2020年1月より、税務署に「更正の請求」をした場合で、その更正通知を書面ではなく、電子通知で受け取ることが可能になりました。しかし、通知の確認には納税者の電子証明書が必要なため、どこまで使える制度であるのかは悩ましい面もあります。
説明のポイント
- 更正の請求のあとで税務署から受け取る「更正通知書」をe-Taxで受け取れるようになった
- 電子通知の確認には、納税者の電子証明書が必要とされている
「更正の請求」とは
税務署に申告書を提出した後で、うっかりの間違いに気づくこともあるでしょう。
こうした間違いを修正したために、「税金を追加で納付する」ことになるのであれば、税務署に「修正申告」をします。
これに比べ、その間違いを直したことで「税金が還付される」ことになるのであれば、「更正の請求」をします。(修正申告ではない)
あまり見られない用語ですが、「更正」とは、税務署が申告書の内容を訂正する手続きです。
ただし、税務署側での審査結果しだいでは、その更正の請求が認められないこともあります。
更正通知書が電子通知で受け取れるようになった
そんな更正の請求について、請求が認められると、通知を受け取ることになります。この通知は、これまで書面の郵送で受け取ることが通常でした。
しかし、2020年1月から、更正通知を電子通知で受け取ることが可能になったという告知が、国税庁e-Taxホームページに掲載されています。
参考:「e-Taxによる更正通知書等の送付について(令和2年1月6日)」 / 「更正の請求に係る電子通知等について」(国税庁、2020年1月)
具体的に見ると、法人税、所得税、消費税など主要な税目で、更正通知書をe-Taxで受け取ることができるとされています。
対象は、更正の請求をe-Taxで送信した場合に限られ、書面提出の場合は対象になっていません。
これにあわせてe-Taxの仕様も変更されており、e-Taxソフトにおける法人税や所得税の「更正の請求書」を見ると、e-Taxによる通知を希望するチェック欄が追加されていることがわかります。
【2020年1月からの仕様(法人税)】
【2020年1月からの仕様(所得税)】
電子証明書が必要で、代理業務では使いづらさ満点か
「電子通知になればペーパーレスだし、便利だよね!」という気もしますが、注意点もあります。
それは、更正通知書を閲覧するためには、電子証明書が必要とされていることです。
また、税理士が代理送信で更正の請求をした場合でも、その更正通知書は、納税者のメッセージボックスに届くために、閲覧するためには納税者の電子証明書が必要となるでしょう。
(下の画像は、e-TaxソフトWEB版で追加された「通知書等一覧」のメッセージボックス)
この点を考えると、税理士が個人納税者の代理で更正の請求をした場合は、この電子通知を利用することはほとんどないでしょう。
会計事務所が扱う税務との状況把握で考えると、個人の納税者がマイナンバーカードを持っていない可能性は、極めて高いです。
それに、e-Taxにログインしたり、面倒な申告する手間が惜しいから、税理士に代理を頼んでいるという実情があります。
まとめ
「更正の請求」にあたり、その更正通知書をe-Taxで受け取れるようになったことをお伝えしました。
しかし、通知の確認には納税者の電子証明書が必要とされており、税理士が代理で確認することはできないと考えられます。
マイナンバーカードを用いたe-Taxが浸透していない現状では、この電子通知を納税者に確認してもらうことは、税務代理の実情とはマッチしない制度で、悩ましいところです。