国税庁の統計を見て気づいたことですが、「資本金100万円以下」の法人について、法人税の申告数が急増しています。ここ10年で見ると、申告数は約3倍近くに増えており、全体の2割近くを占めつつあります。
説明のポイント
- 国税庁の統計より、法人税の申告数における資本金区分の推移分析
- 「資本金100万円以下」の法人の申告数だけが伸びている
令和2年度の割合は17.9%
まず集計値からお見せします。
国税庁の統計から数字を拾ったもので、全体の申告数と、資本金100万円以下の法人の数を比較したものです。
出典:国税庁 統計情報
過去10年の法人税の申告数の推移を見ると、全体の申告数も増えているのですが、そのなかでも増加が目立つのが「資本金100万円以下」の区分です。
10年前と比較すると、その割合は7.2%から17.9%に伸びていました。
なお、資本金の区分で、10年前と比較して申告数が伸びているのは、この「資本金100万円以下」と「資本金5000万円超~1億円以下」の区分のみですので、かなり目立ちます。
一番多い区分は、「資本金100万円超~500万円以下」ですが、平成23年度の申告数125万件は、令和2年度122万件でほぼ横ばいです。全体数が増えていることを考えると、割合的には減少ともいえます。
また、「資本金5000万円超~1億円以下」の区分が伸びているのは、中小企業税制を目的とした減資も理由のひとつと思われます。平成23年度の46,975件は、令和2年度で53,154件になっています。
業種はまんべんなく増えている
資本金100万円以下の法人について、増減に業種のかたよりがあるのかと思って調べてみたのですが、思ったほどの違いは見当たりませんでした。
調べる前は、サービス業が飛び抜けて増えているのでは……と思っていたのですが、どの業種もまんべんなく増えています。
新規開業による影響か?
もしかすると、資本金を減資して100万円以下にしている可能性もありますので、この統計だけで新規開業が増えていると思うのは早計かもしれません。
それでも、資本金100万円以下で開業する法人が増えている可能性は高そうです。
標本調査で見ると、資本金100万円以下の法人について、平成23年度と令和2年度の比較では、
- 株式会社 151,298社 →366,088社
- 合同会社 12,137社 →98,316社
となっており、合同会社の増加が目立っています。
合同会社は新規開業がほとんどでしょうから、資本金100万円以下でスタートした会社はそれなりにあると考えてよさそうです。
昨今話題の「副業」については、法人で行っている可能性もあるでしょう。
まとめ
国税庁の統計を見て、法人申告数の増加とその内訳で、気になった点を述べてみました。
ここで述べたように、「資本金100万円以下」の申告数だけが伸びており、全体の2割近くに迫っています。これまでの推移をみる限りですと、令和4年度あたりには2割に到達しそうです。
資本金だけで法人は語れませんが、「法人」について、そのあり方の変化がうかがえることは事実でしょう。
そろそろ令和3年度の統計も発表されると思いますので、また情報をお伝えします。