「特別法人税があるからiDeCoはやらない」論をどう考えるか

「特別法人税(約1%)があるから、iDeCoはやらない」という意見があります。これに比べると、物価上昇に対して資産が1%が目減りすることについては、前述の意見と比較してあまり目立たないことが気になっています。

説明のポイント

  • iDeCoへの特別法人税は年1%程度(ただし長らく凍結中)で、これを危険視する人もいる。それなら、物価上昇についても同じように警告したほうがいいのでは……?
スポンサーリンク

 

iDeCoの「罠」?

iDeCoの制度については省略するとして、制度に批判的な人が「罠」として主張するのが、特別法人税の存在です。

その主張をまとめると、iDeCoなどの退職年金等積立金には年間で約1%の特別法人税という税金がかかるが、現在は課税が凍結されている。ただしこの課税がいつ復活するかわからず、iDeCoには隠れた「罠」があるというものです。

「罠」かどうかは別として、その主張は間違っていないと思いますので、ブログ筆者も否定はしません。

物価上昇で負けた分は?

話は変わりますが、物価が1%上昇したとして、自己の資産はすべて現金で持っていたとすると、自己資産は物価に対して1%目減りしています。

ブログ筆者は資産運用の専門家ではないので、細かくいうとボロが出そうですが、例えば去年100円だったものが今年は101円になったとすれば、自己の資産が同じままだったとしても、同じ物を購入できる量は1%減少しています。つまり実質的には、物価上昇に対して自己資産が1%減少しています。

iDeCoでたまに耳にするのは、「節税」目的でiDeCoに加入したものの、掛金が目減りするのが怖いので、定期預金で運用しているという話です。

この場合、定期預金の利率が物価の上昇よりも低ければ、実質的な運用では物価の上昇に対して負けているものといえます。

iDeCoの管理画面では、「実質の負け分」が損失として表示されることはないので、そうした損失は気づきづらい、ということでしょう。

この話は別にブログ筆者のオリジナルではなく、iDeCoを扱う金融機関のホームページで普通に指摘されてることを書いただけです。

iDeCoで定期預金をするデメリット インフレリスクに対応できない

定期預金に預ければ、元本割れしません。しかし、現在の金利は非常に低く利息はあまり期待できません。その一方で物価が上がれば相対的に資産価値は減ってしまいます。

引用:りそなグループ「iDeCoで「定期預金」を選択するメリット・デメリット」

また、「積立王子」こと中野晴啓氏も、将来のインフレ懸念に触れています。

せっかくiDeCoで将来に向けた「じぶん年金」づくりをしようと一念発起してみても、それを預金や元本確保型保険商品などといった“お金がお金を生まないもの”を選択していたら、さっぱりお金は育たないことにすぐ気付くことでしょう。・・・(中略)・・・おまけに数十年後のiDeCo受取り時期には、日本経済がけっこうなインフレに転換している可能性も否定できません。ますますお金の価値が目減りする損失可能性を考慮しておくべきでありましょう。

引用:楽天証券 確定拠出年金「iDeCoで預金はNG?」

意見のバランスが重要では

個人的に思うのは、いつ復活するかわからない特別法人税(年1%程度)を「罠」と説くのはいいのですが、それと同じくらい、物価上昇(実質で年1%以上負けるかも)も気にしたほうがいいのでは……ということです。

もちろん、これらは別々の論点です。iDeCoはやらなくてもNISAで運用すればいい、という意見もあるでしょうから、それはその通りです。

何がいいたいのかというと、物事の「大」「小」です。もし特別法人税を「罠」というのであれば、同じように物価上昇と資産運用の方法についても警告したほうがいいのでは、というバランスの話をしています。

iDeCoの仕組みとして、投資信託による資産運用が前提とされていることを考えると、長期的には資産運用で物価上昇に勝てる可能性があります。そして、運用期間中の運用益は非課税です。

また、掛金の支払いは所得控除になりますので、いわゆる「節税」にもなるかもしれません。(ただし、掛金は運用益とあわせて受給時に課税されるので、本当に「節税」だったのかは、将来の受給時の税制をもとに受給してみないとわかりません)

iDeCoの掛金は自由に引き出せないことをデメリットと説く意見もありますが、長期の資産運用を前提としているわけですから、短期的な上げ下げに惑わされない「ガチホ」状態を強制させやすい環境のほうが、結果的にはよいかもしれません。

2020年のコロナショックで、あまりの急激な下落に、つみたてNISAの投資信託を売り払ってしまった人には耳が痛い話でしょう。

ブログ筆者の意見(まとめ)

この記事でいいたかったのは、物事には「大」「小」があるわけで、凍結中の特別法人税を理由にiDeCoを敬遠するのは、やや「小」にこだわっているのでは、ということです。

もちろん、資産運用についてはどの制度を選ぶのも自由ですし、NISAや特定口座で運用してもかまわないでしょう。

総合的なしくみとしては、仮に「罠」があるのだとしても、やはりメリットが勝っているのでは、というのがブログ筆者の意見です。答え合わせは数十年後になるので、もしブログ筆者が間違っていたとしても、それはそれとして結果として受けとめます。

なお、これはあくまでブログ筆者の想像ですが、もし特別法人税が復活するとすれば、それはなんらかの理由で歳入や税収が著しく不足している状況が想定されます。

そのときには、おそらくインフレも相当程度に進行していると思います。そうなると、もはやインフレのほうを気にすべきでしょうし、特別法人税が凍結前と同じ税率で復活したのであれば、それは追加のダメージがあるとしても相対的には気にするレベルではないかも……とも思います。

なお、特別法人税の廃止論はたびたび議論されており、最近も「企業年金の特別法人税撤廃の声 厚労相の諮問機関会合で」(日本経済新聞、2023年5月17日)という報道があったほか、税制改正要望では金融庁からの廃止の要望も見られます。

将来はどうなっているかもわかりませんので、あくまでブログ筆者の意見です。これを読んだ方がお持ちの意見を否定するものではありません。また、ブログ中にも書きましたが、ブログ筆者は資産運用の専門家ではありませんので、なにか間違いがある可能性もあります。インフレをあおって、資産運用(とくに税理士に依頼する可能性の高い不動産投資)を意識させる意図もありません。

スポンサーリンク