個人事業で気になるのは、税金のほかに「国民健康保険税(国民健康保険料)」もあります。名前が「保険税」だから税金のようにも見えますが、実際のところは社会保険料に区分されます。
この保険税については、自分で納付することに加え、保険税の所得割は税法上の所得にリンクしています。
そこで、これらの計算がどのように関連しているのか、その立て付けをメモとして整理しておきます。
説明のポイント
- 国民健康保険税の所得割は、そのまま地方税法の総所得金額や基礎控除を引用している
地方税法ではどうなっている?
国民健康保険料について、「保険料」と「保険税」の2通りの徴収方式があることはよく知られています。
この記事では、地方税法における「国民健康保険税」をもとに、個人住民税との関係性を確認します。
まず地方税法では、703条の4以降において「国民健康保険税」が定められています。
このうち所得割については、
6 前項の所得割額は、第四項各号の所得割総額を第三百十四条の二第一項に規定する総所得金額及び山林所得金額の合計額から同条第二項の規定による控除をした後の総所得金額及び山林所得金額の合計額(以下この条において「基礎控除後の総所得金額等」という。)に按分して算定する。(後略)
と書かれています。
ここでいう地方税法314条の2とは、個人住民税(市町村民税)の課税計算を指しています。
つまり、国民健康保険税の所得割は、そのまま地方税法にある個人住民税に直接リンクしていることがわかります。
そして、計算方法については、先ほど引用した条文には「同条第二項の規定による控除をした後の総所得金額」と書かれています。
これは、「314条の2第2項(基礎控除)を控除した後の総所得金額」ということですので、総所得金額から基礎控除だけを差し引いた金額が、国民健康保険税の課税ベースになります。
こうしてみると、所得に関係する部分について、国民健康保険税だけの独自の取り決めはさほど見当たらず、個人住民税に依拠していることがわかります。
令和3年度から、個人住民税の基礎控除は43万円に引き上げられていますが、国民健康保険税でも同じように扱うことになるのでしょう。
保険料方式の場合は?
あわせて気になるのは、これが保険税ではなく保険料方式の場合ではどうなっているのか、という点です。
そこで国民健康保険法施行令のうち、所得割に関する部分を抜き出してみます。
第二十九条の七
2
四 前号の所得割額は、第二号の所得割総額を地方税法第三百十四条の二第一項に規定する総所得金額及び山林所得金額並びに他の所得と区分して計算される所得の金額の合計額から同条第二項の規定による控除をした後の総所得金額及び山林所得金額並びに他の所得と区分して計算される所得の金額の合計額(以下「基礎控除後の総所得金額等」という。)に按分して算定するものであること。(後略)
こうしてみると、さきほどの地方税法の国民健康保険税と似たような書き方になっています。
個人住民税である地方税法314条の2にリンクしている点も同じです。
まとめ
国民健康保険税の所得については、そのまま個人住民税にリンクしていることがわかりました。
具体的には、総所得金額がそのまま個人住民税からリンクされており、そこから同じく個人住民税からリンクされている基礎控除のみを控除するものとされています。
余談ですが、国民健康保険料の保険料は全国一律ではなく、市町村ごとにそれぞれの保険料率が条例で決められているようです。
また、今回記事を書くにあたり、保険料ではなく保険税を採用できる根拠が、国民健康保険法76条にあることはわかりました。
しかし、そのなかで「あえて」保険税方式を採用している部分の根拠は、自治体の条例を読んでもよくわかりませんでした。
社会保険に詳しい方ならば当然にご存じなのでしょうが、自分でもそのうち調べてみたいと思います。