「年末調整手続の電子化」対応アドバイス【4】マイナンバーカードは必要か

過去3回に引き続き、「年末調整手続の電子化」について、対応を事前に検討するためのアドバイス集を提供します。

説明のポイント

  • マイナポータル連携によるデータ取得は、会社への年末調整書類がデータ提出の場合にメリットが大きい
  • 逆にいえば、会社が書面提出を採用していれば、マイナポータル連携によるメリットは薄い
  • 2020年では、保険会社等からのデータ取得も、給与ソフトにおけるデータ提出の取り込みも対応が追いついていないと思われる
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【4】マイナンバーカードの準備を周知すべきか

事前周知の策定で悩みそうなのが、従業員に対してマイナンバーカードの取得をうながすか、という点です。

マイナンバーカードを取得する理由は、従業員が利用する年末調整ソフトで、マイナポータル連携を利用するためです。

マイナポータル連携により、控除証明書などのデータを年末調整ソフトに自動で取り込むことが可能とされています。

従業員はマイナンバーカードを持っていなくても、年末調整ソフトの利用は可能です。

マイナンバーカードがあれば、控除証明書をハガキではなく、データで取得できるという「ワンランク上」の対応に移行できます。

ただし、マイナポータル連携を利用できるとしても、控除証明書などのデータが全面的に電子化に移行するわけではありませんので、ハガキ添付も残ります。(例:居住年が平成30年以前の住宅ローン控除、iDecoの控除証明書など)

マイナポータル連携のイメージや、これにあたって必要な準備は、国税庁作成のパンフレット「マイナポータル連携準備編」で情報がまとまっています。

引用:「年末調整手続の電子化に関するパンフレット マイナポータル連携準備編」(国税庁)

2020年は、対応が追いつかないかもしれない

年末調整ソフトに控除証明書のデータを取り込むためには、

  • マイナンバーカードの取得
  • マイナポータルの開設
  • 民間送達サービスの利用開始(マイナポータルから手続きできる)
  • 契約のある保険会社に控除データを民間送達サービスへ送るよう手続き

の4点を実施する必要があります。実施しない場合は、従来どおりハガキが送付されてくるでしょう。

年末調整ソフトのトップ画面を見ると、「証明書データ一括インポート」というボタンが配置されています。

 

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このボタンを押せば簡単なように見えますが、そのインポートのためには、上述のとおり事前準備が大変です。

もし、まだマイナンバーカードを取得していない従業員がいるとして、その利用方法を最初から説明することを考えると、その労力は大変重いといえます。

なお、民間送達サービスによらずとも、保険会社の「お客様ページ」から控除証明書データをダウンロードし、年末調整ソフトに直接インポートする方法も可能とされています。この場合、マイナンバーカードは不要です。(FAQ問3-8②)

ところで、従業員がマイナポータル連携の準備を整えたとしても、かんじんの保険会社などで、電子化対応が追いついていないところもある……という情報が税務専門誌の記事で見られます。

2020年におけるデータ取得の状況は、マイナンバーカードの普及状況や、保険会社等の対応を見ても、まだ準備段階という評価になりそうです。

データ提出の場合にメリット大

従業員が控除証明書などのデータを取得しても、書面提出を受ける場合は、QRコード付きの控除証明書を印刷して添付する必要があります。よって、結局紙ベースになることから、データ取得を従業員にうながしても、そのメリットは薄れてしまいます。

データ取得のメリットが大きいのは、書面提出ではなく、会社がデータ提出を受け付ける場合でしょう。紙は極力削減され、データ処理で一気通貫になるためです。会社の書類保管スペースも大幅に削減されます。

会社としては、データを取り込むための給与ソフト側の対応状況が問題となります。

インストール型の給与ソフトでは、2020年における年末調整ソフト仕様のインポート対応を見送ったものもあると聞きます。

もしデータ提出ができないのであれば、従業員によるデータ取得も「メリット薄」になるため、今年や来年以降も踏まえた検討が必要でしょう。

データ取得をしてもいいが、印刷が必要と伝えておく

ここまで書いておいて何ですが、実際のところ、マイナポータル連携まで積極的に使ってくる意欲的な従業員は、会社が強制しない限りはめったにいないでしょう。

もしそのような意欲的な従業員がいる場合に、会社では書面提出を指定していると、控除証明書の「添付もれ」が生じる可能性もあります。従来のハガキに比べて、データで受け取ったものを、書面に出力するというのはやはり気がつかないと考えられます。

年末調整ソフトでも、控除証明書データを書面出力するようにうながす仕様になっているのでは……と想像しますが、会社でも事前の案内も必要でしょう。

まとめ

「年末調整手続の電子化」について、対応を事前に検討するためのアドバイス集を提供しています。

第4回目は、従業員にマイナンバーカードの取得をうながしたほうがいいのか、という点を検討しました。

会社がデータ提出を採用していなければ、メリットは薄いということになります。この場合、「書面提出+ハガキ(または自分でデータを印刷)」という、ほとんど従来と変わらないスタイルであることから、積極的なアナウンスは不要と考える会社も多いでしょう。

従業員がマイナポータル連携を利用している場合、書面提出の場合では、添付書類がもれる可能性もありそうですので、その点は注意したいところです。