ブログは常に最新情報を表示すべきか? 閲覧者の期待とログ保存のジレンマ

この税務ブログが、ささやかながらも6年間、更新を継続したことを記念する記事です。これまで続けてきたことで気づいた視点を整理します。

1回目は「ブログは常に最新情報を表示すべきか?」という問題を考えます。

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ブログは「ログ」であるが、アクセスする人は最新情報がほしい

ブログをアクセスした人にとっては、この記事が現時点で役に立つことを求めてアクセスしていることでしょう。

ブログ筆者である私も、公私を問わず検索は頻繁にしますので、その気持ちはよく理解できます。

しかし、ブログはあくまで「投稿した時点の内容」にすぎません。

つまり、閲覧時点と執筆時点には、時間の乖離が存在しますので、その記事の品質や有効性が保たれているかを保証できるかは難しい問題といえます。

とくに税務の記事については、税制改正が頻繁に行われますので、こうした傾向が顕著といえます。

また、当ブログでは時事ネタも扱いますので、その後の状況で「記事の鮮度」が一瞬で落ちることや、状況がまるで変わってしまうこともあります。

読者を優先するなら、常に最新情報にすべきだが……

このブログは私が商業として行っているものですので、当然に読者を配慮したものとなります。

テーマの選定は好き勝手にできますが、読んでもらわなければ意味がありませんので、意味のある記事を書くことは当然です。

前述のとおり、時間の経過とともに記事の品質が低下する可能性を考えると、過去6年間の記事について、そのすべてを万全の状態に保つことは事実上困難といえます。

しかし、Googleなどの検索からアクセスしてきた「一見の読者」にとって、そんな事情は関係ありません。古い情報であれば「役に立たない記事」にすぎず、ときには誤解する可能性もあります。

Google検索は、その記事が現在の税務において適切であるかを判断する機能は有していません。

執筆者が「もう過去のもの」と思っている過去記事が、アクセスが急増することもまれにあり、困惑させられることがあります。

ログは保存すべきなのか?

ブログは「ウェブログ」の略称です。ログとは記録ですから、執筆者にとっては、投稿した時点の記事がその「ログ」といえます。

よって、最新情報を重視して、過去の投稿を大幅に書き換えた場合は、「ログ」の意味が薄れてしまいます。

税務の記事においても、その当時において考えられていた「流れ」というものがあるわけですが、これを最新情報に書き換えてしまった場合、「ログ」が残りません。

これがもし書籍であれば改訂版が出るにしても、過去のものもそのまま残りますので、当時の考え方を検証することは可能です。

これに比べて、ブログではバージョン管理のような概念は存在しません。

以下、6年のあいだに当ブログで生じた実例をもとに、税務ブログにおける「ログ」の位置づけを考えてみます。

実例1.古い情報への削除要請

現在は少ないのですが、当ブログの初期では、便利なサービスを紹介する記事を書いていたことがありました。

クラウド型のサービスが多数リリースされていた時期であり、興味深く観察していたためです。

ところが、過去に1度だけ、古い記事について削除要請を受けたことがあります。その理由は、「記事の内容は古いものであり、現在は該当するサービスを提供していない」というものでした。

繰り返しになりますが、ブログとは「ログ」であり、執筆時点の記録に過ぎません。

削除要請をしている人にとっては、現在アクセスできる情報は「現在の情報を紹介している」という視点なのでしょう。しかし、ログを付けている立場からいえば、それは過去にあった事実の紹介にすぎません。

私の対応ですが、相手の意向を尊重し、要請を受け入れて該当記事は削除しました。

しかし、ログを削除すれば、「そのサービスがその当時に行われていた」という情報も消失することを意味します。

ブログは公開情報です。そして、このブログも個人で執筆しているにせよ、商用としてのものです。こうした場合で過去の投稿を最新に保つべきかは、難しいといえるでしょう。

実例2.過去の流れについての注釈機能が失われてしまう

ブログの情報を常に最新に保った場合、古くなった情報や、読みづらい内容は削除せざるを得ません。

このような対応を行った場合の悪影響も懸念されます。それは、もし今後の税務研究を志す研究者がいたとして、その情報を過去からたんねんに調べたいと考えても、それを行うことが難しくなるという問題が生じることです。

ブログなんて誰も研究対象にしないだろうと鼻で笑う人もいそうなので、実例を挙げておきます。

当ブログでは、ブログの更新を始めた2016年の段階から、電子帳簿保存法について気にしており、とくに「電子取引」を研究してきました。

2016年当時、国税庁の「電子帳簿保存法一問一答」において、電子取引についての説明項目はわずかに3項目しかなく、実務としてはほとんど手探りで考えざるを得ない状況でした。

いまは当たり前に知っているようなそぶりをしていても、数年前に「電子取引」を詳しく知らなかった人は多数いるでしょう。(私もそのひとりです)

電子帳簿保存法は、電子取引に関する記録を、電子データのままで保存することを求めています。その...

上の記事は、2018年に書いたものです。税務専門家のあいだではまったく注目されていない情報だったため、当ブログでその重要性を提起したものです。

一読すればわかりますが、はっきりいって内容は稚拙です。それは、いまの2021年の豊富な情報量で見るからであり、数年前の当時ではこれが限界でした。

この記事は2021年になってからアクセスが増大しているのですが、これをもし最新情報に書き換えた場合、どうなるでしょうか?

最新情報に書き換えれば、アクセスしてきてくれた読者にとっては、最新情報が得られることで利便性があることでしょう。

しかし、そのような情報はすでに他の税理士やIT関係者も同様のことを発表しているのであって、類似情報を提供するにすぎません。

他方、この記事を残すことには意味があるでしょうか。

2021年のいまでは、「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」が必要と訴える人はたくさんいます。これは税制改正で必要に迫られてのことなので、ある意味当然です。

しかし、2016年よりも以前から、電子取引の保存について事務処理規程が必要な点を注意喚起していたのは、IT企業の実務研究者の方々です。

当ブログではこうした点をウオッチしていたわけですが、もしこのブログの記事を書き換えてしまえば、過去の経緯も追いづらくなります。これは、ブログが注釈の役割を果たしているためです。

将来、このような分野を体系的に研究される人がいるかはわかりませんが、そのような研究の可能性をせばめる結果をもたらすことでしょう。

まとめ

ブログが6年継続したことを記念して、考えたことを整理した記事を掲載しました。

専門家のブログ投稿はどうあるべきかを悩まれたことがある人ならば、少しでも共感してもらえるところがあるのではと思います。

次回は、「間違った情報を書いたときは、どのように訂正を表示するか」という点を述べてみます。

この税務ブログが、ささやかながらも6年間、更新を継続したことを記念する記事です。これまで続けてきたこ...

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