中小企業向けの景気調査において、悪い数値が出ています。消費税の増税の影響と思われるため、ある程度は織り込み済みの面もありますが、今後の動向も気になるため、アラートとして記事にしておきます。
説明のポイント
- 中小企業向けの景気調査で、売上DI、利益DIが大幅に下落している
- 消費税の増税の影響と考えられるため、翌月以降は反発があるとも思われるが、今後の動向も注目される
「中小企業景況調査」とは
中小企業と密接な立場にある税理士としては、景気の動向に無関心ということは難しいです。
筆者がチェックしているデータのひとつに、日本政策金融公庫が毎月公表している「中小企業景況調査」があります。
調査の名前のとおりで、これは中小企業を対象とした景気調査です。中小企業に密接している日本政策金融公庫が実施しており、信頼度も高いといえます。
新聞で報道されるような調査ではありませんが、中小企業の生の声という意味で「中小企業景況調査」は注目されるでしょう。
増税から2ヶ月弱、中小企業の景気はどうか?
さて、先日の2019年11月28日に、最新の調査(2019年11月版)が発表されました。調査時点は11月中旬ですので、増税後の影響がハッキリした結果が出ています。
調査の結果を見てみましょう。
まず売上DIの意味ですが、売上について「増加」「横ばい」「減少」のいずれかで回答した割合のうち、「増加」から「減少」を差し引いた割合になります。
ちなみに回答の割合では「横ばい」と答える経営者が現状6割程度ですが、横ばいはノーカウントです。
11月の売上DIは「▲11.3」となっています。つまり、「売上減少」と答える会社が増えつつあることを意味します。
売上DIについて見ると、増税の1年ぐらい前から、その下落傾向がハッキリしていました。とくに製造業で悪化していたので、米中の貿易摩擦の影響とも思われます。
売上DIの下落水準としては、景気後退期と同水準まで落ち込んでいます。「見通し」のDI(オレンジ色の線)も、かんばしくありません。
また、「資金繰り状況」の詳細データを見ると、資金繰りが苦しいと答えている会社の割合は、総じて大きく変わりはありません。
しかし「窮屈」と回答した会社の理由を見ると、「売上の減少」の割合が増加しているのが嫌な感じです。
次に、利益の動向を見ると、利益額DIはすさまじい落ち込みで、「増加」から「減少」を差し引いたDIは「▲14.1」となっています。
下落幅としては、前回の増税である2014年4月も似たような感じですが、もともと下落傾向にあったところに、さらに加速がついて下落しているのが気になります。
黒字企業と赤字企業の割合にまだ変化はありませんが、今後どうなるかは不明です。
ちなみに、同じく日本政策金融公庫が調査している「全国小企業月次動向調査」も、10月実績の調査を見ると、やはりすさまじい落ち込みとなっています。
とくに図表は引用しませんが、翌月の11月見通しでは、非製造業ではマイナス幅が大幅に改善されるとされています。
まとめ
日本政策金融公庫が中小企業向けに調査している景況調査で、増税後の影響がハッキリ出ている結果がありましたので、ブログ記事にしました。
これらはあくまで増税後の一時的な結果であり、翌月以降には反発して上向きになることも当然に予想されます。
景気動向の先行指標とされる株価指数は、意外に堅調ということもあり、今後どうなるかはわからない面もあります。
結果の一部だけを見て騒ぐ必要は感じませんが、増税後の動向に今後も注目すべきというアラートの意味で記事にしました。