果でわかった内容
  • 個人事業主における税制措置と、その認識具合について調査されており、青色申告におけるメリットについての認識が調査されている
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青色申告のメリットとその認識について

先月(2019年5月)、経済産業省のホームページで公表されたアンケート調査結果に、「平成30年度中小企業関係租税特別措置の効果に関する調査研究報告書」(東京商工リサーチ、2019年3月)というものがあります。

調査を実施したのは中小企業庁で、委託先の調査会社は東京商工リサーチです。調査の回答時期は、2018年7月です。

この調査結果を見ると、個人事業主における青色申告の割合は非常に高いものの、実際にその中身を見ると、メリットについてはあまり実感されていないらしいことがうかがえます。

アンケート調査結果をいくつか拾ってみてみましょう。

まず、調査対象となった個人事業主における青色申告の割合は、93.2%と非常に高い割合になっています。

面倒なアンケートの調査に答えるくらいの真面目な事業主ですから、青色申告の割合が実際よりも高めになっている可能性もありそうです。

ところが、この青色申告についてのメリットを見てみると、意外と冷淡な回答となっています。

青色申告特別控除といえば、個人事業主が受けられる青色申告のメリットの目玉のひとつです。

ところが、アンケート調査結果によると、この制度がなかった場合でも「影響はない」と答えた個人事業主の割合は41.4%と、じつに4割近くにのぼっていました。

65万円控除ぐらいでは、べつに大騒ぎするほどでもない、ということでしょうか……?

または、65万円控除の効果が実感されていない可能性もあります。「税金の負担額が増える」という、生々しい聞き方をすれば結果は違ったかもしれません。

ちなみに、青色申告のことがわかっていない事業者だからそんな回答をしたのでは……という疑念もめばえるところです。

しかし、青色申告特別控除を「利用したことがある」と答えた事業主が回答していることがうかがえます。

次に、ほかの青色申告の特典である「少額減価償却資産の特例」について注目してみましょう。

この制度は、1つあたりの取得価格が30万円未満の固定資産を取得した場合に、即時償却できる減価償却の特例です。

この特例について調査したところ、「わからない」と答えた割合は33.4%でした。

つまり、青色申告をしているにもかかわらず、個人事業主の3人に1人は、この制度を知らないことになります。

「まあ、個人事業主になりたての人に聞いても、減価償却の特例とか、青色申告のことなんて知らないのでは?」と思われるかもしれません。

しかし、この調査における回答者の年齢を見ると、50代以上と答えた割合が87%を占めます。年齢的にはみなさんベテランです。

筆者の感想

これらのアンケート調査結果を見て筆者が気になったのは、少額減価償却資産の特例における知名度の低さです。

期限が近づくたびに延長はされるものの、この制度は恒久化されていない期限のある特別措置です。

さらに償却資産税との取扱いもチグハグなままとなっており、微妙な取扱いとなっています。(※法人税・所得税では即時償却されるが、償却資産としては即時償却されず、固定資産台帳には載せる必要がある)

中小企業・個人事業主は「30万円以内なら経費だよね」とシンプルにいえる税制が理想と考えます。

また、青色申告特別控除についても、意外に冷淡な反応であることが気になりました。

2020年分(令和2年分)の申告からは、控除額が55万円に引き下げられますが、電子申告をすればインセンティブとしていままでどおり65万円の控除額が維持されます。

しかし、この冷淡な反応を見ると、この電子申告のインセンティブにどこまでの効果があるのかは気になるところです。

ちなみに「何にメリットを感じて青色申告をしているのか?」という調査はありませんでした。

ここから先は筆者の想像ですが、控除額が一律の青色申告特別控除よりも、必要経費として配偶者に給与を支給できる青色事業専従者給与のほうが、実際のメリットとして認識されている可能性もあります。

青色事業専従者給与についての調査はありませんでしたので、あくまで想像にとどまります。

まとめ

ここで紹介した内容を振り返ってみると、

  • アンケートに答えてくれるような真面目な個人事業主なのに、
  • 青色申告特別控除のメリットはそこまで感じておらず、
  • 少額減価償却資産の特例についても知名度が低い

という結果が筆者には気になりました。

あくまで書面回答でのアンケート調査結果ですが、税務にかかわるものとして、参考になる点も見られました。

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